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Hip-spine syndrome~骨盤帯から脊柱アライメントを考える~


【はじめに】

こんにちは、Leeです。

これまで骨盤帯を中心にマルアライメントや運動療法のお話をしてきました。

今回から骨盤帯が腰椎より上位の脊柱アライメントに与える影響についてお伝えしていきます。

今回のテーマは「Hip-Spine Syndrome」です。

「Hip-spine syndrome」
1983年にOffierskiらによって報告された症候群概念
①脊椎疾患由来の疼痛が股関節に影響を及ぼす"spine to hip"
②股関節疾患由来の疼痛が脊椎に影響を及ぼす"hip to spine"
の2種類がある
(参考文献…宮城正行:股関節痛と腰痛の関連と病態.関節外科32(7)2018)


今回は②の” hip to spine"についてお話していきます。

運動器を見るセラピストは股関節疾患のクライアントを診る機会も多いのではないでしょうか。

痛みの部位によっては股関節由来の症状脊椎由来の症状か判別が難しい場合があります。

人工股関節全置換術(以下、THA)を行ったクライアントに、術前はみられなかった腰痛が生じることは臨床でも遭遇します。

脊柱アライメントは矢状面・前額面でみますが、
脊柱の動きは3次元で理解する必要があります。

この記事で骨盤帯と腰椎の運動の関係について理解していきましょう。

この記事はこんな人におすすめです。

◆Hip-spine Syndromeについて知りたい
◆骨盤帯と腰椎の運動の関係について知りたい


1. Hip-spine Syndromeの概念


Offierskiらによって提唱された股関節疾患と脊椎疾患が同時に関与する疾患概念
以下の4つに分類されます。

① Simple hip-spine syndrome
…股関節、脊椎のいずれか一方が病状の主原因である場合
② complex hip-spine syndrome
…股関節、脊椎の両方に病変がみられ、主原因が不明瞭な場合
③ secondary hip-spine syndrome
…股関節、脊椎のいずれかに主病変があり、その病変が他方に影響を与える場合
④ misdiagnosed hip-spine syndrome
…股関節、脊椎の主原因を誤診し、誤った治療を行った場合

(参考文献:宍戸孝明:Hip-spine syndromeの概念と診断.関節外科37(2)132-139)

この中で脊椎バランスの評価が病態把握に有用とされるのが③のsecondary hip-spine syndromeです。

脊柱アライメントについては
前回の岡さんの記事で分かりやすく解説されていますのでご覧ください。


2.脚長差が脊椎前額面(冠状面)アライメントに与える影響

脊椎~骨盤までの前額面(冠状面)のアライメントとして
体幹の重心線(C7 plumb line)仙骨の中心(CSVL:central sacral vertical line)が一致するのが理想的です。

そのため、股関節OAなどで下肢長の差がある場合には、脊椎の側弯によって代償しようとします。(機能的側弯ともいいます)

しかし、脊柱に可撓性が乏しい場合には体幹の重心線は短縮した方に移動し、
脊椎だけなく股関節にも影響を与えることになります。

脚長差

股関節疾患を有する患者の脊柱アライメントについて、立位全脊椎X線像を用いた調査では
C7-CSVLは脚長差と低い正の相関(γ=0.35)を認めた
(参考文献…宮城正行:股関節痛と腰痛の関連と病態.関節外科32(7)2018)


3.どのくらいの脚長差で側弯は生じるか

私たちは解剖学の教科書で
前額面がまっすぐな図をみて勉強してきたので、
脊柱は前額面ではまっすぐと思い込んでいます。

しかし、前回の岡さんの記事にもあるように、
日本人の立位脊柱アライメントとその基準値で
胸腰椎の側弯角度が報告されています。

◆日本人の脊柱アライメントの基準値(20~69歳)
胸椎側弯角 11°以下
腰椎側弯角 12°以下
(参考文献:金村徳相 他:関節外科28(5))

つまり、腰椎12°までは健常日本人の側弯としては正常範囲内ということです。

同じ文献で脚長差の基準値についても
報告されています。

◆日本人の脚長差の基準値(20歳~69歳)
 脚長差 1.3㎝以下


では、どのくらいの脚長差で腰椎側弯が生じるのでしょうか。


初回THAを行った片側OA股437例(男性56例,女性381例,平均年齢62歳)の脚長差と腰椎側弯の関係では30㎜以上の脚長差で患側に凸の側弯が発生しやすい
(参考文献:森本忠司 他:変形性股関節症と腰椎側弯の関係:Hip-Spine Syndrome,整形外科と災害外科 59:(3)586-589.2010)



脚長差は30㎜以上あると代償性の側弯が生じるということです。

この調査では全体の40%に腰椎側弯がみられ、
そのうち患側凸が26%、健側凸も14%みられました。

股関節疾患の場合、
脚長差による側弯だけではなく、
疼痛回避姿勢によるアライメントの変化についても考慮する必要がありますね。


4.股関節疾患が矢状面アライメントに与える影響


矢状面アライメントでは
体幹の重心線(C7 plumb line)
股関節回転中心の後方を通るのが理想的と考えられています。

脊柱が十分に可撓性を持つ場合、
骨盤の前後傾に合わせて脊椎が代償します。
(下の図①②)

脊椎が可撓性を持たない場合、
骨盤の前後傾に対して代償できずに
体幹の重心線が前方に移動します。
(下の図③④)

矢状面バランス

寛骨臼形成不全による変形性股関節症の場合、
寛骨臼の前方被覆は小さいので、
応力を分散させるためや疼痛の防御性反応のために骨盤が前傾します。

(※注 全ての股関節疾患が骨盤前傾増強を図るわけではありません)

骨盤前傾

変形による股関節屈曲拘縮も骨盤前傾に作用し、
合わせて腰椎前弯の増強で代償します。
(十分な可撓性がある場合では胸椎は後弯増強します)

腰椎前弯増強により
椎間関節の亜脱臼や椎間孔の狭小などが生じ、
腰痛や神経根障害、間欠性破行などの症状がみられます。


5.Hip-Spine Syndromeを3次元で捉える

これまでは前額面・矢状面それぞれでの
脊柱アライメントの代償についてお話してきました。

ここからは3次元で骨盤帯の腰椎の関係について説明していきます。

ここまでが無料で読める内容となります。
以下では「Hip-spine syndromeにおける骨盤帯と腰椎の動きの関係」について詳しく解説していきます。
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骨盤帯と腰椎の動きの関係(正常編)

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