心理学コラム③病気と偏見について
「病気」や「異常」の概念は、単に心身のある生理的機能障害に由来するだけでなく、偏見と結びついた社会的表象(social representation)でもあります。
梅毒は発疹が全身に現れ、認知機能に障害が起こるとして数百年にわたって人々に恐れられました。
また、鼻が崩れるという特徴的な症状があり、梅毒を恐れるあまり、鼻に欠損や異常がある=梅毒の印=性的不道徳さ、不浄の証拠として、ステレオタイプ的に理解されるようになりました。
社会は自分たちにとって不都合なものを嫌い、嫌いなもの同士を結びつけたイメージを共有し合います。
そして人は、社会が嫌っているものを嫌うようになります。
病人は、自分の心身がそのような特徴を持っていることに気づくと、生理的機能障害よりもむしろ、自分が社会的に「無価値だ」ということに悩み苦しみ、自らを受容できないという不幸を体験することになります。
昨今の情勢に照らして、このような偏見が強まらないことを祈るばかりです。
参考文献)
池上知子・遠藤由美(1998)グラフィック社会心理学,サイエンス社.
写真:#八坂神社