プラズマの話


プラズマとは

プラズマとは物質の第4の状態です。 物質には固体・液体・気体の三態があり、温度が上昇すると固体から液体、液体から気体に変化しま す。そこからさらに温度が上昇すると気体の分子は解離して原子となり、さらに原子核のまわりを回っていた電子が原子から離れ、正イオンと電子に分かれます。この現象を電離と呼びます。そして電離によって生じた荷電粒子を含む気体をプラズマと呼びます。


自然界のプラズマ

自然界には、太陽や太陽風、地球を取り巻く電離層、オーロラ、真夏の積乱雲から走る稲妻等、様々な形のプラズマが存在します。宇宙にある数々の恒星に加えて、星と星の間の空間にも希薄なプラズマが広がっており、宇宙を構成する物質の99%以上がプラズマと言われています。

■炎
火は燃料の酸化によって高温となり、燃料の一部が電離してプラズマ状態になります。ろうそくの炎が高電圧をかけた電極に引き寄せられるといった簡単な実験を通して、プラズマの存在を身近なものとして理解できます。

■雷
雷は帯電した雲と大地の間で生じる火花放電現象です。火花放電では、高電圧により加速された電子によって大気が電離しプラズマ状態となります。

■電離層
電離層とは、太陽からの紫外線により、地上から100km付近の大気が電離しプラズマ状態となったものです。

■オーロラ
オーロラは太陽風から供給された電子線が地磁気に沿って降下し、電子線によって励起された大気中の酸素や窒素が発光する現象です。

■太陽
太陽はプラズマ状態です。2006年9月に打ち上げられた太陽観測衛星「ひので」によって、太陽を取り巻くプラズマ化した大気の中で起こっている活発な現象を、より詳細に観測・研究できるようになりました。

出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%BA%E3%83%9E#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Traceimage.jpg

■宇宙
宇宙空間においては全宇宙の質量の99%以上がプラズマであり、プラズマは最もありふれた物質の状態です。地球と太陽の近傍の宇宙の物理現象を扱う「太陽地球系物理学」、宇宙スケールの現象をプラズマと関連付けて探究する「プラズマ宇宙論」、天体における物理現象を扱う「天体物理学」などの研究領域があります。


人工的なプラズマ

一方、人間の手によって生み出されたプラズマは、放電現象として蛍光灯をはじめとする照明器具や、溶接、エッチング、薄膜形成等の加工技術に広く利用されています。さらには核融合反応によるエネルギー生成の実現を目指して、1億度以上の超高温プラズマを保持するための研究が先進各国で進められています。

■蛍光灯、ネオンサイン
蛍光灯、ネオンサインはグロー放電を利用した製品です。グロー放電とは、低圧の気体中で持続的に放電される現象です。

■プラズマプロセス
プラズマプロセスとは、薄膜や材料加工、コーティング分野で広く利用されているプラズマ技術の総称です。例えばイオンプレーティング法は、蒸発粒子をプラズマ内に通過させることで、プラスの電荷を帯びさせ、基板にマイナスの電荷を印加して蒸発粒子を引き付けて堆積させ膜を作成する技術です。スパッタリング法は、プラズマのスパッタリング現象(粒子飛び出し現象)を用いた薄膜生成技術で、プラズマ中のイオンを固体表面に衝突させて固体原子を放出し、放出された固体原子を積層することで薄膜を形成します。

■プラズマ加速
プラズマ加速では電子ビームをプラズマに入射し、プラズマ中の急峻な構造によって生成される電場を用いて荷電粒子を加速する方法です。放射線療法やガン治療でニーズがあります。

■核融合発電
高温・高密度の燃料プラズマによる熱核融合反応を利用した発電形式です。核融合反応とは、2つの原子核どうしを衝突させて融合させる現象です。 原子核は両方とも正の電荷を持っているため、早いスピードでぶつけないと正の電荷どうしの反発力で衝突しません。 衝突させるために必要なスピードは毎秒1千km以上です。

■プラズマディスプレイ
プラズマディスプレイの原理は、ガラス板の間に封入した希ガスに高い電圧をかけてプラズマ放電を起こし、周辺に塗布された蛍光体を発光させるというものです。特長として、自発光型のディスプレイで視野角が広いこと、簡単な構造のため大型化が容易なこと、応答速度が速く、色純度がよいという点があります。対して欠点は、明るい部屋でのコントラストが低く画面が暗い、ガラスパネルの光反射が発生する、焼き付きが起きる可能性があるなどです。

■その他の応用例
その他の工学的な応用例に、コロナ放電、テスラコイル、アーク灯、アーク溶接、プラズマ切断、反応性イオンエッチング、プラズマCVD、誘導結合プラズマ、イオンエンジン、ロケットの排気、宇宙船の大気圏再突入などがあります。



プラズマの因子

プラズマの種類を区別する因子を紹介します。

■電離度
電解質を溶媒に溶かしたときの電離の程度を表す数値です。電離度が低く、電気的に中性な分子が大部分を占めるプラズマを弱電離プラズマと呼びます。一方、電離度が1となり(=強酸・強塩基)、イオンと電子だけで構成されるプラズマを完全電離プラズマと呼びます。

