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2024年 AppleTV+ドラマ『SUNNY』感想 9

🤖 第8話感想&ネタバレ

第9話 Who's in the Box?(邦題「箱の中身は何だろな?」)

いよいよ大詰めの第9話、と思ってドキドキして観始めたら……。
いきなり別の番組が始まったかのような陽気な映像が(笑)日本のバラエティでは有名なコーナー『箱の中身は何だろな?』が行われます。(自分からは見えない箱の中に手を入れて中身を当てるクイズ)レトロでいてこの色の組み合わせは下手すると悪趣味すれすれ、と思ってしまいそうな堪らなくポップなセットで可愛いですが、このセットで語られる9話はサニーの頭の中の話。サニーに関連する人物、記憶が作り出している物、今のサニーになる前の深い深い記憶。

テンション高めのMC役としてタナカ・ユーキ(関口アナンさん久しぶり!)とキラキラした着物姿のノリコが担当。どうやらサニーが目にした人物はすべて登場するようです。楽しそうに進行しますがこの架空の番組は『Should Sunny?  Wipe Herself』(サニーは記憶を消去すべき?)と言う物騒なタイトル。サニーがどんな罪を犯したのか、それによってサニーの記憶を消去するかしないか、の選択がされる。3つのゲームをして答えは番組最後に観客の判断に委ねられる、という筋書きです。
1番目はタイトル通り『箱の中身は何だろな?』。サニーは3つの箱の中に入っているものを当てさせられる。そこには死んでしまった雛鳥のジョーイー、アダルトショップ店員のタクミ、そしてミクシーが登場し、みんなサニーに利用されたと発言。ミクシーを殴った事に対してサニーは「先にミクシーがナイフを出して来たから」と説明するも実際にはミクシーは何も持っておらず、ただサニーがミクシーのお腹を殴った場面だけが再生された。

観客は「Wipe(消す)」を選択。そこで観客席が照らし出される。観客は複数のマサだった(圧巻の量産型西島秀俊さん)2番目の『箱の中身』はサニーの作り手であるマサ自身がどのようにボットを開発、製造して来たかを語って行くサニーへの助け船だ。

サニーは6体いるボットの中の1体で、家事を手伝うホームボットとして誕生。当初、冷蔵庫部門にいたマサはイマテック社が冷蔵庫市場を独占するのを見届けた後、家庭用AIの開発に携わって来た。マサ自身が辛い想いをして来た引きこもりの経験から、家事だけではなくもっと孤独な人間の心に寄り添い、社会復帰に貢献できるボットを作るために。マサはボット同志のカップルも誕生させる。そして人間の被験者も募集。その1人にアサヒ(柳谷一成さん)がいた。最初は極度な人見知りで誰とも一緒に過ごせなかった彼が6番ボットと一緒に過ごす日々の中で徐々に変化を起こして行った。
しかしボットが人間と接する中で、人間が痛みの声を上げるとそれが治療中の痛みだとしても人間を守るために、痛みを与える物=医者であっても敵だと認識してしまった。最初に暴走したのは32番のボットだったが、そのバグの中ボットの喧嘩に巻き込まれそうになった人物を救ったのはアサヒだった。マサはバグがあればその都度修正していった。そして、アサヒも段々表に出て人間に接する事ができるようになる。それが6番ボットと過ごして来た彼の成長になっていた。

観客は「Not Wipe(消さない)」に投票するがサニーは止める。
イマテック社以外の場所でジャンクリーグと言うボットファイトが行われていた、バグが外部に漏れている、更にマサはいなくなりゼンも誘拐され、ヤクザは殺人も行っている、そんなに美談ではないとサニーは話す。3番目のゲームを仕掛けたのはサニー自身だった。

マサがバグを修正している場面には続きがあり、タナカ・ユーキがコンセントに細工をしている場面が映し出される。コードを誰かに売ったのはタナカ・ユーキだった。しかしこの先、もっと大きなバグが起こる。
マサがカップルにしたボットはアサヒと過ごしていた6番、と17番ボット。しかし6番が心変わりした事で17番が激怒。6番に殴りかかる。マサが17番に「おやすみだ!」と告げたのはアサヒがボットの間に入り、17番に殺された後だった。

部屋からみんなを出て行かせ、改めて17番を起動させると何事もなかったかのように「マサ、大丈夫?」と問いかけて来た。
マサは涙ながらに17番をテーブルで殴り付け、破壊する。社員は警察を呼んでアサヒの家族に連絡しようと言うがアサヒには身寄りがなかった。マサはヤクザがボットが殺人を行えるバグのコードを欲しがっているのは勘づいていた。
「全てを処分する」
マサはパソコンにロックをかける。そのそばで柔らかな可愛い声のボットがマサに呼びかける。
「いつも言ってるじゃん、大丈夫だって」
マサはそのボットに布をかけながら言う。

「これを明るみに出してはならない」

この話をノリコは信じない。しかし有無を言わさずサニーは早送りをして4時間後の映像を再生する。すべて終えた後なのだろう。ボットに被せた布を払うマサの姿があった。疲れ切ってネクタイも歪み、酒を飲んでいる。その正面にいるボットにマサは言う。
「ごめんな。32番」
32番ボットはマサの肩に手を置き、再度「大丈夫だよ」と慰める。
「そうかな。32(サンニー)」
ボットの背中には32の文字。サニーの前身。だからサニーにはこの記憶があった。サニーはマサに問う。
「じゃあなぜ今、私がここにいるの? 人の死を隠してボットを救うなんて酷過ぎる!」
マサは答える。
「スージーのためだ」

