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2024年 AppleTV+ドラマ『SUNNY』感想 8

🤖 第7話感想&ネタバレ

第8話 Trash or Not-Trash(邦題「ゴミかゴミじゃないか」)

8話は待っていたマサの若い頃の回想回。
ヒロマサのナレーションから始まる。

それはマサの幼少時代に遡る。マサは無邪気にカブト虫を追いかける少年だった。けれど何故か父親には認めてもらえない。ノリコがフォローして月日が経ち、マサは成人し、年老いた父親は病院で臨終の時を迎えるがその時もノリコはマサを病室に通すのを拒んだ。マサはどれほど父親の意識が薄れ肉体が衰えようとも絆だけはあると信じたかった。しかしノリコは既に大人であるマサに対し、子供をあやすような言葉で誤魔化す。マサの僅かな希望が絶望に変貌した瞬間だった。マサが部屋に閉じこもるようになったのはここからだ。

その後、リモートワークはしているものの何年経っても部屋から出て来ないマサに痺れを切らし、そこで田中、改め、ヒロマサ(國村準さん)にノリコから連絡が来る。マサにたどたどしく思いを伝えるヒロマサ。しかし部屋にいるマサからはゲームの音以外何の返答もない。しかしヒロマサはマサが遊んでいたゲームの作者であり、エンジニアとしての顔を見せる。そして琵琶湖に別荘があり1人で自由に使っていい、とマサを誘う。自分の本当の父親がヒロマサである事などは絶望したマサの耳には届いていないが、場所の提供は受け入れた。

琵琶湖の別荘に赴いたマサは好き勝手に過ごす。しかしそんな自堕落になっているマサの中にどこか自分の面影を見るヒロマサ。ただマサの心の壁を崩す方法が判らず苦悩する。
一方、1人の生活になったマサはヒロマサの私物を軽く扱い、本を倒し、引き出しを開けては放り投げ、置いてある高級な酒をラッパ飲みし、大事そうに引き出しに入っていたキットカットにも手を付けては投げ出した。様々な資料の中に人間とボットが共存する未来が描かれた冊子を発見して読もうとして広げるが、そこに挟まれていたのは若かりし頃のノリコとヒロマサが裸に近い格好で仲良さげに写っている写真だった。慌てて冊子を投げ捨てる。まるで汚れたものを見るように。

そこに見覚えのないボットが姿を現す。ショウと言う名前のボットはいわばゴミ箱。ただそのゴミを自力で集められる機能を備えている。そんなボットがマサの大切な物をゴミ扱いしたため慌ててボットに接続し、解析を試みる。しかしマサはここからショウをプログラミングし直し、有能なトラッシュボットへと導き出す事に専念する。生き生きとした表情を見せるマサ。

幾日もプログラムを繰り返し、ある程度、ショウに合格点を出して夜中、外へと出向く。美しい琵琶湖のほとり。祭りがあったらしく色とりどりの飾り付けが落ちている。ショウは延々とゴミかそうでないかを判別し始めるが、とある物の判別が難しく「これはゴミ?」とマサに訊ねて来る。カブト虫の絵が描かれた手製の飾り。マサの脳内で血の繋がらない冷たい父親からヒロマサへとシフトチェンジするようなフラッシュバックが起こる。カブト虫を褒められる、大きなキットカットを渡され、喜ぶマサ。
マサの空想を遮るようにショウが言う。
「ゴミじゃない」
驚いてショウを見る。
「あなたが物に対して顔をしかめたら、それはあなたにとって大切な物。なぜなら、あなたは悲しむ事を大切にする人だから」
その言葉に涙ぐみつつ、笑顔になりショウを労うマサ。心が通じ合っているような2人。
マサはそれまでのロボット工学者とは違った。彼がその道を選んだのはロボットへの興味ではなく、人間のようなロボットを作る事ではなく、ロボットの力を借りて人間が、人間らしく生きる事だと。

マサにとっては喜びの出だしであったが、帰宅すると玄関先で仲睦まじいノリコとヒロマサの姿を見つけ、凍り付く。ショウに「あれはゴミだ」と言い捨て言葉の通りヒロマサを襲うショウ。慌ててショウの腕を蹴り飛ばし壊してしまうヒロマサ。しかし、ヒロマサよりもノリコがマサを孤独にした原因だと感覚で理解する。ノリコは説明せずにその場を後にしようとする。マサは叫ぶ。
「ちゃんと説明してくれよ。なんで隠してた? なんで話してくれなかった? なんで教えてくれなかったんだ!」
その言葉がスージーとオーバーラップする。

