自分の分野の素晴らしい先駆者たちくらい、完璧にしたいよね
社会言語学、言語人類学の偉大なる著名人をリストアップ。実際には、現段階で文献などで見聞きしたことがあって覚えてる範囲の学者様だけ。最近、自分物覚えがあまりよろしくないことに気付き、悲しい。
●William Labov
・study of /r/ sound variables in NYC
・African American Vernacular English (AAVE)
・referential indeterminacy
・study of chain shifts
・Golden Age Principle (golden age theory)
社会言語学で有名な学者といえば、私の中でポンと出てくるのはwilliam labov。
この方は、linguistic variationの、いや、あれはもうstylistic variationなのかな、ニューヨークで、social statusによってrの発音が違うよねっていうのをデパートで実験してやったやつ。めちゃめちゃいいよなぁ。Labovといえばこの研究な気がする。他は調べました。➡︎この人が有名になったのはマーザス・ヴィにヤード島で二重母音[ai]が島アイデンティティを強く持つ人には[əi]で発音されるっていう音の差異についての研究を修士論文でやったこと、らしい。才能が早くから評価されるタイプですね。AAVEについては、これは個人の見解ですけど、その頃からAAVEは「英語」に属するがうまく習得されてないものみたいな立ち位置だったんだろうね、それをLabovはAAVEはそうではなくて、a variety of Englsih(英語の一変種)であって、独自の文法があるものという位置づけを示した。私が前に言語人類学でAAVEやったときはこの立ち位置の文献を読んだ気がする。独自のルールというのがまた、I be like とかshe do be とか(habutual be)で混乱したの覚えてるなあ。Referential Interdeterminacyは、wikiによれば、人があるものをAと呼んだりBと呼んだりするその場合のこと。Labovがやったのは、コップみたいな飲み物飲む器?のイラストを色々見せてどれを人はcupsと言ってどれならmugsになるのか、というやつ。これ、なんかどっかの謎解きかなんかで、日本語ではコップとマグ、グラスはどんな違いがあるでしょう?みたいなやつで見たことあるのに近い。chain shiftsは、ある音の変化が別の音の変化とリンクされて(あるいは、それを引き起こしてい)る音変化のセット。変化が完了すると、完了前に各音素の前の音素の音と同様のものになるという、いわゆる大母音推移が典型例のあれってことだねぇ。どうやらconuterfeeding orderのあたりとも絡みがあるんだけれども、どうもfeeding, bleeding order苦手でしばらく色々リンクを飛んでみたがわからなかったので、今回は諦める。最後、ちらっと調べただけでもうgolden age theoryが好きすぎる。なんか、音とか文法における変化がコミュニティであらわになってくると、全員がそれに対してネガティブな反応を示すっていうやつ。過去のある時をgolden age(発音も文法も何もかもが完璧で正確だったと人が捉える時期)として、どんな新たな形式もそこからの欠落的なものとみなす。いやはや、若者言葉がどんな時も否定的に受け取られることをまさに物語っているような理論である。
●Peter Trudgill
・study on rhoticity
Rhoticityといえば、この名称を発音できなくて苦しんでいた思い出がある。これは、/r/の発音のうち、postvocalic /r/ があるかないかで、あるのをrhotic, ないのをnon-rhotic varietyとしたよ。postvocalic r って何って思ったよねごめん、母音後のrの音のことらしい。よくアメリカ英語とイギリス英語の例でcarが持ち出されるけど、まさに適例。アメリカ英語はここでrを発音するけど、イギリス英語やオーストラリア英語などではrが発音されずにそのまま母音の音を引き継いだみたいになる。と言っても、イギリスの中でも地域によってはrhoticなので100%non-rhoticとしてはダメです。はい。
●Penelope Eckert
・valley girl-speak
・community of practice
Eckertも名前を覚えてる先人。何度か読んだことあるなって思ったら、この2点について文献を読んだことがあるか、それを引用してる文献を読んだことがあった。
valley girl-speakはかなり面白いと個人的には思うんですが、カリフォルニアにおける社会方言に含まれる言語変種で、vocal fryというしゃがれた声?とか、uptalkという上昇調の話し方(疑問文でなくても文末に⤴︎こういう上がりがみられる)、あとは頻繁に使われる語彙(like(もはやdiscourse marker: 自然会話においてよくみられる、直接内容と関係ないが会話を円滑にするなどの役割を持つ表現), totally, you knowなど)が特徴。若者言葉とか、特定のコミュニティ感あるという点ではギャルに類似してるように捉える意見もあるみたい。確かにそうかもしれない。社会的には、このvally girl-speakを聞くと教養がないとか、やる気がないとか否定的な印象を持たれる。でも、社会的に否定的にみられてもそういう話し方をする人がいるっていうのは、きっと同胞意識とかも絡んでるんだろうなと私は思うけどな。ちょっと時間がないのでそこは今回は調べられないっ。community of practiceは多分mary bucholtzのnerd communityの調査で採用されてたやつ。提唱自体は彼女ではないみたい。CoPは、"a community of practice is a group of people who, through interaction and shared context, define a set of practices based upon language style, values, belief systems, dynamics of power, and performance (wikipedia, n.d.)"とのこと。同じ学部学科のいつものメンツとか、定期的に一緒に活動をするサークルメンバーとか。"The community of practice is defined by the context of the environment and social dynamics which include age, gender, sex, sexuality, and social class of the participants. One's identity is thus shaped by one's membership and participation in a variety of communities of practice (wikipedia, n.d.)"にあるように、このアイデンティティとの部分がbucholtzの調査でも確かフォーカスされててそれが印象に残っている。まぁでも、speech communityとの違いがうまくわからなくて苦戦した覚えがある。
