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「トイレに行ってもいいですか?」

 と、授業中子供にときおり聞かれます。ある時まで、このことに特に違和感はもっていませんでした。

 「ショーシャンクの空に」という有名な映画がありますよね。初めて見たのは大学生のときだったと思いますが、素敵な映画なのでテレビでやっていると見てしまいます。劇中、長年刑務所で服役した男性が仮釈放になり、スーパーで働くというシーンがあります。そこでこんな会話が上司と交わされます。

 「トイレに行っていいですか。」

 「許可など必要ない。行きたいときに行けばいいんだ。」

 男性は自分がトイレに行くのに許可が必要な場所にいたこと、そしてそれは塀の外の常識とはかけ離れていることに不安を覚えるのです。

 わたしは教師になってからこのシーンを見て愕然とし、自分が刑務官になってしまっていたことにショックを受けました。全く意識せずに人権を侵害していたのです。そして、それを多くの子供に示しているのです。この分だとわたしは他にも山ほど人権侵害しているに違いありません。

 以降、子供がこのようなことを言ってきたときには「そういう時は『トイレに行ってきます。』でいいんだよ。行っていいかどうか先生が決めることじゃない。」と答えています。安全管理上、本当に黙って好き勝手に動かれると困りますから。しかし、こう言うとけっこうな確率で子供は不安な顔をします。その表情がまた、劇中の男性の表情と重なるのです。(不安そうな顔になるのはしっかりとした規律で統率されたクラスの子が多いです。)

 学校は何のためにあるのか、自分に問い続けていきたいですが、あまりにも自分に深く根差してしまっているものは、自分だけでは気付けないようです。映画に感謝。