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2024年 AppleTV+ドラマ『SUNNY』感想 10

🤖 第9話の感想&ネタバレ

第10話 The Dark Manual(邦題「ダーク・マニュアル」)

冒頭、節分の文化について語るマサのナレーションから始まる。

鬼は外、福は内、と掛け声を合わせ、鬼に豆を投げつける。
自分たちの夢や喜び、家族を奪おうとする悪しき鬼たちを追い払うために。
"鬼に金棒" ということわざがある。恐ろしい鬼に金棒を持たせれば、さらに強く無敵になり手が付けられなくなる。鬼たちが迫っている。金棒を探している。だから今日、僕たちは止めなければならない。勝たなければいけない。でも、もう手遅れだったら? 

そこに誰かの死体が映る。
一筋の血が地面を伝う。赤い糸のように。

このオープニングシークエンスに、実はすべての謎が隠されている。

物語は8話後半、テツに羽交い絞めにされたスージーの姿まで遡る。
ハッキングされたと思われるサニーがスージーを襲うかと思いきや、サニーが殺したのはテツだった。スージーが気づいた時にはサニーは機能しておらずテツが死んでいた。周囲を見渡すと隠れているゼンの足が見え、駆け寄り、スージーはゼンを胸に抱きしめる。

しかしその後、すぐにヒメたちがやって来てスージーとゼン、ミクシーとヒロマサと共に地下牢に閉じ込められ、スージーが持っていたデバイスなどが入ったバッグを奪われ、施錠されてしまう。

節分の祭り会場に止めていた焼きいも屋のトラックに乗り込むヒメ。中にはサニーを解析し、コードを奪い取る作業をしているタナカ・ユーキ。しかしマサのプログラミングの複雑さに手を焼いている。ヒメが欲しいのは最新のコードだ。

何とか脱出する方法を探る3人。ヒロマサはすべてヤクザが仕組んだ事だと話し、AI技術について語る。
「理論上、プログラムされていない行動をボットにさせるのは可能だ。徐々になら。まず嘘をつかせ指示に背かせる」
ここから脱出したいだけのスージーは聞く耳を持たない。けれど何かの理論を思い出すヒロマサ。それは昔からあるコードのトリックでAIに、ある物が別の物だと思わせる。例えばほうきを銃だと。AIを騙して操る方法がある。それをヤクザはサニーに仕掛けた。スージーはそんな話に興味はない、と遮ろうとするが、ヒロマサは「サニーが殺人を犯した時に発したコードをヤクザが取り出そうとしている。彼らがもしもサニーからそのコードを盗む事に成功したら、殺人ボットが量産される。それを阻止したためにマサは犠牲になったんだ」と説得し、ハッとして改めてスージーは聞き入れる。

日本中の老若男女が集まる華々しい節分祭は、ヤクザ組織の親玉になった人間の祝杯の場として打ってつけの場所だ。本来ならヒメが後を継ぐはずだった。サニーから目当てのコードを抜き出し、父親に捧げるのが間に合っていれば。しかし今はヒメからその身分を奪ったジン(二階堂智さん)が着々と準備を進めていた。ジンは汚い手で親分の座を奪っただけでコードの入手はしていない。だからヒメはまだ諦めていない。何ならまだコード入手に固執していてボットにジンを殺害させようとしていた。手下がジンの姿を確認した、とヒメに連絡するがサニーの解析は複雑過ぎてタナカ・ユーキはまだコードを盗る事ができない。イラつくヒメ。

一方、彼らを見張るダイスケの許に電話が来る。プライベートな誰かとビデオ通話をしているようで大きな声が聞こえる。その時、盗られたはずのスージーのデバイスが鳴る。間近に聞こえる。悪戯好きのゼンがデバイスを掠め取って隠していたのだ。「怒る?」と、身を竦めるゼンだが「ママ、凄く助かった!」と言ってゼンのポケットにデバイス本体を隠したまま電話を受けるスージー。相手は拘置所にいるノリコだった。
最初は声も遠く、画面も悪いためスージーが話をしたくないのだ、と受け取ってノリコは電話を切ろうとする。しかしゼンが「おばあちゃん」と一言話した事でノリコの気持ちは一変する。スージーは矢継ぎ早に今の状況を説明するがダイスケの笑い声がうるさくてなかなか話せない。ノリコの横でもヨウコが息子と面会していてバカ笑いしている。ふと、その笑い声が重なる。ヨウコの息子はダイスケだった。スージーはノリコに説明する。彼はヤクザで私たちを監禁している。銃も持ってる。どうかヨウコさんに解放するように話して、と。スージーの声は切迫している。その騒ぎにダイスケが気づいてやって来る。
すべて聞こえているノリコは、平和に話をするのではなく、突然ヨウコの呼吸を繋ぐ酸素のバルブを閉める。苦しそうな声になったヨウコに気づき、慌てるダイスケ。