●Mary Bucholtz
・positive and negative identity practice
さっきのEckertのところで話したBucholtzの研究では、nerd girlsの談話を分析してるんですが、アイデンティティ構築に当たってどんな言語行動、実践がされてるかなというのを、この二つのコンセプトで説明してくれてる。positive identity practiceというのは、自分がそうありたいと思うアイデンティティを積極的に構築しようとする実践で、negative identity practiceは逆に自分がなりたくないアイデンティティに対して距離を取るような実践のこと。
●Kira Hall
・Hijras
・tactics of intersubjectivity (with Bucholtz)
Hijraも初めて扱ったのがアルバータで言語人類学とった時。というか、ほぼ全ての先人との出会い(文献上)はこのコースで毎週それなりのリーディングアサインメントがあったおかげである。この授業が正直一番実りあった。それはさておき、hijraというのはざっくり言うと男性でも女性でもないとするthird sexとカテゴライズされる、実質おかま的な人たち(ほとんどは)のこと。言語学的には、ヒンドゥー語は名詞や形容詞、前置詞などで女性性男性性を標示するという文法を持つので、このヒジュラたちがどう自分をadressして同じhijrasに対してどうジェンダーを紐づけるのかというところが研究されたりしている。Tactics of intersubjectivetyはどうやら日本語では「間主観性の戦略」あたりに該当するみたい。旅する応用言語学さんにお世話になりながら。➡︎アイデンティティには5つの原則があり、emergence(その場面において表出する)、positionality(その場面での役割を含むアイデンティティが表出する)、indexicality(指標性によって表出される)、relationality(他のものとの関係性で存在する)、partialness(自分の意思が100%ではないという点で制限的影響を受ける)がそれとされる。このうちのrelationalityに含まれるのが今回のtactics of intersubjectivityで、話者が場面場面において相手との間でどのような戦略的アイデンティティの構築を行うかについて、3つの戦略が挙げられている。Adequation vs Distinction(他者と同じアイデンティティあるいは異なるアイデンティティであるかのように振る舞う)、Authentication vs Denaturalization(本物、真であるというか、偽物というか)、Authorization or Illegitimation(権力を使って正当化させるか非正当化するか)だそうです。これは、自分で実際に読みたいなー。
●Allan Bell
・audience design
大好きなオーディエンスデザイン。去年couplandのstyle in sociolinguisticsを読んで初めて知った理論だけど、まさに自分の好きな分野って感じ。これはスタイル(社会的意味と結びついた言語変種)シフト(style-shifting)にまつわる、話者は聞き手の存在によって話し方(スタイル)を調整するよっていうモデル。聞き手が実際の聞き手か、それとも話が聞こえているであろうこちらはaddressしていない人かとかでその影響もまた違うわけですが、その存在によって自分を相手に合わせにいくとか、別だというのを強調したりとか、そういう戦略的なところが楽しいよねぇ。ちなみにそのオーディエンスの分類には3つの基準;known(その文脈において聞き手と認識されているか)、ratified(その文脈においてその聞き手がいるということを話者が認めているか)、addressed(話してが話しかけている人か)があって、四つのタイプに分けられる:Addressee(聞き手)、Auditor(直接話しかけられてはいない傍聴人)、overhearer(存在は分かっているけど話しかけてないし認めてないよっていう偶然聞く人)、Eavesdropper(話し手の認識の範囲外の盗み聞く人)。
●Howard Giles
・Communication Accommodation Theory
●Erving Goffman
・face
人はそれぞれface(面子)を持っていて、他者と互いにそれを尊重しながら(face-work)生活しているという考えに基づく。faceとは個人が持つ守られたい社会的価値みたいなもので、相手と近づきたいという欲求であるpositive faceと相手と距離を取りたいという欲求であるnegative faceに分類できる。
●Levinson
・politeness theory (with Brown)
人の言語活動では、常に相手のフェイスを脅かす行為(face threatening acts: FTAs) に溢れており、例えば相手に何かを頼むときや誘いを申し出るときなんかや、相手の意見に反対するときだったりでは、相手の「〜されたい」欲求や「〜されたくない」欲求を侵害してしまう。これを避ける、あるいはできるだけその脅威を最小限にする戦略がポライトネスである。相手のpositive faceを満たすためならpositive politeness strategy, negative faceを満たすものならnegative politeness strategyが取られる。その分類は以下のようになっている。
●Dell Hymes
・SPEAKING
ハイムズによるspeechの構成素8要素。それぞれスピーキングの頭文字を取っちゃうのは、偶然なのか、意図なのか。。アルバータの時のメモから。
S: scene (where&when)=場面
P: participants (speaker, audience)=参加者
E: ends (what is each participant aiming to do?)=目的
A: act sequence (flow of events, transitions)=流れ
K: key (tone)=言語表現(楽しそう?悲しそう?怒り?)
I: instrumentalities (channels, dialects, registers)=言語の種類
N: norms (what is expected of whom?)=社会ごと異なる意味解釈の規範
G: genre (friendly conversation, storytelling, lecture..)=言語活動の種類
●George Lakoff
・conceptual metaphor (with Johnson)
いつも何気なく「気分が落ち込んでいる」とか「気分が高まっている」とかで、実は自然とsad=down, happy=upの概念が反映されているのがわかるだろうか。good=up, bad=downも見られるし、time is moneyも時間がお金と同様に有限でありかけがえのないものであるという概念を抱擁している。こんな感じのこと。"we act according to the way we conceive of things"ですから。