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さざえのつぼ焼き、美味しいなぁ。。

夜中のトイレから戻って、ベッドに横たわったとたんに
「さざえのつぼ焼き…」と、ヨシコちゃん。

「さざえのつぼ焼きがどうしたの?」と問いかけると
ヨシコちゃんはしばし沈黙。しばらくして…

「サザエさん、サザエさん、サザエさんは漫画だけど…」

吹き出しそうになるのを必死にこらえて
「うんうん、サザエさんは漫画だね」と伝え返すと
また、しばらくして…

「さざえのつぼ焼き、美味しいなぁ」

さざえの旬は、春から初夏。
越冬の昨今、うかうか見かけるはずはなく
そもそも、私がつぼ焼きを注文しても
箸をつけないヨシコちゃんが、なぜ?

すっかり言葉を失って、とまどいに漂っていたら
「貝が買えない時期があっんだよ」

「・・・?」

「高砂のお寺には、美味しいものがたくさんあって
 貝も魚もたくさんあった…」

高砂のお寺とは、ヨシコちゃんの生家のこと。

白砂の美しい浜が庭のように続く
ヨシコちゃんの生家のお寺は、
八田治郎大夫という漁師さんの屋敷跡で
讃岐へ流される法然上人をお迎えしたとか。

お魚の殺生を仕事にしている治郎大夫さん
このままでは成仏できないのでは、と
法然上人に悩みを打ち明けたところ
殺生を仕事にしていても、念仏を唱えれば
仏さまは救ってくださると、法然上人。

それから、治郎大夫さんは昼には漁へ出かけ
夜は奥さんと念仏に励み、成仏されたそうです。

ヨシコちゃんが生まれた昭和ヒトケタになっても
地元の漁師さんたちはその逸話を信じて
成仏したいなぁと、治郎大夫さん所縁のお寺を
大切にしてくださっていたのでしょうか。

ヨシコちゃんの記憶によれば、朝な夕なに
漁師さんたちは獲れたばかりのお魚を
お寺に届けてくれたそうです。

つぼ焼きとつぶやいたとたんに
生家を思い出したのか
生家を思い出したから
「さざえの…」とつぶやいたのか

貝が買えない時期でも
漁師さんたちのおかげで
魚介が豊富だった生家で
さざえを食べたのか。。

が、高砂の浜でさざえが獲れるのか

ヨシコちゃんのオコトバは謎に満ち満ち
その謎が解けたのは、一週間ほど後のこと。

訪問リハビリのトレーニング中に
セラピスト先生の指導どおり上手く動けず
かたまってしまったヨシコちゃん。

「ころころで、まるで貝みたい。。」

そっか、ヨシコちゃんは上手く動けないと
貝になった気分になっちゃって 
あの夜は、さざえの気分だったんだね!

ヨシコちゃん、もし、さざえになってもね
決して焼いたりしないからね💓

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