私は実は寂しがり屋だった
ずっとひとり遊びが得意だった。お絵描き、音楽、映画、ネットサーフィン、写真、ギター、本、漫画。私には趣味が沢山ある。それが私にとっての遊び相手だった。小学校の頃から昼休みは1人で絵を描いて過ごした。たまに世辞を話しかけてくれる子を尻目にひたすら描き続けていた。別に固定の友達がいなくても良かった。飽きたら図書館、学校探検。それは中学になっても高校になっても大学になってもほとんど変わらなかった。友達はいるけどベタベタした付き合いは得意じゃない。大学2年のある日、仲の良い友人が「誰かと居ないと不安になるんだよね」と呟いた。私にはその時分からなかった。また、ほかの友人に「なんで彼氏が欲しいの?」と尋ねると「うーん、寂しいからかな」と言っていた。私は寂しくなんかならない。趣味という遊び相手がたくさんいるから。「へえ、そうなんだね」どう返したらいいか分からなかった。自分には関係の無い話。部屋に帰るといつもの散らかり様だった。描きかけのイラストとペン、それにイヤホン、ギター、レコード、映画を見る用のスクリーン、読みかけの本たち。上京して好きな物ばかりに囲まれる生活はとても楽しかった。こんなに趣味があって1人で飽きるわけないでしょう。
でもその日は突然やってきた。3年次のある日付き合った彼氏と、ある日突然別れた。一年八ヶ月。それは私にとって1番人と長く共に居た期間だった。別れて帰った部屋にもうあの人が来ることはない。泣いても1人、の日常に戻った。「さむいね」という言葉もどこかへ蒸発して消えていく。跳ね返る壁のなさに不安を覚えた。手は勝手に冬風と冷えていく。缶コーヒーだけが私を温めている。それが寒かった。私はその時になってやっと気づいたのだった。寂しがり屋なのかもしれない。それは月日が経つにつれ確信に変わった。それから毎日誰かと会う予定を入れないと不安になった。私は実は寂しがり屋だった。