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揺蕩う彼女の心の箱

こんにちは。9月に入り、朝晩が過ごしやすくなりましたね。日も短くなって夏の終わりを知り、少し寂しさを感じているところです。みなさん心穏やかに過ごせていますでしょうか。


さて、昨日、長濱ねるさんのエッセイ集『たゆたう』を読了しました。発売前から楽しみにしており、発売後、本を買うついでに今月のシフトをもらいに行くような気持ちでバイト先に向かいました。

しかし、残念ながら売り切れていて在庫なし。悲しかったけれど、いつもの要領で発注をして、予約の紙を書いてその日は帰りました。バイト先で本を取り寄せる時、担当者もお客様も自分だから、名前記入欄は「○○(スタッフ)」、担当者も「○○」ってなるのがなんだか面白くて好きなんだよね。

本屋でアルバイトをしている良い事のひとつとして、欲しい本をほぼ確実に自分の手でゲットできることがあげられます。予約の手続きや在庫確保、入荷の有無、入荷予定日、在庫数、取り寄せ可能かは全て自分で確認できます。本屋で店員に聞く勇気がなかったり、忙しい中時間を取らせて申し訳ないと思ってしまう本好きの人にはうってつけのバイトだと思っています。



話が逸れちゃった。出勤日に無事購入し、貪るかのように読みました。積読をすることが多い私ですが、ずっと楽しみにしていたこと、文量が少なかったこと、大好きなエッセイということもあり、あっという間に読み終えていました。
ねるちゃんのことをしっかり知ったのは彼女がアイドルを辞めて芸能活動を再開してから。好きになったアイドルグループは彼女がいたから生まれたことは知っていました。


そんな彼女のイメージは「勘違いされやすような人」。すごく嫌な印象だと思う。本当にごめんなさい。でもここでは素直に。
柔らかな顔立ちと喋りのおしとやかさから、「優しい」とか「いい人」とかプラスのイメージを持たれることが多いからこそ、人間誰もがもつマイナスな部分がひょいと出現すると失望されちゃう。何より、それを自分から相手に伝えようとする時、誤解なく表現するのが苦手な人なんだろうなと思っていました。すごく姉に似ているんだよね。

だからこそ彼女がエッセイを書くことは容易に納得できたし、彼女は実際に話す姿を見るよりもエッセイのほうが正直に、表現豊かに生き生きと伝えてくれる人だと思っていたから、読んで彼女を知ることが楽しみで仕方なかったです。


タイトルになっている「たゆたう」は漢字に変換すると「揺蕩う」

揺蕩う
1.ゆらゆらと揺れ動いて定まらない。
2.気持ちが定まらずためらう。心を決めかねる。

デジタル大辞泉より

エッセイでは彼女自身が揺蕩っているのが目に見えてとれたし、後書きにも揺蕩っていることがかかれていました。そんな姿が彼女らしくて、その様子に触れることができたのがとても嬉しかったです。


思っていた通り、彼女の文章は素直で生き生きとしててすっと体に入ってきました。
西加奈子さんは帯で、「大切な瞬間のことを大切に心にしまっておけるねるさんを、私は信頼しています」という言葉を送られていました。その言葉通り、彼女は日常で大切だと感じたことを大切に、大切に心の箱にしまい、その箱から丁寧に、丁寧に取り出して言葉にしてくれている。彼女の丁寧さと温かさを感じられたエッセイでした。



エッセイは人の心を「お邪魔します」と言いながら覗いている感覚を持ちます。いや、覗いているというより、手渡してくれた心の箱をゆっくり開けて、その中に入っているものをひとつずつ丁寧に目を通す感覚かも。それはnoteを読んでいる時も同じ感覚。その作業が好きだからエッセイやnoteが好きなんだろうな、とねるちゃんのエッセイを読んで納得しました。
これからも色んな人の心の箱をお邪魔しますと言いながら開けていきたいな。



追記

姉もこの本を楽しみにしていて、私が買って一緒に読むことを決めていました。
姉に本を渡し、姉は読み、感想を共有すると、姉は共感しっぱなしだったみたい。

異なる考えのエッセイは新たな考えを教えてくれる教科書的存在で、自分と似た考えを自分がもつ言葉とは異なる言葉で表現してくれたエッセイはお守り的存在になる気がしています。

『たゆたう』は教科書的存在として私が持つよりも、お守り的存在として姉が持っておくべき本だなと思いあげることに決めました。誕生日プレゼントだね。大切にしてね。

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