■圧力や粒子密度
大気圧下で発生させたプラズマを大気圧プラズマ、真空中で発生させたプラズマを真空プラズマ、もしくは低圧プラズマと呼びます。

■大域的な磁場の有無
大域的な磁場がある系を磁化プラズマ、大域的な磁場がない系を非磁化プラズマと呼びます。磁化プラズマでは、プラズマ粒子は磁力線の周りをサイクロトロン運動し、磁力線に垂直な方向の移動は制限されます。このため、磁力線に対して平行方向の温度と、垂直方向の温度は異なることがあるほか、誘電率はテンソルとなります。

■近似の程度
プラズマを荷電粒子からなる多体系と捉える場合をプラズマの粒子モデルと呼びます。プラズマ粒子のクーロン衝突やサイクロトロン運動が粒子モデルによる記述です。また、プラズマ粒子の速度を分布関数によって近似する場合を運動論的モデルと呼びます。さらに、プラズマの速度分布関数がマクスウェル分布であると仮定できる場合を流体モデルと呼びます。最後に、イオン流体と電子流体を結合して一体の流体として扱う場合を磁気流体力学 (Magnetohydrodynamics, MHD) モデルと呼びます。

■電気的中性の有無
等量の正電荷と負電荷から構成され電気的に中性なプラズマを中性プラズマ、正または負どちらか一方のみの荷電粒子から構成されたプラズマを非中性プラズマと呼びます。

■熱エネルギーとクーロンエネルギーの比
粒子間のクーロンエネルギーに比べて熱エネルギーの大きいプラズマを弱結合プラズマ、そうでない場合を強結合プラズマと呼びます。強結合プラズマは、プラズマが自由に動くことができない状態であり液体状態に相当します。宇宙空間では白色矮星の内部などに存在し、プラズマ密度は固体密度を大きく越えます。

■量子化の有無
プラズマ振動を量子化したものをプラズモンと呼びます。


プラズマの物理現象

■プラズマ振動
プラズマ振動は、プラズマ中に生ずる電荷密度の波動です。電気的中性を保とうとする傾向をもつために生まれる波動です。プラズマは正の荷電をもつイオンと負の荷電をもつ電子との混合物であり、全体として電気的中性が保たれています。その際、ある場所の電子集団が局所的に動くと電気的中性が破れ電荷密度を生じ、電子を引き戻す方向に電場を生じます。その電場により電子群が動いて、電気的中性を取り戻しますが、電子には慣性があるため、中性を取り戻した時点では止まらず逆の方向に行き過ぎます。そこでまた中性が破れて電場が生じ、また電子群が引き戻される。このように電子群の往復運動が起こり、巨視的に電荷密度の波動となります。

■デバイ遮蔽
通常、空間中に電荷がある場合は、クーロンの法則に従い電場ができます。しかしプラズマ中では、この電荷の周りに逆符号の電荷を持つ荷電粒子がクーロン力を受けて集合するため、実効的に電場が遮蔽されます。これをデバイ遮蔽と呼びます。そしてその遮蔽が有効に働く距離をデバイの長さと言い、プラズマの性質を記述する最重要パラメータの一つです。

■サイクロトロン運動
サイクロトロン運動は、磁化プラズマにおいてプラズマを構成している荷電粒子がローレンツ力を受けて行う旋回運動です。

■ドリフト
ドリフトとは、磁化プラズマにおいてプラズマ粒子のサイクロトロン運動の回転中心が電磁場、温度、密度の分布によって磁力線と垂直な方向に移動することです。

■不安定性
プラズマは、温度、密度が空間的に一様であり、速度分布がマクスウェル分布であるときに安定です。これ以外の場合は、何らかの不安定性が励起されて安定な状態に戻ろうとします。プラズマの不安定性は巨視的不安定性と微視的不安定し大別されます。

■巨視的不安定性
巨視的不安定性は流MHDモデル(magneto-hydro-dynamics:磁気流体力学)によって扱うことのできる不安定性です。Kruskal-Schwarzschid不安定性、もしくはフルート (flute) 不安定性はプラズマと真空の界面が波打つように成長する不安定性です。流体力学におけるレイリーテイラー不安定性に相当します。

■微視的不安定性
微視的不安定性はプラズマ粒子の速度分布が重要となる不安定性です。2流体不安定性は、静止したプラズマに高速な荷電粒子ビームが入射するとき、僅かな電場の乱れが、荷電粒子ビームの粗密を成長させる不安定性です。速度空間不安定性はプラズマ粒子の速度分布が方向によって大きく異なるときや、荷電粒子ビームの入射などにより速度関数が複数のピークを持つ場合に起きる不安定性です。

■発光
プラズマ中の電子が励起状態から緩和するときに、エネルギー準位の差に対応した特定波長の光を放出します。発光スペクトルは、温度、密度、イオン種によって変化し、これを利用してプラズマの状態を測定することができます。

■ピンチ効果
柱状になったプラズマの軸方向に電流を流すと、作り出された磁場と電流自身の相互作用ローレンツ力により、プラズマが急速に締め付けられて、中心部に細い紐状になって集中する現象です。これによってプラズマの閉じ込めが可能になり、同時にジュール熱の発生と圧縮による高温を生じます。原子核融合の初期段階の研究にとって重要です。


参考文献
https://ja.wikipedia.org/wiki/プラズマ


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