「アトマイザー」the 2nd spoon_かとうひろみ
文学ユニット「るるるるん」によるツイッター400字小説『3spoons』第四回テーマ ”アトマイザー“
「あなたってアトマイザーみたいな人だね」
そう言われてドキリとした。私がバッグの中にいつもアトマイザーを入れているのを知っての発言だろう。だがその瞬間、電波障害でも起きたのか、通話がぶつりと切れて、私はその理由を聞き損ねてしまった。
―どういう意味だろう?
いいにおいがする?中身を変えれば変幻自在?単に女性らしい?それとも。
このアトマイザーの中身は実は猫のオシッコだ。子供のころに拐騒されたことがあり、それ以来防犯スプレーとして持ち歩いている。スタンガンより軽いのが、いい。実際に使ったことはないが、怪しいやつがいたらこれで目つぶししてやろうと、密かにその瞬間を待ち望んでいる。もしかしてこれが猫のオシッコと知られているのか?それなら、
異臭がする?要注意人物?単に嫌われている?
考えれば考えるほどわからない。そのことしか考えられない。アトマイザーに閉じ込めた秘密を知られているのかと思うと焦燥で頭がおかしくなりそうだ。そんなことを言った相手が、ついには憎らしくなってくる。
今度会ったら、目つぶししてやろうか。
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