あなたの思い出買いますから(仮)イギリスアンティーク⑧
朝から始めた片付けだったが暑さが増してきて昼近くなってきたのがわかった。相変わらず時折り吹く風に助けられてまだここに居ることができる。
揺さぶられた方向を見ると社長が居た。とても珍しいことでちょっと戸惑ってしまった。
「おい、進んでるか?お前に、多分お前にだろうがお客だ。」
「社長。なんで、、、。僕にお客なんて、誰だろう。」
僕の傍には相変わらずおじさんが居るのだけど社長にはもちろん見えてない。
僕は紅茶缶を持ったまま社長に従って外に出て行った。
二人の姿が見えた。
一人は多分この件の依頼者の息子、そしてその横には、、、車椅子に乗ってる、おばあさん。
ああ!ってことは彩さん⁈
「さっきこちらからどうしても、もう一度家が見たいと連絡があってまだ作業が終わらないうちに慌ててお連れしたんだ。
お母さんがどうしてもということだったらしいぞ。」
僕はこんな偶然はないと思い、これはおじいさんの思いがおばあさんに通じたんだと嬉しくなった。
ほんとうに可愛らしいおばあさん。彩さん。おじいさんが先に逝ってしまってどんなに寂しかったんだろう。あんなに愛されていたんだから、おじいさんは死んでも彩さんの願いを叶えてあげられなかったことを悔やんでるんだから。これは、おばあさんにおじいさんの思いを伝えてあげないと。
僕は一気に意欲が湧いてきた。
僕は二人に近づいて行った。
今はおじいさんは隣には居ない。
外には出ないタイプなのかな?
「こんにちは、おばあさん。彩さん。」
僕はしゃがんで車椅子の彼女に近づいて話しかけた。
「どうして?母の名前を知っているのですか?私はあなた方にそんなことは話してませんよね。」
息子さんはちょっと怒ったような口調で話し始めた。
「まあまあ、ちょっとこちらへ。」そういうと社長は彼を僕達から遠ざけようとしてくれた。
離れた場所で社長が頭を下げておそらく僕のことを話していると思う。多分信じてもらえないだろうが、そこは口の上手い社長のこと、しかも何度か同じようなことがあったから今回もうまい具合にやってくれていると思う。
僕は安心して彩さんと向き合うことが出来る。
さあ!あなた達の思い出引き渡してもらいますよ!
#小説
#骨董品
#レトログッズ
#不思議な物語
#片付け屋
#アンティーク
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?