親愛なるあなたへ
恋の始まりというのは、
切なくて、もどかしくて。
けれどキラキラしています。
でも同時に、終わりへ向かっていて
それが淋しく、悲しいことであることも
私は知っています。
元気にしていますか。
伝えたいことはたくさんあるはずなのに、
どうも緊張して言葉が詰まってしまいます。
初めて出会ったのは春でしたね。
人見知りで口数の少ないあなたが
桜の散る中で煙草を吸う姿を見て、
普段大して吸わない煙草を吸いに桜の下へ行きました。
そこまでして「この人の内側を知りたい」
そう思った時には既に、私は恋に落ちていたのでしょう。
蝉が鳴く頃にはすっかり仲良くなり、
仕事終わりにふたりで電話をしましたね。
疲れと眠気で眼をこする中、
あなたの少し鼻にかかった優しい声が
私の心臓を強く動かしました。
道路に枯葉の絨毯ができる頃、
私はあなたに会いに行きました。
大きな声で「久しぶり!」と告げる私を
満面の笑みと温かい手が迎え入れてくれました。
雪であなたの家が真っ白になる頃には
あなたの好きなものをたくさん知っていました。
悩んで悩んで、クリスマスと誕生日のプレゼントを
あなたの笑顔の為だけに買っていきました。
見返りを求めない、なんて綺麗事だと思っていたのに
あなたといるうちに綺麗事を並べているような
そんな心の内の私がすっかり生まれていました。
きっとあなたも、そんな気持ちだったのだろう
そう信じて止みません。
出会ってくれてありがとう。
私の知らない「私」と、
私の知らない「愛」を、
教えてくれたのはあなたに違いないでしょう。
昨日、あなたとの幸せな夢を見ました。
私は口元を押さえ、泣きながら喜び、
あなたの手を取ろうとしたところで目が覚めました。
目が覚めて、涙が止まりませんでした。
あなたと最後に会ってから
どのくらいの夜を越えてきたでしょうか。
悲しくなるから、数えるのはまたの機会にします。
親愛なるあなたへ。
◇
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