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進みたい道は、「切り開く」。三浦 梓さんの「キャリアストーリー」(#私だけのキャリアストーリー 004)

進みたい道がなければ、自分が一歩踏み出して作ればいい。

誰もやったことのないようなアイデアや生き方を自らが率先して実行すれば、それが結果として他の人が歩める新たな「道」を拓くことにつながる−−。三浦梓さんは、これまで自分が率先して「道を切り開く」ことを常に意識しながら「イノベーター」としてキャリアを歩んできた。

「キリスト教系の学校に通っていた時、特に印象に残っていたのが『狭い門から入りなさい』という聖書の言葉です」と語る三浦さん。現在は海外駐在員の配偶者らのキャリアを支援するコミュニティ「駐妻キャリアnet」の代表を務める傍ら、自らも「駐妻」としてブラジルに在住している。

誰もが選ぶような「広い道」を選ばず、あえてより険しい「狭い道」を選ぶことが、最終的に自分そして社会に良い結果をもたらすこともある−−。そんなことを意識してきたという三浦さん。これまで、企業の人事担当や外資系コンサルティングファームの採用責任者、フリーの人事コンサルタントなど、「人」と関わるあらゆる仕事を経験してきた。

「人によって、何か指針があったほうが動きやすい人もいれば、自分が先頭に立って道を切り開いていくほうが好きな人もいます。私の場合は後者で、例えば人が『こういう生き方があるんだ』と参考にして、頑張れるようなきっかけを作ることができれば嬉しいなと思います」と三浦さんは言う。

「もちろん、100人いれば100通りの生き方があるように、ロールモデルは一人に決める必要はないと思っています。だからこそ、色々な生き方の人を紹介したり、時には自分自身が先頭に立ってまだないことに挑戦しながら例を作ったり。そうした活動の中に、自分自身の『価値』を発揮できる瞬間があるように思うんです。」(三浦さん)

きっかけは、「人が好き」

三浦さんが人事のキャリアを志したのは、新卒で入社した会社の採用担当者による親身な対応がきっかけだったという。

大学を卒業後、コンサルティングファームと大手人材メディア企業との間で、どちらに就職するかを悩んでいた三浦さん。最終的にはその時に親身な対応をしてくれた担当者の対応に心を打たれ、後者への入社を決意した。

「私がどちらに入社してよいか悩んでいた時、担当人事の方が私の人生にとってどの選択がよいのか、それぞれのメリット・デメリットをまとめてくれて、自分事のように真剣に一緒に考えてくれたのがとても心に響きました」と三浦さんは当時を振り返る。

「就職という私のこれからの人生を決める大事な時に、会社のためだけではなく、私自身の人生のためにしっかりと寄り添って一緒に悩みを考えてくれていると感じられました。その時の方の対応にすごく感動して、同じように人に寄り添えるような人事を目指すようになりました。」

入社後は営業や商品企画を経て人事職に就くと、持ち前の「人に寄り添う」という三浦さんの性格が存分に発揮された。転職して外資系コンサルティング会社に採用責任者を担当した後は、フリーの人事コンサルタントとして独立。採用戦略設計から担当者育成に携わるなど、「人」に焦点をあてた仕事に従事し続けた。

「昔から、私は人の良いところを見つけるのが得意だと周りに言われてきました」と語る三浦さん。実際に人を深く知り、「この人は他の人とここが違う」や、「この人は、ここが良い」といった、出会った一人ひとりの個性や良さを見つけることに自身の「人に興味を持つ」という強みが活きたと語る。

「根本的に『人が好き』ということが、人をよく見ることにつながっているのだと思います。この人がこう考える背景には、きっとこんな思いがあるんだろう、とか。一人ひとり深くまで見て、その背景を考えることが、昔からすごく好きでした。」

「駐妻」たちが輝くために

その後、パートナーの海外赴任に帯同する形で、2020年1月にブラジルに渡った三浦さん。2020年11月に「駐妻キャリアnet」に就任した後は、自身の人事としての経歴を活かしながら世界中の「駐妻」のキャリアに焦点をあてたサポート活動を続けている。

「海外に来た方が一度キャリアを中断してしまうと、自分たちの価値が求められていないのではないかと感じて自信を失ってしまう人は多いです」と三浦さんは言う。

「例えば、元々バリバリ働いて年収800万と稼いでいた人が、自分のスキルをボランティアでも良いからといって無償で提供するようになったり。もちろん、自分の能力を役立てられる場を得られることは良いことなのですが、消極的な選択肢として無償でスキルを提供しているのだとしたら、それは必ずしも良いことばかりではないと思います。」

そんな状況を見て、三浦さんは「駐妻キャリアnet」をキャリアを継続したい「駐妻」と機会をつなぐコミュニティとして活動を強化させた。今では、企業と連携して時差を活かしたリモートでの仕事を創出したり、スキルを磨き続けられるような教育プログラムを作るなど、キャリアを支援する仕組みを作り続けているという。

「駐妻の方々が『自分はこれができる』という強みを武器に、海外でも自分の専門性を活かして自分の足で立っていけるんだ、という自信に満ちた喜んだ顔を見られた時が、一番嬉しいです」と三浦さんは言う。

「人はだれしも、周りの社会とつながっているという感覚を得られる場があることが絶対に必要だと思います。幸いにも私には人事の経験があって、人の良さを見て伸ばすということが得意だったので。その経験を活かして、仕事という形で人が活躍できる場を創ることができれば、本来もっと活躍できる人がキャリアを継続できる社会づくりに貢献できる。そう考えています。」

切り開く「楽しみ」が原動力

三浦さん自身は、ブラジルで「駐妻」となることにキャリアの不安はなかったのか。そう尋ねると、笑いながら「それが全くなかったんです」という回答が返ってきた。

「私自身は、多分辛い環境のほうが活き活きするタイプなんだと思います」と三浦さんは続ける。「ブラジルに行くことが決まった時も、せっかくならブラジルでしかできないことを楽しもうとか、結構楽観的に捉えていました。」

「昔から課題を見つけて、そこをどう乗り越えるか考えたり、険しい道を這い上がって成長する感覚が好きだったんです。どうにもならない状況に置かれた時や、人が助けを求めている時など、他の人がなかなか手を出せないような課題に自ら飛び込んで道を切り開いた時に、自分自身の価値を十分に発揮できたと感じるのだと思います」と三浦さんは言う。

「自ら道を切り開いていくと、他の人が知らない世界を知ることができて、自分の見識が広がっていく感覚がある。その楽しみがあるからこそ、世の中にまだ無いものを自分の力で作ろうという発想になれるのだと思います。これからも、今までになかったものが何かを常に探しながら、新しい道を切り開き続けて行きたいです。」

(文・村井秀輔/写真・本人提供)


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