ダイスケのデバイスには苦しそうなヨウコの姿とノリコが映っている。
ノリコはダイスケに「それはうちの家族や、今すぐ解放しろ」と凄む。息ができないヨウコ。仕方なくスージーたち4人を解放する。スージーが銃を奪い、ミクシーに渡す。ダイスケに銃を向けるミクシー。ヒロマサはダイスケからデバイスを奪う。地下牢と拘置所という場所で、初めて顔を合わせるスージー、ヒロマサ、ノリコ、ゼンと言う家族。ゼンはノリコに向かって「おばあちゃん、大好き」と無邪気に手を振る。これまで鬱陶しい存在だったスージーとノリコが互いに「ありがとう」と言ってデバイスを切る。

ミクシーにこの場を任せ、スージー、ヒロマサ、ゼンは脱出する。祭りの会場に向かい、サニーを探す。バレないよう、鬼の面をつけて高台から眺める。

一方、ヒメはジンを祝杯する会場にふらりとやって来る。ボットにボディチェックをさせてヒメの話を聞くジン。「確かに望んだ結末ではないけど、組には強い親分が必要だから」というヒメの言葉に満足そうな顔を見せるジン。ヒメは、父親が好きだった酒を酌み交わそう、と差し出すが手が滑って酒瓶を落として割ってしまう。舌打ちしながら片付けようとすると鋭利なガラスがヒメの指先を切る。哀れさから懐紙を手渡すジン。

スージーは遠くでタナカ・ユーキがサニーを運んでいるのを目撃する。その先には焼きいも屋のレイジの姿もあった。急いでそこに向かう3人。祭会場は人が多くてなかなか前に進めない。イラつきから悪態をつきまくるスージー。ヒロマサは、サニーを騙してあいつらを襲わせよう、と閃く。しかしどの言葉がサニーの暴力性を引き出すトリガーになるのか判らない。ヒロマサはスージーに訊ねる。
「何か好きな言葉やモットーは?」「特にない」と言うスージーだが「僕も同じ事を聞かれた」とゼンは答える。
「何を聞かれたの?」
「ママがよくいう言葉」
「何て言ったの?」
ゼンはヒロマサが思わず引いてしまうくらいの英語スラングを羅列する。瞬時にトリガーとなる言葉を理解したスージーの許にヒメの手下が捕まえに来た。しかし彼をぶっ飛ばし(物理的に強いスージー)祭会場で歌手がパフォーマンスをしているステージに上がり、彼女からマイクをもぎ取るスージー。見物客の中には既に地下牢を抜け出して来たミクシーも混ざっていた。

「サニー、もし聞こえてたらお願い! タナカ・ユーキに Su*k a di*k!」
慌てるタナカ・ユーキ。スージーはそのスラングを繰り返す。会場内に響き渡るスラング。見事にサニーは起動し、彼に一発お見舞いする。こうなっては人間は勝てない。驚いたレイジは怖がってその場から逃げる。スージーたちは会場から出され、テレビ中継されてしまうがそれを見た拘置所にいるノリコは彼らが解放された事を確認して喜んだ。

ヒメはジンたちと共にいたがスージーの声を耳にして悔しがる。
この騒ぎで「祝杯はお預けだな」と席を立ち、豆まき会場へと向かうジン。その後をつけるヒメ。

豆まき会場は盛り上がっている。ジンを止めるヒメ。面倒くさそうな目を向けるジンの正面に立ち、ヒメは先ほど自分が割った瓶のガラスの破片でジンを刺す。
「うちの組には強い親分が必要なんだよ」
先程と同じ台詞を告げてヒメは体を離す。崩れ落ちるジン。体から、一筋の血が地面を伝う。赤い糸のように。

