流体騒音の話1(概要)


流体騒音

流体騒音とは流体の運動、特に渦によって生じた圧力変動が音波として周囲に伝播して生じる騒音のことです。

その中でも風の音や飛行機の騒音などのように空気力学的な機構で発生する音を空力音と呼びます。

例えば、強風の中で電線が唸る音やジェット騒音があります。他にも渦音やエオルス音(渦放出音)、エッジ音(干渉音)などが知られています。

流体騒音の数値計算には、流体の圧縮性を考慮した解析から音の挙動を求める「直接解法」と、流れと音を別々に解く「分離解法」があります。



エオルス音

円柱や角柱などに流れが当たったときに発生する音です。物体の後方に放出される周期的な渦によって引き起こされます。強風で電線が唸る音や細い棒を振ると鳴る音がエオルス音です。

このとき電線と空気の相対運動によって生じる音の振動数fは、電線の張力や長さには関係せず直径Dと相対速度 Uだけに関係します。時間スケール D/U を使ってf を無次元化した数S=f・D/Uは現在ではストローハル数として知られています。


渦音

渦の非定常運動 によって放射される音波を渦音と言います。渦により流体内部に圧力変動が生じこれが波動として遠方まで伝わることで音として聞こえます。

渦の発生は固体壁などの存在が原因です。また固体壁が存在せず速度の異なる二つの流体の境界面でも渦が生じて音が発生します。代表例としてカルマン渦による音があります。


エッジ音

狭い隙間、または小さい穴から吹出した気流が鋭い刃の形をした障害物に当るときに出る音です。 気流は他からエネルギーが供給されないにも関わらず、いわば自給自足によってある周波数で振動し続け自励発振音を生じます。これがエッジ音です。 例としてオルガンのフルー管の音があります。


エッジ音の周波数fは、気流が吹き出る隙間と障害物までの距離h、気流噴出速度 Uと次のような関係があります。S=fh/U




音源の種類

どのような音の遠方場を生じるかによって、音源が単極的、多重極的と分類されます。単極的とは、音圧分布に方向性がなく等方的に放射される音波です。

前述したエオルス音は二重極的であるのに対し、乱流ジェットの放射する音は四重極的です。



参考文献

神部勉、空力音、日本音響学会誌45巻1号 (1989)


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