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Love、サイモンでお馴染みの「人類平等化計画」 - Z世代のカミングアウト

Simon vs. the Homo Sapiens Agenda. 2016. by Becky Albertalli. Penguin Books. 

アメリカの宗教右派と“Gay Agenda”

アメリカ保守のキリスト教右派はLGBT権利擁派の活動を、批判的に中傷を含んだ表現で “Homosexual Agenda” と呼んでいます。ゲイやゲイのライフスタイルについて嫌悪感や怒り、恐れの感情を持っている人たちも中にはいて、2004年オクラホマ州上院議員であったTom Coburnは 「ゲイ・アジェンダはテロよりも驚異である」とまで言っています。本の題名にある『Homo Sapiens Agenda』(人類平等化計画)は、広まった言い回しを逆手にとってその表現をもじっています。

作品中では、「ストレート(異性愛者)はなぜカミングアウトしなくてもいいのか」 と切実な思いがこぼれ落ちます。

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SNS世代のカミングアウト

ひと昔前、同性愛の権利も何も守ってくれる法律や条例なんてなかった時代とは打って変わって、同性結婚や養子縁組の権利等が広まりつつある現代。舞台になっているのはアメリカジョージア州アトランタ。米国でゲイ人口が多い都市の一つなのだとか。

“He talked about the ocean between people. And how the whole point of everything is to find a shore worth swimming to.” 

SNSでの無名のカミングアウト投稿からメールでやりとりをするようになったBlueとSimon。映画では(2018年『Love, Simon』として映画にもなっています)投稿文が出ているようですが、原作の小説ではその文面はありません。内容をほのめかした描写はありますが、どんなつぶやきだったのか、もし自分がその立場だったらなんと書くか、そんなことを想像しながらその繊細な一文に取り憑かれました。

▶︎こちらがその映画の予告編


“maybe I was just seeing what I wanted to see.
きっと自分が見たかったものを見ていただけ。

抜粋: Becky Albertalli “Simon vs. the Homo Sapiens Agenda”.


「観ること」の権力ってなんなんでしょう。




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