いまだにPCエンジンへの愛情を抱えている話
先日SONYより、9月2日からのPS5、PS5周辺機器の価格改定が発表された。
新価格だけ掲載して現在の価格を併記しないのはやや誠実ではないなと思いながらも、本体価格では1万円以上の値上げ、BDドライブ付きの本体価格はついに¥79,980と8万円台の領域にまで近づいた。
いよいよゲームハードの価格もここまで来たかという印象もありながら、もう一方でかつてこの価格帯で売られていたハードがあったことを思い出した。
そのハードとは初代PC-Engine CD-ROM²である
Xにてわかりやすい画像を張られている方がいたので参考までに。
このハードは3つのパーツに分かれているのが特徴。実は右側のパーツは単体でもHuカード製のゲームが遊べるゲームハードとして独立している。そしてドッキングベースと表現したらいいのだろうか、表現が難しいがセーブメモリなどの機能がこの台座に内包されている。
そして左側のCDドライブがこのハードの目玉だ。1988年の発売当時そもそもCDを利用したゲームメディア自体少なく、動画や録音音源をそのまま使用したゲームのインパクトは非常に高かっただろう。そして何よりその価格もインパクトあったに違いない。
今見てもかっこいいシンプルでありながらドッキング構造を採用しているハードデザイン。PCエンジンという名前に名前負けしていないコンセプトや、同時期に他のCDメディアを使用したハードだったメガCDと比べても、路線で言えば任天堂ハードより演出を強化したニュアンスで、CDのロード時間なども特に不満もない長さに抑えることに成功していた。
そしてなぜ今回このハードの話を書こうかと思ったかというと、私にとってこのハードは非常に非常に思い入れのあるものだからだ。
現在34歳の私にとってこのハードは生まれる前に発売されたハードなのだが、私の父が新しいものが好きな人で、当時の好景気もあり勢い任せで購入していたそうなのだ。そのため生まれたころから家にこのハードがあったため、同年代の子供がゲームボーイのポケモン赤緑でゲームに初めて触れる中、私のゲーム原体験はPCエンジンだったのだ。
しかしながら私には4つ上の兄がおり、当時すでにPCエンジンのコントローラーコネクタはヘタってしまっていて接触が悪くなっていたため、兄の命令でコネクタ部分の接触角度の調整をするためずっと手でコネクタを固定させられていた。つまり兄が遊んでいるところを「指をくわえて」どころか、つらい思いをさせられながら見守るのみだったのだ。
ただそんな中でも同時期に発売されていたスーパーファミコンやゲームボーイのソフトとは明らかに違った高音質のBGM、アニメーション演出や画面の美しさ、明瞭に聞こえるボイス演出など、見ているだけでも楽しかったという感覚が今でも残っている。しかしその後スーパーファミコンやプレイステーションが我が家にやってきて、PCEは日の目を見なくなっていく・・・・。
というわけで直接遊んだ記憶は薄かったものの、幼少期の記憶に刷り込まれ、鮮烈に刻まれていたPCエンジンのソフトだったが、十数年越しに遊ぶ機会に恵まれたのは幸いだった。
その機会とは何かというと、Wiiではヴァーチャルコンソール、PSストアではゲームアーカイブスと、過去発売されたゲームのDL販売、その両方でなんとPCエンジンのタイトルが発売されていたのだ。
幼少期に「見ていた」だけのソフトを何本か遊ぶことができたのだが、その中でも代表格だったのが「イースⅣ」だった。豪華な声優を起用、OPアニメーションも盛り込まれ、天外魔境で見せたハドソン製のRPG色が色濃く出た本作。
イースシリーズといえば日本ファルコムの看板タイトルだったが、このⅣに関してはSFC版をトンキンハウスに、PCエンジン版をハドソンにそれぞれを原作シナリオや原曲を用意したうえで開発委託したようで、しかもそれぞれのソフトでシナリオの解釈が違ってしまったため、同じナンバリングなのにストーリーどころかサブタイトルまで違うソフトが2つ生まれてしまう変な展開になってしまった。一応正史として扱われるのはSFC版のほうだったのだが、その後2004年にPS2リメイクをタイトーが担当、さらに8年後の2012年にファルコム自らがリメイクしたオリジナルのイースⅣに相当する作品が発売され、ようやくこのややこしい事態に終止符が打たれた。
とまあとにかくややこしい作品なのだが、イースⅣ厄介オタクである私にとってはイースⅣとはPCE版イースⅣのことであり、PCエンジン後期を感じさせる完成度の高さと、非常にクオリティの高い楽曲の数々が私の心を掴んで離さない。ちなみに私がファルコム製のオリジナルⅣをいまいち気に入らない理由は、私が全ゲーム、いや全世界の楽曲の中で最も愛している「青銅の街区」という楽曲をオリジナル版に採用しなかったことである。
随所に旧Ⅳ楽曲のリアレンジ楽曲が使用されていたのだが、PCE版の米光亮氏編曲の楽曲を愛する私としてはしっくりこない気持ちを持ちながら、本来はこのテイストの楽曲を作りたかったのだろうというのを感じつつプレイしていたのだが、ゲームが進めば進むほど「青銅の街区」のマップが無さそうな雰囲気を感じ続け、ついぞこの曲を聴くことができずに終わってしまった。この曲一本で恨みをつらつら書けるほどにゆがんだ愛をPCエンジン版イースⅣに捧げてしまっている私なのだが、それだけ幼少期に刷り込まれた記憶は根強く残っていたのだった。
もう一つ印象的な作品があった、その作品は「ラストハルマゲドン」という。こちらのソフトはPC-8801版をオリジナルに家庭用のゲームハードではFC版とPCエンジン版の2つ移植がなされている。原作の雰囲気を残しながら遊びやすさ重視で移植とはいうものの大幅な変更点が加えられた本作。
何より世界観が怖い。舞台は人類滅亡後の地球で、地下の魔界からモンスターたちが地上を支配しようと地上に踏み出したところ、宇宙人から攻撃を受けかなりグロい殺され方をする。まず幼少期の自分にとってはここがすでにトラウマポイントの一つ。
このゲームは宇宙人対モンスターという珍しい構図で話が進むRPGで、何故人類は滅びたのかをモンスターとして探りながら宇宙人と戦っていく世紀末×ファンタジー×SFという異色のRPGだった。シナリオの秀逸さはもちろんなのだが、このゲームもBGMが非常にかっこいい。「超兄貴」などでも有名な葉山宏治氏のアップテンポな楽曲がゲームを盛り立ててくれる。
非常に良質なRPGだったのだが、残念ながらこのソフトは販売元の倒産があり、版権が不明となり、アーカイブスなどで遊ぶことができなくなっている。私は何とか家に残っていたソフトで遊ぶことができたが、何とかこのタイトルを救うことはできないのだろうか。
味方側のモンスターが合体を重ねてどんどん怖く気持ち悪い姿に変身していく様子、その割に妙にメッセージ性のあるストーリー展開、ハイテンションな葉山サウンド、どれをとっても幼少期の自分には強烈なインパクトを残した作品だった。
このイースⅣとラストハルマゲドンに加え、日本テレネットのレッドアラートなどは自分のゲーム原体験として非常に深く刻まれている。おそらくこの先どんなすごいゲームを遊ぼうとも、どこかでPCエンジン愛を持ち続けていくのだろう。