私と紙ヒコーキと。
初めて彼女から紙ヒコーキをもらったのは
たぶん、中学二年生の春。
わたしは新しいクラスに気持ちがうまく馴染まず、
学校に行くのを嫌がっていた。
モヤモヤする気持ちを消化できないまま、
重い重い気持ちで登校すると、
下駄箱に紙ヒコーキが入っていた。
わたしを励ます、優しい言葉をのせて。
それは漫画の真似事だった。
『君と紙ヒコーキと。』
この作品の主人公は、内気な性格で、
何か意思疎通を図るときには
手紙を書いて紙ヒコーキにして送るというキャラ。
その主人公のように彼女は、
わたしへの思いを紙ヒコーキにして送ってくれた。
それから、その作品が大好きだったわたしと、
それを借りて読んだ彼女との間で
紙ヒコーキ文通は日常となった。
それまで彼女と特別に仲が良い訳ではなかった。
共通点といえば小中が同じだったこと、
家が近いから中学では一緒に登下校していたことくらい。
部活もわたしは吹奏楽部で、彼女は運動部だったし、
小学一・二年生の時にクラスが同じだったのを最後に、
その後7年間ずっと違うクラスだった。
そんなわたしと彼女の仲を繋いでくれたものが
紛れもなく、あの紙ヒコーキ。
大量に交わされた紙ヒコーキは、
一通たりとも処分せず全部実家に残っている。
(そう聞くと思いが重い。)
それも高校へ進学し、それぞれの道を歩み始めると
自然と紙ヒコーキを送る習慣もなくなった。
そんな彼女が先日、SNSでこう呟いた。
「せっかく素敵なインクとローラーボールがあるので文通でもしたい」
わたしの中に青春の色がパチパチと光った。
「紙ヒコーキ、しようよ」
わたしはそう、彼女に提案した。
そして今日、彼女へ送る新しい手紙セットを買いに行くことにした。
いまいちグッとくるものが見つからず、
文具コーナーを2軒、3軒と歩くうち
パッと目についた青空の手紙セット。
ふと裏返すと、紙ヒコーキのシールがついている。
もうこれしかない!そう思った。
手紙は選ぶところから楽しみが詰まっている。
そしてこれから、思いをのせて文字を書く、という楽しみも。
わたしは手紙を書くのが好きだ。
しかし実家を出てから、文房具は最小限しか持っていない。
せっかくならわたしも、
彼女のように好きな色で紙ヒコーキを書きたい。
次に帰った時は彼女と、文房具屋さんにでも行こう。
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