回想シーンが終わり、現在。
「なぜマサは私に黙っていたの?」
スージーがヒロマサに訊ねる。
「なぜあなたに隠していたのかは判りません。ただ、自分の全てをさらけ出すのが怖かったのかも知れない」
どこか納得しつつヒロマサの話に耳を傾けるスージー。飛行機事故の数日前、マサはヒロマサと会っていたと言う。その時のマサは怯え、慌てていた。そしてスージーにサニーを渡した。
「なぜ怯えていたのか知ってる?」
問いかけるスージーに、それは判らない、と答えるヒロマサ。ただこう言っていた。
「頼れるのはあんただけだ。あいつらを守らないと!」

その一方でトラッカーについてスージーに話した上、ヒメに連絡をしなかった事を責められた電気屋のリサはテツに手荒い拷問を受ける。恐ろしいシーン。ヒメは「時間だよ」とどこかに連絡を入れる。それはスージーの家。レイジが入り込んでいる。しかしサニーはレイジの言う事を聞くようにハッキングされているようだ。

スージーはトラッカーの事をヒロマサに説明する。その途中でトラッカーがスージー、ノリコ、サニーの3つではなくもう1つある事が判明する。黄色い点は拘置所にいるノリコ、緑はヒロマサ、オレンジはスージーがつけていた結婚指環で現在はサニーの体内にある。もう1つ、青の点がある。ヒロマサは日付を遡り、それらがどこにいたのかを調べる。天才の所業。大晦日からクリスマスへと遡る事ができ、その間にミクシーの農場に行った事も判明する。そして事故の前、飛行場からスージーの家に向かっている点が2つあった。脳内に蘇るゼンの笑顔。スージーは「息子を探しに行く!」とその場から駆け出し、3人は2つの点が現在向かっている場所へと急ぐ。

確実に辿り着きたい場所に着いたところでスージーの足が止まる。
「もしも、ここにゼンもマサもいなかったら……」
頼りなげなスージーをミクシーは勇気づけ、建物の中に入る。スージーは地下室の階段を下りる。そこで「ママ!」と呼ぶゼンの声が聞こえる。片っ端から開くドアがないか探すスージー。奥のドアが開錠されていた。その先に、とうとう生きているゼンの姿を見つけた。駆け寄るスージー。しかしそれを止める声。スージーは突如羽交い絞めにされ、こめかみに銃が充てられる。ゼンの近くには怒ったような表情のサニーがいてテツの声で、スージーを殺せ、と号令がかかる。迫り来るサニーに恐怖で目を硬く閉じるスージー。しかし、悲鳴はスージーの近くから聞こえた。スージーの口を塞いでいた誰かがスージーの身体から力なく崩れ落ちていく。テツが殺されていた。
「……スージー、大丈夫?」
今まで通り、元の優しい声と表情のサニー。しかし殺したのはサニーだ。戸惑うスージー。サニーは自分が何をしてしまったか理解できていないようだ。サニーに罪を犯してしまった事への警報音が鳴り、スージーに助けを求めながら奈落に落ちて行く。


気にかかっていたマサの痛ましい思い出を回想する8話。
この回ではエンディングソングがなく無音で終わる。毎回オープニングでカブト虫を踏み潰す存在が描かれていて、これはマサなのではと思っていたが、それは自分の息子ではなくマサを可愛がれない父親の姿だったと判る。
自分に何1つ本当の事を教えてくれない母親、突然問題を起こしてから現れた本当の父親。更にはそんな2人の仲が良さそうな写真の数々を見つける。
あのままでは心が壊れてしまうだけだったろう。そんなマサの前にまだまだ改善の余地があるトラッシュボット、ショウが現れた。

余計な気遣いをする事もしなくていいボットは最高の相棒だった。
徐々に感情を取り戻して行くシーンは微笑ましく、物語の後半でショウに自分の心の柔らかな部分を指摘され、泣き笑いになる。その時のマサにはショウが風で吹き飛ばしたゴミすら美しく見えた事だろう。このトラッシュボットは6話でノリコが「返答不要」の電話番号にかけた先でも登場していた。

トラッシュボットであるショウくんのように用途が決まったボットですら、プログラムを変更すると知能が上がって行った。サニーは更に発展したボットで既に感情を読み取るプロセスも通過しているし、嫉妬心も理解し、反省するよう努力する事も行っている。ただ高度であればあるほどプログラムを替えられた時、それはますます危険な物になってしまう。マサが心痛の中で発明したものがこれから誰に危害を加えてしまうのか。それは止められるのか。また、マサ本人は生きているのか……。

西島さんご本人のInstagram.
8話のエピソード放送時、いい表情をしたマサの画像が投稿されています。

🤖 Sunny is now streaming on Apple TV+

※トップ画像『Apple TV+Press』より

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