「池袋シャーロック」1話と2話をみた
緊急事態宣言でイベント各種が中止となり悔しい思いをしている同志諸君、いかがお過ごしだろうか。
こんなときこそ、配信イベントを存分に楽しみ、課金しよう。
そういうわけで、本日はこちらを堪能した。
「池袋シャーロック 最初で最後の事件」
全6話構成の朗読劇。本日から順次公開される。
1話と2話は収録配信で同時公開だったが、順番どおりに見ることを、強くおすすめする。
(理由は後述)
物語の前提、そして現実と虚構
推理力がない超お人好しの北崎教授が主人公。
彼の友人にしてワトソン役の絵里坂准教授。
北崎教授に心酔する学生・伊波。
彼らが、本日配信された1-2話の登場人物だ。
それぞれ配信時間は1時間ほど。
開幕で北崎教授が
「無辜の聴衆たちよ、1時間後にこの第12講義室に集まるんだ」
と仰せで、現実とリンクしているのが粋である。
現実とリンクしているのは、構成だけではない。
北崎探偵と、それを演じる浪川大輔さんのお人柄も絶妙にリンクする。
人を疑えず、憎めないお人好しなところ。
1/2の確率であたるクイズをことごとく外す、ある意味天才的なところ。
人の気遣いに非常に聡いところ。
現実と虚構との絡み合いゆえ、物語にいっそう引き込まれる。
※以下、ネタバレになりうる記述を含みます※
1話「教え子と鈍色の研究」
大学構内で起きた殺人事件。
人通りの少ないところで、多くの人とトラブルを抱えていた教授の刺殺体が発見される。
よほどの怨恨か、3度も刺されている無残なご遺体。
遺留物なら手の中に残されているはずの犯人の(ものとおぼしき)ボタンがポケットの中。
見るからに殺人事件、でも不可解なことが多すぎるし証拠もろくにない。
さあ、偽りの名探偵・北崎教授はこの謎を解けるのか……??
助手の絵里坂の的確なサポートと、真の天才探偵・伊波により、北崎教授は切ない真実にたどり着く。
「かなり真相に近づいてきたんじゃないか? その割に、お前は嬉しくなさそうだけど」
絵里坂がそう言った瞬間、聴衆たる私たちと、人間の機微には聡い北崎教授も、犯人を悟ったのだと思う。
この瞬間の切なさたるや。
解決編での、「……不自然だよ」の言い方がそれを増強させている。
畏るべし、浪川大輔。
最後の最後で、伊波が「何かが違っていたら、結末も違っていたかも」というのは、この6話構成の伏線である。
2話「友とまだらの雪の冒険」
まず開始早々、雪が降っている。1話と天気が違う。
そして、事件の概要もまるで違う。
教授が死んでいたのは自らの研究室。
最初から死に至らしめたのは鋏だとわかっている。
探偵が解き明かすべきは、「事件か事故か」。
そしてキーワードは「プロバビリティの犯罪」。
……1話と全然違うじゃん!?
脚本家の方、これ重労働すぎません? 大丈夫!?!?
……と、書く側の心配をしたくなるくらい、ガラリと変わる。
でも私、こういうの大好き。
雪が降っていて、北崎が絵里坂を迎えに行ってカレーを食べに行った。
だから2人ともアリバイがある。
これもまた、「何かが違っていたら、結末も違っていたかも」のうちだ。
連作短編、最高。
心を粉々にされたのが、北崎教授が23:20あたりで言う台詞。
(ネタバレ注意)
「こんなことを言うのもなんだけど、絵里坂が犯人じゃなくてよかったよ」
1話を経てみると、もう声にならない叫びを上げそうになる。
その哀しい世界線もあったんだよー!
ラストシーンで、さらにダメ押しがくる。
「もし仮に、もし仮にだが、絵里坂が殺人を犯したとしよう。
私は探偵として……君を、犯人だと言えるだろうか」
瀕死。1話を見た後の視聴者、瀕死。ここが殺人現場か。
まさにプロバビリティの犯罪。
安心してください、北崎教授。
1話であなた、きちんと自分の役目を果たしましたよ。
やっぱり名探偵だよ、と手のひらを返すように褒め称えたくなる。
そして続く物語
千々に心をかき乱された1話と2話。
3話以降は、どうやら新たなキーパーソンならぬキーキャットが登場するらしい。
どんな展開になることやら、期待に胸が膨らむ。
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