あんたも結局アイツとなんにも変わらないんだね
花瓶の花が枯れている
あの時一緒に買った花
もう茶ばんでいた
「ねえ、これかわいいな」
「買って帰ろうか」
2人で歩いた線路沿い、
片手に、カスミソウ。
『永遠の愛』
本当はどうでも良かったの、
口実でしか無かった
握った左手の方が大事だった
歩く歩幅を合わせてくれるところとか
首元のほくろとか
そんなことばかり覚えて眠りについた
それはだんだんと
長いようで短かったように思う
花が散っていくや否や
せめてこの花があるまでは
ずっと一緒に居れると思うようになった
思っていた
ドアを開けるとあるはずの靴がなくて
寝てるはずのあいつはもう居なかった
LINEの通知に「ごめん」とだけ来ていた
もうスタンプもプレゼント出来なくなったらしい
せめて悪口くらい送らせてほしかった
2年半の重さが哀しくも軽くのしかかるようで
あれから水をやれなかった
日々の選択を繰り返す中で
乾いていく目尻
気づけば息も潜めて
しまいには殺してしまったらしい
わたしが。自分の手で。
晴れた日に2人で眺めるだけで良かったのに
それだけで私は永遠だと思っていた
それだけで
いつも、
あたしはいつもそうだ、
何を追いかけてんのよ
今まで傷ついた分、私はもう傷つくことに飽きた
そこに労力も時間も費やしたくない
わたしは何を追いかけてんのよ
一体あんたは何を見ていたの
何か言ってよ
花瓶の花は答えない。
花、だったもの
永遠、と勘違いしていたモノ
あたしが好きだった場所
あんたに奪われた場所
「返してよ」
言葉は無言で散って、灰のように落ちた
まだあいつが指の先で落とした灰の方が
綺麗だった
「あの子、可愛かったな」
聞かないフリをしたのにずっと忘れられない台詞が木霊する
アノコ
そっぽを向いた頬は嫌に血色が良かった
私はうなじのほくろだけを見つめるようにしてた
茶色の髪がつやつやして揺れた先に
知らない花の香りが鼻についた
せめて、
せめて
私に押し付けた思い出だけは返させて欲しかった。
そうやって申し訳程度に残したペットボトルのお茶みたいに
変な優しさが気に食わなかった
4年前のドライブ、好きな曲の途中で顔も見ずにバイバイって言われて、何も言えずに駅に着いたドアを押し開けたのを思い出した
あんたも結局アイツと
なんにも変わらないんだね