『方舟』感想
割とサクッと読めました。ページ数もそこまで多くなく、スラスラ読み進めることが出来たと思います。
久しぶりにこんなに読み終わったあとにいやな気分になる本に出会った気がする。
後味が悪い作品は沢山あると思うけど、個人的にはすごいうわぁ……
ってなりました。
まず、タイムリミットがあって閉じ込められてしまっている時点で息が詰まりそうなのに、その上殺人まで起きる。気がおかしくなりそうです。
話の中で登場人物たちがスマホを触っていたり、音楽を聴いていたり、本を読んでいたり、またはパズルゲームをしていたりなど一人の時間を過ごしている場面があるんですけど、なんでもないようなシーンが割と心に残りました。
別に普通じゃない?と思うことですけど、みんな閉じ込められてるんですよ、殺人犯がいる密室に。それでも出来ることがないから時間を潰しているんですけど、自分がもしその場にいたら本当に吐いてしまいそうな気分になります。
だって普通だったら家だったり、カフェとかで楽しくやってる事じゃないですか、
なのに死が迫っている場面でそれらをしているって言うのがなんか皮肉というかなんというか…。
この本を読んでいる時だって私は自宅のソファに座ってくつろいで読んでますけど、自分だったらこんな状況で本なんて読みたくない、
当たり前ですけど私は安全な場所にいて良かったと読んでる間に何度も思いました。
主人公も音楽を聴いて、
この曲を作った人は少なくとも今の僕らよりは恵まれた環境でこの時間を過ごしているはずだ、
と言っていたので切なくなりました……。
本の感想としてはおかしいですが、
絶望的な環境で普段しているようなことをするしかない状況がなんともリアリティがあって、人間味溢れる作品だなと思いました。
最後のどんでん返しが本当に凄かったです、
あぁ、あの時こうしていれば。
とつい思ってしまいました。
同じ作者様の十戒も読んでみたいです。