ローソニアに対して、どう向き合うか
ローソニアって、そもそも?
ローソニア感染症は、ローソニア イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)という細菌による感染症
もう少し詳しく言うのであれば、グラム陰性偏性細胞内寄生細菌として分類している。
簡単に言うのであれば、菌の増殖に酸素がない環境が好ましい菌らしい。
細菌性の病気であり、肥育豚の他に、鶏や馬、猫なんかもかかるようだ。
人間もかからないことはないと思うが、感染性腸炎の原因としては、
他の菌が多く挙げられているので、人間に対するローソニア感染症の被害はどちらかというと影響は少ないのだろう。
ーーーーー参照URLーーーーー
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鶏におけるLawsonia intracellularisの浸潤状況
(なぜか表示は十和田湖和牛の肥育技術向上への取り組みとなる)
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馬での症例と対策
(ここでは豚用ワクチンを投与)
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ベーリンガーインゲルハイムから出ている、
ローソニア感染症に対する経口生ワクチン
(馬にも使っていたもの)
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岩獣会報 (Iwate Vet.), Vol.39 (No 2), 57-60 (2013).
豚増殖性腸炎ワクチンの効果検証
(効果も成績も向上したようだが、実際のコスト的優位性は不明)
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県北家畜衛生通信 第35号 平成24年8月
岩手県北家畜衛生協議会
岩手県県北家畜保健衛生所
発
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Swine Disease Information No.47
豚増殖性腸炎(PPE)の原因
~Lawsonia intracellularisを知る
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Swine Disease Information No.48
豚増殖性腸炎(PPE)no
類症鑑別と対策
ーーーーー参照URL おわりーーーーー
ローソニアの最近のお話
最近、何かとローソニア感染症が話題で、農場で猛威を振るっており、
肥育豚の食い逃げ(出荷間際でのへい死)などが起きているようである。
(豚で病気がないということは非常にまれのように感じているので、
そもそもローソニアだけが猛威を振るっているとは思えないが)
対策① ペプチド亜鉛
これに対してペプチド亜鉛100ppmが良いというお話が雑誌に掲載されたり、養豚の業界団体の会誌などで掲載され、話題にもなっている。
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この雑誌の「ローソニア感染症に対する画期的な対処法」
に掲載されている。
https://onl.bz/hMeyceg
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掲載されている会誌(2023年7月1日)
(リンクが切れた場合、ご容赦いただきたい)
今、炭酸亜鉛を使用している農場はあるだろうが、
それの完全な置き換えになるとは思えない。
理由は、「効く理由が無機の炭酸亜鉛と有機のペプチド亜鉛では異なる」
という理由だ。
しかしながら、亜鉛の給与という意味では、同じであり、
無機に比べて生体利用性能が高いとされるペプチド亜鉛での給与は、
メリットがないとは言えない。
ただし、少しの添加では意味がないので、
飼料1トン中に100ppmだけは入れなければ、期待した効果は見えないかもしれない。
(少しなら入っているという飼料は数多くあるが、
混合飼料では成分量の表示はしないため、わからない)
ローソニアだけではなく、亜鉛中毒になっているかもしれない豚の為にも、
ペプチド亜鉛への転換は意味があるだろう。
が、ローソニア対策として、劇的な効果を見ることは難しいかもしれない。
対策② 有機酸
で、ペプチドミネラル(ペプチド亜鉛)で抑える方法もあるが、
有機酸で対処する方法もある。
サルモネラ菌もグラム陰性の嫌気性桿菌なので、
ローソニア菌と同じく、空気がほとんどない場所で増殖する、
グラム陰性桿菌ということだ。
であれば、有機酸で対処する事は可能で、
有機酸によって、菌の内的エネルギーを消費させることで、
最終的に排除する事が可能になってきます。
小腸や大腸で増殖するからこそ、
酸素がほとんどなく、アルカリ性に傾きやすい状況だからこそ、
有機酸での対処方法も考えられるだろう。
ペプチド亜鉛での対策よりは、有機酸での対策の方が、
比較的即効性は高いだろうと思う。
しかも、有機酸製品は様々あるが、病気に対して至急の対応が必要であれば、効果的な量を入れなければならない。
ある程度、最初はコスト度外視(死なれるよりは良い?)で対応する事で、
使ったけど、もったいないことになったということは避けられる可能性が高いと思う。
有機酸製品も数多くある。
しかし、製品としては安いが、効果を出すためにはある程度、
量をしっかり入れなければならないので、結果高いということもある。
ペプチド亜鉛とは異なり、有機酸とくくっても、様々ある。
私は混ぜ屋なので、自社製品を押したいとこだが、情報提供がメインのnoteでは書かない。
対策③ クスリ・ワクチン
もちろん、薬やワクチンで対処する方法もある。
ワクチンであれば、前述したベーリンガーインゲルハイムのエンテリゾールを使用する方法がある。
薬の場合は、いくつか選択があるが、現場としては3傑と裏番が存在するらしい。
序列 第1位
チアムリン
科飼研(2%)・共立(20(2%)/100(10%))・エランコ(デナガード)
など
序列 第2位
リンコマイシン
共立・Zoetis
など
序列 第3位
タイロシン
共立・エランコ(タイラン)
など
添加剤と注射がある薬剤もあるので、
手間とコストを考えて、使っていただくことになるだろう。
現場感覚としては、順位はこの順であるらしい。
違う順番の方が効くとのお話もあるが、農場によって、
最適な薬やサプリメントが違うように、
最善がどれかというのは農場によるとしか言えない。
裏番 エコノア
これを使えば”効果は抜群”らしい。
しかし、いかんせん高いらしい。
慢性型豚増殖性腸炎に、飼料1トンあたり0.75㎏とのこと。
(1袋が1kg)
チアムリンがおおよそ2万5千くらいだと仮定して、
1袋20㎏なので、1袋で5トン分くらいにはなる。
それが2万5千円くらいだとするなら、
チアムリンなら、5トンで2万5千円
エコノアなら、5トンで10万円
(すべておおよそ計算なので、実際の販売価格は知らないのだが)
いくら効果が高いとはいえ、高すぎる!!
ということらしい。
ローソニア感染症に対する、適当に書いてみたが、
あくまでも私は混ぜ屋
豚や牛など、健全な状態を保ち、抗生物質は減らして、
有機酸やペプチドミネラルなどで、常日頃から備えてもらいたいとは思うが、薬には薬のいいところがある。
病気を予防するというのは、あまりコストが見えづらい。
だからこそ、農場の判断はそれぞれだし、どのように畜産物を育てるかもそれぞれなのだ。