あなたの思い出買いますから(仮) イギリスアンティーク⑤
「えーっと。あなたはここのご主人だった方ですか?つまりあのおばあさんのご亭主?」
「ああ、そうじゃよ。ところでなんでおまえさんはこのバスケットを見つけたのかな?」
「えーっと、この家の片付けを頼まれて、たまたま手にしたのです。
で、あなたが現れた。
失礼ですがおじいさんは、なんでこのバスケットに憑いているんですか?」
「そーか、とうとうこの家も手放すことになったのか。ばあさんはどうなるんじゃ?息子が連れて行くのか?」
「そう聞いてますよ。おばあさん
1人では心配だから息子さんの家で一緒に暮らすそうです。
もう、この家も買い手が決まったらしくてバタバタで片付けないといけないとか聞いてますよ。で、僕の質問には答えてくれないのですか?」
おじいさんはなんだか寂しそうに肩を落として下を向いていた。
何もないものは次々に段ボールや、ゴミ袋に入れてどんどん運び込まれていく。たまたま僕がここ台所の担当だったからこのバスケットも日の目を見ることになってるけど、僕じゃなかったら他のゴミと一緒に捨てられていた。
だから、曰く付きのものはその曰くも確かめないと次の作業に進めない。そうしないとこのバスケットの念というかおじいさんの念が僕に取り憑いてめんどくさいことになる。しかも時間がないからなるべく早くおじいさんから話を聞いてこのバスケットの処理を決めたいのだ。
「ねえ、おじいさん、あなたは何か伝えて欲しいことがあるんじゃないのですか?それは息子さんですか?それともおばあさんですか?話してくれたら僕がちゃんとお伝えしますから教えていただけませんか?」
僕は出来る限り謙ってお願いした。とにかく早く事を進めたかったから、だいたいこのくらいのお年寄りは下手に出ないと頑固でなかなかこっちのペースに乗ってくれないからだ。
おじいさんは顔を上げてジーッと僕を見つめてきた。
さあ、おじいさん話しておくれ。
あなたの思いを包み隠さず話しておくれ!
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