人生のさいごに何食べたい?
やっぱりお高い日本酒を飲みながら高級寿司かな。
いや、ヴェネツィアで食べたシーフードリゾットもいいな。
うーん、でもお母さんの作るオムライスも捨てがたい。
決めがたい。
お寿司好きは私のアイデンティティと言っても過言ではない。
幼い頃から祖父母は「をちゃんはニコニコおいしそうに食べるから」
と、事あるごとにお寿司を食べさせてくれた。
そんな気持ちもきっとおいしさのスパイスだったように思う。
学生時代はお寿司屋さんでアルバイトしていたこともあって
体育祭のクラスTシャツには「○○(地元名)のすし娘」
というキャッチコピーまでついたものだ。
ヴェネツィアのシーフードリゾットは本当においしかった。
あれはずっと行きたかった水の都の、
細い路地をたくさん曲がった先にある、小さなレストラン。
都市部と違って日本語のメニューもないお店だった。
至って普通の値段だったはずだけれど、
憧れのヴェネツィアにいるという気持ちも相まってか、
人生で食べたイタリアンの中で一番おいしかったように感じた。
お母さんの作ったオムライスはいわゆる家庭の味。
肉じゃがとか、味噌汁とか、和食が言われがちだが、
私はお母さんの作ったオムライスが一番好きだった。
特別なことは何もない、シンプルなオムライス。
それは実家の居心地の良さや、両親の温かみと同じような
普遍的な幸せが包まれていたのだと、
実家を離れてからその優しさに気づいた。
◇
お寿司の件で書いたように、学生時代はお寿司屋さんで働いていた。
その後、ホテルのレストランでサービスマンとして働いた。
そんな私は未熟ながらも、大事にしていることがあった。
「食べる」という行為には、
たくさんの隠し味を加えることができる。
誰と一緒に食べるか、どんな日に食べるか
どんな場所で食べるか、どんなサービスを受けるか、
どんな見た目、香りの料理が出てくるか。
私はファミレスのような「いつもの」接客ではなく、
料理にプラスαの隠し味を加えられる、
「特別な日」を届けられるサービスをしよう。
いい気分で、おいしかったという気持ちで帰ってもらおう。
それが私の接客の太い軸だった。
それは裏を返すと、自分の理想の食事は
たくさんの隠し味が加えられている食事なのだと気づいた。
◇
結局、私は人生さいごの日に、
「何を食べるか」はあまり重要でないようだ。
家族か、友人か、同居人か、恋人か
誰かはわからないけれど、
私にとって大事な人と、温かい食事を。
笑顔で食べることができたなら。
それできっと私は、満足して終えられるのだろう。
◇
くまさんの初企画、 #さいごに何食べたい に参加させていただきました。
他の方の記事も読ませていただきましたが、
これが簡単な質問のようで深い。
読み応えたっぷりなのでぜひ興味のある方はぜひ見てみてください。
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