ダンサー・イン・ザ・ダーク
「今飛び降りたら、誰も気がつかないのかな」
マンションの部屋の窓から、夜の街を観てつぶやいた。
夜中の2時頃だったと思う。
シーンと静まり返っていて、明かりが灯っている家もなく、マンションの前の街灯だけが白く冷たく光っていた。
一つの命が消えても、誰も気づかないんだなぁ。世界は何も変わらないんだなぁ。とか、
この世にはもう誰もいないのかもしれない。
私だけ残してみんなどこかへ行ってしまったんだ。とか、
暗いことばかり考えてしまう、静かで寂しい夜だった。
何かあって落ち込んでいたのか、単に眠れない夜だったのか、思い出せないけれど。
眠れない。眠れない。眠れない。
あまりにも眠れず、映画を観ることにした。
当時は動画配信サービスなどなく、ちょうどテレビでやっていたのか、レンタルしてあったのか覚えていないが、
何の予備知識もなく見始めたのは、
ダンサー・イン・ザ・ダーク
衝撃だった。
眠れない夜に観る映画では無かった。
いや、眠れない夜には絶対に観てはいけない映画だった。
暗い気分はさらに増し、人生で味わったことがないくらい、どんよりと落ち込んだ。
あんな気分は経験したことがない。今も。
身体まで重くなったような、深い深い所へ沈んでいくような。
「絶望」と言う言葉が頭に浮かんでいた。
もう明け方なのに。
最近、ダンサー・イン・ザ・ダーク4Kデジタルリマスター版が公開されるというニュースを見かけた。
観に行ってみようか。
あの明け方の何とも言えない嫌な気分は忘れられなのに、実は内容もラストも覚えていない。
ほんとうに私を絶望のどん底に落とすような映画だったのかな。
確かめてみたいけれど、私の記憶違いでなかったら、映画館から家まで帰って来られる自信がない。イスから立ち上がることも出来ないかもしれない。
あの気分をもう一度味わう勇気が....
誰か確かめて来てくれませんか?
眠れない夜に。