《ほどける馬っこ》プロジェクト、半期がおわりました
今年度、宮城県亘理町にて進行中の《ほどける馬っこ》プロジェクト。
これまで6、8、9、10月と開催してきて残り4回、ちょうど折り返しです。作品が亘理のみなさんの手に着々と渡っています。
馬っこというのは、かつて亘理町の年中行事であった七夕馬のこと。馬が人の生活にとても近しい存在だった頃、コモクサや稲藁で各家庭おのおのの馬っこを編んでいたものですが、現代は編み手もいなく、年中行事としても残っていません。
七夕馬は、田んぼの神様の乗り物であり、お盆には祖先の乗り物でありました。作物の豊穣を願ったり先祖を思う「祈り・お守り」の気持ちを作品に乗せ、日常では生活を見守る編まれた馬っこであり、非常時にはほどいたり再度編み直したりして、身を守ったり心を落ち着かせたり何かと役に立つものに変身します。
素材は数ある繊維の中からテトロンを採用。素材自体の強度に加え、耐熱性・耐水性・速乾性に優れ、防火グッズやアウトドア用品に使われています。亘理町の防火旗もテトロン製だとか。
このテトロンの糸は、2016年開催の「茨城県北芸術祭」の作品で使用したものを使っています。
毎回、固定の会場と、町内の児童センターや郷土資料館の組み合わせで開催しており、固定の会場は手作り工房「すずらん」さんにご縁とご協力をいただいています。
こちらでは参加者全員でひとつの馬っこを編むワークショップの開催と「すずらん」を運営されている鈴木裕美さんは防災士・女性消防団員さんでもあるので、鈴木さんによる防災に関する講話という構成。この講話がいつも楽しみなのです。最後に私が作った馬っこをおひとりおひとりに寄贈させていただています。
児童センターや悠里館では、馬の形の骨組みに糸を巻きつけて作っていくスタイルのワークショップ。編むとなると技術的なハードルが高くなってしまうので、これなら誰でも簡単。
私も毎月「すずらん」さんの参加者に寄贈する馬っこを作っています。ほどいた時に一本の長い糸になるように一筆書きのように編みながら理想の形にすることが難しく少しずつ改良を重ねています。理想の形というと、ネット上に残る資料や郷土資料館に実際に展示されている馬っこは自由で美しくカッコ良いものばかり。これ、馬?!という感じなのですがその抽象性がよく、目指したいビジュアル・フォルムです。
季節を感じることのできる亘理を訪れることで、癒されてもいます。懐かしい人や食に再会したり、まだ訪れていない場所に行くことも楽しみながら、残りの回を駆け抜けます。亘理の皆様、よろしくお願いします!
プロジェクトは最終的に冊子としてまとめる予定です。
写真©️Asumi Kuroda