殺人の話がヤクザに知られたら必ずコードを奪いに来る。
スージーは自分とよく似ているから怖かった。もしも自分の身に何かあったら、自分にとってのボットのような存在が必要だと思った、とマサは話す。毒にも薬にもなるボットの存在から毒だけを排除し、リミッターをプログラムし直し、32番の過去の記憶を消去した。そしてサニーが誕生する。もう2度とあんな事が起きないように。マサが最後にその作業を一緒に行ったのは本当の父親であるヒロマサだった。2人で朝までかかってサニーを作り上げた。

このクイズ空間の中で最後にサニーが登場させたのはヒメだった。
サニーはヒメに問う。コードをタナカ・ユーキに盗ませたの? だから自分の感覚がおかしくなったの? と。しかしヒメは不敵に微笑みながらサニー自身がした事に向き合わせる。
「スージーを守るため、と言いながら小さな嘘をつき続け、プログラムを無視する事に慣れてあんたは自分を見失って行った。あたしはその潜在意識の手助けをしてやっただけだ」
サニーは敗北感を憶える。スージーを愛する気持ちを利用された、と気落ちし、改めてマサに問いかける。
「愛はムダってこと?」
マサは以前、32がそうしてくれたようにサニーの肩に手をかけて答える。
「愛は人を傷つきやすくする。でもそれが人生だ。そのルールを作ったのは僕じゃない」

気がつくとサニーだけがこの空間にいた。決断をするのはサニー自身。あれだけ華やかだったスタジオの灯りが消え、サニーは自分の体内から放電する。見渡すと、真っ暗闇の中に古いフィルムのようにスージーが映し出される。スージーがサニーに添い寝をお願いして来た日。スージーの泣き出しそうな微笑み。ずっと出会ってから怒りも悲しみも笑顔も共にして来た。その記憶を閉じ込めるように大きな瞳を閉じ、サニーは「Wipe(消す)」のドアを選択する。



最初に9話を観た時、正直「ふざけてんのか?」と思った(一瞬です一瞬w)。日本のバラエティやアニメーションが再現され、バックに流れる音楽やSEも「カリキュラマシーン」「徹子の部屋」「欽ちゃんの仮想大賞」などが使われており細かさに驚いた。海外の監督さんでここまで把握してるの凄いな、と思っていたら9話のみ日本人の監督、長久充氏が担当されていた。なるほど、あれだけのバラエティ番組に詳しいはずです。と言っても私はそれほど詳しくないので超がつく有名な番組しか判りません(すいませんごめんなさい。ドリルをしまってくだs)
ちなみに32番ボットの声を担当している湯川ひなさんは長久充監督作品『そうして私たちはプールに金魚を、』(2016年)で主演を務めています。2022年にはparavi(現在U-NEXTに統合)の『それ忘れてくださいって言いましたけど。』にヒナさん役で出演。そのドラマには西島さんも出演されています。

しかし、今回語られた事柄は非常に重い。
1話冒頭で出て来た死体はアサヒという孤独な青年だった。彼の魂はボットによって救われたが命はボットにより奪われた。サニーは「ボットを救って人間を救わないなんて酷い」と怒るが、この言葉が限りなくボットだと感じさせてしまう。初期設定として人間を救うというプログラムが為されているから。プログラムの恐ろしさを知り、マサがボットを叩き壊すシーンは見ていて辛かった。こういうクレイジーな演出でなければ一体どうやって全話中一番の重い物語を語れただろう。その反面、クイズ空間が消えて最後にスージーとの添い寝シーンが出て来るとサニーの純粋な気持ちが透けて見えるようで胸がきゅっと痛みます。
ここでのサニーは本来の自分だったボットの事、マサが破壊するほど危険な部分も含んでいる事を知る。そのサニーが選択した道は、人間にとってはしてはいけない事。いよいよ次回が最終話です。

追伸 /
書き忘れた事がありました。サニーが犯した罪を見せられる中に「ミクシーがナイフを持っていたから殴った」と記憶していたサニー。それはボットの特性でスリープしている間の記憶はないからかな、と思いました。5話で農場に行く途中、ヤクザらしき男と森の中で会ってしまうシーン、辺りを暗くするためにサニーはスージーにスリープさせられた。その後、安全だと確認した後に起動させると「あれはさっき駅にいた男です!」と、男が去った事も知らない状態だった。

あのシーンでは軽くあしらわれ、ユーモラスなシーンになっていたけれど、あの特性であれば5話ラストにサニーが連れ去られ、6話でスージーに起動されるまでの間に見たミクシーはお寺で護身用の果物ナイフを持っていたのが最後だった。そして起動後、最初に見たミクシーは声を荒げてスージーと口喧嘩をしていた。森の中で起きた事と同じ現象が起こったと考えてもおかしくない。もちろん、あからさまな暴力を振るうのはリミッターが外れかけていたからではあるけど。
ヒメはコードも入手していないのにサニーを壊す筈はないので、ただスージーやミクシーと距離を置かせてサニーがどのような状態になるのか、探ったのではと思った。もっと遡ると3話「ジャンクリーグ」で参加させられそうになったサニーを止めに入ったスージーに対してヒメが煽り、サニーはスージーをかばった。その時、故意ではなかったがヒメの義指が外れた。ヒメはその時から既にサニー自身に暴力性が備わっているのを見抜いていたのかも知れない。


🤖 Sunny is now streaming on Apple TV+

トップ画像は『AppleTV+Press』より

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幸坂かゆり
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