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器用に生きたいわけじゃない。そんな人に見てほしい映画『笑いのカイブツ』
先日、映画『笑いのカイブツ』を見ました。
目が離せない内容だったので、記録がてら感想をつづります。
あらすじ
2024年1月に公開された映画『笑いのカイブツ』は、岡山天音(30)さん演じる「ツチヤタカユキ」の物語。
笑いに憑りつかれ、大喜利番組にネタを投稿し続けていたツチヤは、目指していたレジェンドの称号を得る。その才能から劇場の作家見習いとして活動することになるが、人間関係が不得意ゆえに周りから嫌われ、厄介者扱いされる。
自暴自棄になるも笑いから離れられず…
そんな感じのストーリーです。
笑いに関わる人の、心模様が見たくて
「笑いがすべて」なのに、その情熱だけではどうにもならない現実。どうして生きたいように生きられないのか。答えが出ないまま、笑いから逃れられない男の様子が描かれているこちらの映画。
そんな映画を見ようと思ったのは、お笑いと主演の岡山さんが好きだったから。それと、笑いに関わって生きることを選んだ人たちの心模様をのぞいてみたいと思ったからです。
持ちたいようで持ちたくない「逃れようのないもの」
映画を観終わって感じたのは、当たり前のように「逃れられないもの(笑い)」があることへの羨ましさでした。
才能があり、その才能で苦しみ悩んでいる人のことを私は単純にうらやましいと思うのですが、才能がある・ないこと自体は本当は大事な部分ではなくて
「どうしようもなく考えてしまうことが、今ある」
という状態が、うらやましいんだと思います。そういう夢中になれるものって、欲しいと思って手に入るものじゃないので。
本人からしたら「いい加減考えたくないんじゃ」と思うときもあるだろうけど、やっぱりうらやましいです。
器用に生きる=人にやさしい、わけでもない
あともうひとつ思ったこと。この作品では、人間関係をうまく築けない人間の苦しさが描かれています。
「人との関わり方」は幼少期に親を見て学び、学校生活を経験して学び、社会に出て周囲から学ぶことがあります。ただ、普通に生きていればたいていの人が「人と上手く関われるようになっていくのか」正直分からないなぁと感じます。
年を重ねて、はたから見たら「大人な対応」といえる言動をしているように見えても「なぜ今、この言葉をかけなくちゃいけないんだろう」とか「今ここでなぜ、自分がこうしなきゃいけないのか」と思うことがたまにあります。
「その方が人との関係を良好に築けるから」と言われれば、それまでです。事実、それが生きやすさをつれてきます。
だけど「あほらしいなぁ」と思うこともやっぱりまだあって。
そんな子どもみたいなことをいつまで考えているんだろう、と自分に愛想をつかしながら、そういう大人なふるまいに首をかしげてしまう、成熟していかない自分が自分なんだと思うときもありまして。
器用に生きられる良いところは「自分が楽できること」であって、器用に生きること自体は人生のゴールでもなんでもないんだろうなぁ、とこの映画をきっかけに考えさせられました。
ただ人を笑顔にさせたい人
『笑いのカイブツ』のツチヤは、自分の笑いが評価される世界、自分が正義である世界を自分勝手に望んでいるように見えるものの、裏側で人との関わりを切実に求めているように見えます。
その人との関わりの手段として「笑い」を選んだのかもなぁ、と思います。
大喜利番組でレジェンドになることは、自分を認めてもらえるうれしさを欲していたのかもしれないけれど、さんざん迷惑をかけ、かけられた母親に対して「笑っていたほうがいい」というシーンがあるんですね。
そのシーンが印象的で「ツチヤはただ人を笑顔にさせたいだけなのかな」と思いました。
ツチヤのように分かりやすく、人との関わりが苦手に見える人もいれば、ツチヤと同じことで葛藤しながら、もう1人の自分が周りを観察し、関わり方を変化させていった人も少なくないはず。
作中ではツチヤに才能を見出して、才能を開花できる環境を与える人も登場します。現実にもこういう人は少なからず登場してくるし、そこにタイミングや運が合わせれば、ありたい方向に向かっていくこともあるだろうなと感じました。
主演の岡山天音さんを知ったきっかけ
実は主演の岡山さんを好きになったきっかけは、岡山さんがゲスト出演されていた千鳥・かまいたち 4人の冠番組『千鳥かまいたちアワー』を見たこと。
「一瞬ドキッとさせる芝居選手権」という企画で、同じくゲストだった斉藤由貴さんをドキッとさせる芝居ができるか、演技力を競い合うというものでした。
そのときの岡山さんのお芝居が、少し照れたような感じで、斎藤さんに声をかけるのをためらっているような仕草をされていたのが可愛らしくて好きになりました。
人を好きになるきっかけって、ささいすぎますね。
『笑いのカイブツ』おもしろいので、ご興味ある方はぜひ…!