スージーがサニーを見つけるが彼女は逃げようとする。
「これ以上傷つけたくない」と瞳を潤ませるサニー。
「傷つけてないよ、バカだな。救ってくれたの」
スージーの言葉に思わず振り向くサニー。しかし、危険な存在である事に変わりはなく自分で自分を消去するのはゼンのためでもある、と話す。
「サニーはボットだから何とかなる」と、ミクシーはここでもサニーを否定しているのかと思いきや「問題のコードだけを取り除けばサニーを救えるって事!」

いつも互いを敵対視していたサニーとミクシー。
サニーは、救いたいの? と、ミクシーに問いかける。
不器用な笑顔で、どうやらそうみたい、と答えるミクシー。
ヒロマサは、東京にいる昔の同僚なら取り除けるかも知れない、コードを複製されないようにする事も、と話す。しかし今は安全な場所に行かなければならない。ミクシーが手を挙げる。
「私がサニーを東京に連れて行く!」
あまりにも危険な提案に反対するスージーだが、ミクシーは、さっきの銃も持ってるし、スージーとゼンには休んで欲しい、と言う。サニーは移動手段ならあります、と話に乗り、ヒロマサとスージーとゼン、ミクシーとサニー、と二手に分かれる事にする。心配そうなスージー。
「大丈夫だから」と言って背中を向けるサニー。

スージーは思わず呼び止めて、マサがしていた鳥が羽ばたくような投げキッスをサニーに送る。嬉しそうな表情で中指を立てて返すサニー。スージーとマサの合言葉。どちらからのジェスチャーでもサニーには伝わる。

スージー、ヒロマサ、ゼンは琵琶湖のマサが暮らしていた別荘へと辿り着いた。愛おしそうにその辺の物を撫でながら歩くスージー。置いてあるトロンボーンを鳴らすゼンの姿と若き日のマサが重なる。そしてマサがプログラムしたトラッシュボットのショウがやって来る。
「パパが作ったやつだ!」
嬉しそうにショウに駆け寄るゼン。

最後に、マサのナレーション。

正直、僕にも判らない。鬼が勝つのか、金棒を手に入れてしまうのか。何より君が僕の事をどう思うのか。でもいつの日か、全ては君の為だったと判ってくれる事を祈ってる。ムダじゃなかったんだと。君がこの手紙を読んでいるなら手遅れじゃないかも知れない。まだ希望はあるかも知れない。君に、もう一度愛していると言えるかも知れない……。

壁には「スージーへ」と書かれた手紙が張り付けてある。スージーはまだ気づかない。

サニーを後ろに乗せ、ミクシーが走らせるトラックは東京から外れた道を目指そうとしている。
「お手柄だったね。みんな喜ぶよ」
サニーに殴られ、顔を腫らせたタナカ・ユーキが助手席に乗っている。クールな表情を崩さないミクシーが一瞬だけ泣きそうな顔になる。何も知らずに安心した顔で車に揺られているサニー。スピーカーからはフレディ・マーキュリーの『グレート・プリテンダー』が流れる。



10話鑑賞。何てことだ。正にミクシーはプリテンダー。こうして迷路のようだった物語は終わりを告げる。実は1話から全てが繋がっていたようなラスト。ミクシーが1話で言った「赤い糸」は最終話に裏切りの赤い血として表現される。
理想論として話すと、この後、スージー自身はゼンやヒロマサ、和解したノリコと関係を深めていけばサニーの力を借りなくてもいいのでは、と思う所だが、サニー凶暴化の原因であるコードが元でマサが死んだと考えるとスージーの性格上、このままでいる訳がないとも思える。

1話から鑑賞して、全ての印象が変わってしまうラスト。一度だけ鑑賞した時は続きが気になったけれど、今はむしろこれで完結だと思いたいような気持ちになる。明かされないマサの手紙の内容がスージーを危険に晒すようなものではないと思えるから。あくまで自分がして来た事、冷蔵庫部門にいた、という嘘、そんな個人的な内容だと思う。そんなふうに考える私は、どこか物語の続きから逃げている。多分、マサが言っていたように「愛は人を傷つきやすくする」という言葉が当てはまってしまっているのだろう。

ここまで深く鑑賞した海外ドラマは初めてです。色々な感情が刺激され、とても面白かった。この後、しつこいですが番外編へと続いて終わりにします。

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画像は「AppleTV+Press」より

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