ぽっかり日記

少しヒマになったので、珍しく1人で映画に行ってみた。
本当は海の見える崖だとか、自然のあるところに行きたかったんだけど
うっかり免許の更新を忘れて取り直し中なので車に乗れない。

そんな訳でその日調べて、気になった作品を見るために渋谷のミニシアターへ。
村上春樹の作品を基にした、海外の監督によるアニメーション作品という
若干ニッチな映画なためか、館内にいるのは10人もいなかっただろう。
何故か派手なカップルとか、年齢の離れた男女とかがいて興味深かった。
他にはめっちゃぐっすり寝てる人が2人ぐらい。
こういう洒落た作品を見ながら暗い劇場内で寝るのが好きっていう人も
いるのだろうなと思った。

自分は一時期アニメーション作品が好きで良く観ていた。
フレデリックバックとか、山村浩二とか、ヤンシュバンクマイエルとか。
この日見た映画はとても自分にとって素敵な作品で、思いがけず良い時間を過ごせた。
村上春樹ファンは却って色々言うだろうけど、
自分は村上春樹ファンでは無く、アニメーション作品が好きな人間だし
これは二次創作とかファンアートや商業映画化などでは無く、
それを題材にしたその人の芸術表現としての作品なので
自分としては気にならない。

上映が終わって部屋を出ると、窓の向こうで大雨が降っていた。
聞けば6年ぶりの降水量が都内を覆うほどのにわか雨だったらしい。
ニュースになっていた。
こんな日に限って折りたたみ傘を忘れた。
そういうことで、シアターの下にあるカフェで飲み物を頼んで雨宿りをした。

建物の1階がテラスになっているようなカフェだったので、
雨音を聞きながら、傘を差して通りゆく街の人々をただ眺めて過ごした。
温い風と、妙な形をした扇風機。
カフェには勉強する学生、英字新聞を読むサラリーマンがいた。
自分は何もすることは無かった。
雨が止むまで小一時間はそうしていた。

傘を畳む人が通りにチラホラ出始めたのを見て、カフェを後にした。
その日は暑くて汗もかいたし、何かお酒を飲みたかったので
1人で飲める場所を探した。渋谷の真っただ中で。
ネットでは1人で入れる居酒屋と色々なお店が紹介されていたけど
通りすがって見る限りで、とてもそんな勇気が出る雰囲気では無かった。
1人で入っている人なんて誰もいないじゃないか。

そうして何故だか引き下がれない気分になって、通りを何度も歩き回った。
そのうちにキャッチが増えてくる。ちょうど8時を回ったころだった。
街はどんどんグルグル回っていき、自分はその回転にはじき出されていく。
そんな気分になって、嫌な汗が出てくる。
どこも自分が飲みたい場所ではない。
こういう目にあったことは今まで2,3度あった。

疲れと諦めで、外れた通りから駅に向かって歩いていると
テラスのあるビールバーを見つけた。そこが自分の飲みたかった場所だとすぐに分かった。
迷わず入って、テラスに座ってビールとつまみを注文した。
そうしてやや人通りの落ち着いた商店街の通りを眺めて、
ビールを口にした。美味しい。
ここは中には一人客もいた。

建物の上から雨上がりの水滴が、机に身体に、しまいには皿に降ってきた。
最初は何とかならないかと思っていたけど、そのうち気にするのをやめた。
その日自分はとにかく街と人を眺めていた。
そうしていると自分が寂しい人間のようにも思えた。

それは何故なら自分以外の人はほとんど誰かといて、笑っていて
自分はわざわざそんな街に1人で行って、酒まで飲んでいるからだ。
そういう人がこの渋谷にどれくらいいるのだろう?
まぁでも結構いるだろう。

いつも誘っている友人は最近、お酒を控えだしたらしく
困っている。

#今こんな気分

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