2012年ドラマ『ストロベリーナイト』感想
2012年ドラマ『ストロベリーナイト』鑑賞。
脚本 龍居由佳里、黒岩勉、旺季志ずか、林誠人
演出 佐藤祐市、石川淳一
原作 誉田哲也『ストロベリーナイト / 姫川玲子シリーズ』
最初に。
脚本家の皆さん、あんたたち鬼畜っすか(呼び捨て御免)
ドラマよりも先に劇場版、パイロット版を鑑賞後やっとドラマ視聴。劇場版もそうだったけれどこれほど重々しい題材のドラマを毎週放送していたのかと思うと言い方は良くないが少々寒気がする。
ヒロインは竹内結子さんが演じる姫川玲子。警視庁捜査一課殺人犯捜査十係姫川班主任である。その姫川が刑事を目指すきっかけとなった過去の事件があまりに痛々しく、私自身が感情的になり犯人に対し嫌悪感を抱くのですが大事なシーンなので結構紹介代わりに回想シーンが繰り返し流されてきつかった。
刑事課で唯一の女性であり勘が鋭いということもあり、名前をもじって「お姫様」「お嬢ちゃん」などとからかわれるが、そんな中でも姫川班で彼女を主任として同行する部下たちは姫川の行動を把握し、尊重している。
西島さんが演じるのは、姫川班の一人で最も姫川に近い存在の部下として描かれる菊田和男。普段はパチンコに通ったり少々怠惰ではあるが、姫川に関しては情熱的で彼女の心が揺らいだ時には、いち早く駆けつけたりして頼もしい。
ストーリーは初回こそ一話完結だったが、その後前後編のエピソードとなり毎回スッキリ終わらなかったのを視聴してから判明し、当時一週間に一度と言うスパンで待っていた視聴者さんたちはヤキモキ、というより次の週を待つ間体調を崩さなかったのか心配になった(私は崩した上に悪夢を)。
取り上げられる事件もサイコな犯人などではなく、リアルな人間臭さがあり解決はすれども被害者の心の傷は膿んだままなのでやり切れなさが残る。ドラマ版で新たに登場する姫川の部下、ノリこと葉山則之(小出恵介さん)も姫川たちには隠している過去があり、その事件のトラウマを拭いきれないまま物語が進行し、努力をしつつラストでもそれは覆らない。要するにきれいごとが一切ない。
ラストへと向かう九話~十一話までの「ソウルケイジ」というエピソードに突入すると重さは更に増し、女性や子供への暴力も容赦なく描かれる。その被害者の一人を濱田岳さんが演じる。彼の恋人である美智子(蓮佛美沙子さん)もエピソード内で犯人に凌辱されたことを姫川に勘づかれて彼女の腕の中で泣き崩れる痛々しいシーンがある。この「ソウルケイジ」での最重要人物を演じた濱田岳さんは一見したところ少年のようにも見えるのに、圧倒的な負のオーラを纏って登場し、瞬時にピリッと緊張するほど凄味のある存在感を示し、圧倒された。
姫川は自分の勘を信じて行動するため、先回りし過ぎて肝心な証拠に欠ける所はあるが、犬猿の仲のような警視庁の日下守(遠藤憲一さん)が男性の目から見て判らない部分を姫川に気づかされ、徐々に協力し合って行く。更に姫川自身の過去の痛みは女性たちへの共感にも繋がる。このドラマで描かれる女性はもれなく犯人がどんなに卑劣であっても、彼女らにとっては最愛の恋人だったので、突きつけられる現実を見せられた彼女たちがやるせなかった。
そんな凄惨な物語が続く中で姫川と菊田のやり取りは暖かく、時折コミカルなエピソードが挟まれ、ホッとする。菊田にとって敬う上司ではあるものの心底姫川を愛おしく思っているんだろうな、というのが随所で伝わって来て、回を追うごとに二人はいつ恋人になるのか? と思わされる場面も多かった。ただ、菊田は若々しく姫川にとって眩しい存在ではあるものの、好意を持てば持つほど菊田を傷つけたくないと思うだろうし、複雑な思いを抱く姫川自身の過去の傷跡を誰よりも知られたくないだろう。それこそ同程度の傷を持つ人間でなければ。実際、誉田哲也氏が描く原作では姫川と菊田に色恋を感じさせる書き方はなく、菊田は姫川班解体後に別の女性と結婚しています。生身の人間が演じるからこその「言い表せない何か」が出て来るのが面白いですね。
冷たい美貌を持つ姫川玲子が、意志の強そうな眼差しの竹内結子さんとぴったりで、そんな完璧に見える姫川のちょっとした隙を見つけてしまう菊田役の西島さんが長身で癖のあるハンサムで、超絶頼もしくて、でも少し生意気で、本当にお二人の相性の良さを感じました。
ホラーを見るかのように恐る恐る拝見しましたが(笑)
素晴らしいドラマでした。鑑賞できて本当に良かった。
🍓 誉田哲也先生原作「姫川玲子シリーズ」
🍓 こちらはスピンオフ作品
🍓 ドラマ版収録 Blu-ray BOX