私の人生を変えた一冊
ハッシュタグ企画を拝見して、書きたい!と思ったからかなり時間が経ってしまいました…まだやってるかな、この企画…。
さて、このお題で今1冊挙げるならばこの本、渡辺和子氏の「置かれた場所で咲きなさい」です。
改めて語るまでもない大ベストセラーです。修道者であり教育者だった著者の言葉に加え、たくさんの詩人が紡いだ美しくも厳しい言葉が数多く綴られています。
この本を手に取った時、私は憧れだった業界に転職し、しかし大っ嫌いな職種に就いて3年目でした。自分の仕事の意義を感じられず、またそれを捨てて職を変える勇気もなく、とても苦しんでいました。
ふらっと入った本屋さんでタイトルが気になり立ち読みをしたところ、思いがけず涙が滲み、慌ててレジに走りました。すぐ隣にあったカフェの隅っこで顔を隠し、泣きながら読んだのを覚えています。
この本のこんな一説が、私の価値観を変えてくれました。
「どうしても咲けない時があります。雨風が強い時、日照り続きで咲けない日、そんな時には無理に咲かなくてもいい。その代わりに、根を下へ下へと下ろして根を張るのです。次に咲く花が、より大きく、美しいものとなるために」
人の行動には志や目標がなければならない。そして結果を出さなければならない。自分にもそれらを追求したい気持ちはあるのに、色々試してもそれが叶わない。周りには色とりどりの花がたくさん咲いて見えるのに、自分だけが芽も見えない。当時の自分の頭の中はこんな状態で、苦しいばかりでした。
それがこの本に触れて、花や芽は見えなくても根は伸びているかもしれない。あるいは育て方を見直しなさいというサインで、土の中の根っこを確認しなさいという示唆なのかもしれないと考えるきっかけをいただきました。
結局、悩みは消えないまま12年働きました。ただ、大っ嫌いな職種を12年やり抜いたのだから、忍耐という根は多少伸びたかもしれません。
13年ぶりの大きな分岐点に立つ今、その根から何を吸い上げ、どんな芽が出るか、楽しみながら待っています。
さて、ここからは、完全におまけのお話。
この本をきっかけに、父親とお薦め本の交換をするようになったのです。元々父とは絵画や映画、本について語り合う習慣がありましたが、私が勧めた本を父がまともに読んでくれたのはこの本が初めてでした。
それ以来父は、私から渡した本の返却時に必ず何かメモを挟んでくれるようになり、それをきっかけに更に会話が増えました。
素敵な本は何度読み返しても何かの発見をくれる指標になってくれますが、この本と亡父のメモは間違いなく私の道標であり、お守りになってくれています。