小さな悪魔〖ワクモ〗
畜産において、虫による損失は計り知れない。
それは、病気の媒介生物としてでもあり、家畜にとってのストレスになるからである。
しかしながら、虫の根絶は非常に難しいところである。
根絶する為に、遺伝子操作を行った蚊を放つ方法を取るなど、
大規模な方法で行って、やっとできるかどうかという問題だ。
殺虫剤で対応する方法もなくはない。
しかし、殺虫剤を使用する方法は、薬物耐性を持つ虫へと、
進化という変貌を及ぼす可能性があり、
殺虫剤を使っても効かないということになりかねない。
1962年から1977年に発売された殺虫剤を旧製品
2012年から2021年に発売された殺虫剤を新製品
とした場合、試験を行ったものの、
旧製品については、どの製品においても、
高くて10%前後、低くて、4%を切る殺虫剤もあるそうだ。
新製品についても、80%という抵抗性を示すという試験結果もある。
(鶏の研究 2022/4月号)
では、虫による損失を限りなく少なくするためにはどうしたらよいのか。
その1つの手段が、天然忌避剤と物理的な清掃防除といわれている。
虫といえば様々いるが、鶏といえば《ワクモ》であろう。
ダニの一種とも言えるワクモによって、
卵を作る鶏であるレイヤーにおける被害は、
最大で25%の産卵率低下や40%の飼料摂取量の増加ともいわれる。
つまり、お金になる生産物である卵は産まないのに、
エサは多く食べるということだ。
そうなれば、
お金は入らないのに余分に出るということが続くことを意味し、
経営が厳しくなることは想像に難くないだろう。
では、天然忌避剤と物理的な清掃防除というのは、どうやるのか。
天然忌避剤というのは、ハーブをえさとして与え、
鶏の体臭として放出されることで、ワクモが近寄らなくなるらしい。
物理的な清掃防除というのは、掃除だ。
鶏が鶏舎の中にいる間に行っても意味はなく、次の鶏を迎え入れる前に、
徹底した清掃を行うことで、排除するということだ。
非常に基本的なことではあるが、これらを行うことは容易ではない。
天然忌避剤を追加しようとすれば、単純にコストアップになる。
コストが上がったら、
製品である卵の値段を上げればいいのかというとそうもいかない。
清掃も、すべての鶏が出てから、空舎期間を作れば清掃は可能であるし、
ワクモというダニのえさになる鶏が居なければ、数が減るが、
空舎期間が長ければ長いほど、
収入を得られない期間が長くなることと同義であり、非常に問題だ。
殺虫剤も天然忌避剤も使わず、ワクモを排除しようと、
段ボールを使用したものもある。
https://www.pref.tochigi.lg.jp/g66/system/desaki/desaki/documents/13_h24_wakumo.pdf
数多くの農場で頭を悩ませるワクモ
ワクモにどう向き合っていくかは、これからも問題になってくるだろう。
詳しくワクモについて、知りたい方は、
ワクモ対策マニュアル(社団法人 日本養鶏協会)をご覧いただきたい。
(ダニの写真が多くあるので、閲覧は自己責任でお願いしたい。)
https://www.jpa.or.jp/news/item/2012/0313/wakumo.pdf