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伏線なんて要らんのですよ 映画「トラップ」
面白かった!!!こんなにもカラッと楽しめるサスペンススリラーに仕上がってるとは、、、ある種のヒーロー映画でもあったし
予告編にあるような謎!とか真相!とかのミステリー要素よりは、しっかりサスペンスの持続で楽しませてくれる方向性でした、それでいてシャマラン作品ならではの珍味感もしっかり味わえる
もっと濃いテイストでも大歓迎だけど、これはこれで好みです
前半・後半それぞれ見どころ満載なんだけど全体の構成として、クライマックスに近づくにつれて話の規模がどんどん小さくなっていく、という展開が私としてはフレッシュに感じられました
いろいろあって遂にライブ当日!みたいな流れではなく、まずライブがあってその後にいろいろあるという順番
物語がどこに着地するか読めないようになってるこの語り方も、サスペンスを盛り上げる手法のひとつなんだろう
伏線のように見せておいて特に何もない展開もいくつかあったりして、そこらへんの挑戦的な態度も好みのライン
無駄な要素というよりはしっかりミスリードとして機能してる感じだったからね!体調を崩す人たちの様子とか
まぁ突っ込みどころを挙げだすとキリないけどね、少なくとも観てる間はそこまで違和感なかったです
細かい部分は割愛しますが、この場面をどう切り抜ける?!という局面をあれこれ大胆な手口で乗り越えていく前半なので、これはやっぱり普通にアガりました
で、それらの大胆さがひとつの究極を迎えて、大展開の後半に突入するわけだけど
個人的にはどの展開も納得度が高い、それぞれのキャラクターの思惑があってこその進行になってる感じで最後までハラハラできました
それとあわせて、クーパーのことを厳しく断罪するような物語にはなってないのがこれまたシャマラン風味というか…倫理観とは違う何かしらをむしろ中心に置く感じがすごく変、だけどそこが良いというか
その意味では過去作「スプリット」との共通点、心に傷を抱えた人間への優しい視点がやっぱりあるんだよね、悪は悪だけどそれはそれとして…でもまぁそれもそれだけど…というか
かたや「ジョーカー : フォリ・ア・ドゥ」がアーサーの二面性や世間との距離感について深く掘り下げ、善と悪の向こう側に確かな希望を見出しているとも言える中で
今回この作品は、二面性もなにも「まぁ全部が本当なもんで!!!!!」という割り切り、個人的にはここがけっこう新鮮でした
ジョーカーでさえ「本当の自分はどっちだ…?」みたいな話をしがちなところを、善も悪も普通に両方本質でしょ??という顔でシームレスに描いてみせる
ジャンル的な面白さも相まって、とにかく目の離せない場面が多くありました
子どもらにとって良い父親であったことは本当だし、子どもたちを大切に思う気持ちも本当、一方で巧妙に人を殺しまくっててそこに良心的な抵抗感が全くないのも本当、こういうのをサイコキラーって言うんだろうな
ブラックジャックで鬼子母神のエピソードがちょうどそういう味わいを持ってたけど、それとは違って今回まるで救いがない、というよりは救いを求めていない…?
クーパーが言うところの「二つの人生が交差する」瞬間って、言葉としてそう表現されたのは車庫の場面だったけど、むしろ『夢見る少女』の場面こそがその交差だったよね
追われる殺人犯としての焦りと、娘の晴れ舞台に強く胸を打たれる感慨と、その両方が同じくらいの温度でクーパーの中に湧き上がる
それを言葉ではなく表情だけで見せる演技、これは見事だったな、、、
これが例えば「今はどっちの俺なんだっけ?」みたいに理性で捉えようとする思考のバグりだとしても、それはそれで愛おしく思えてしまうのが映画としての奥行きでもあるように感じる
なんというか人間の不完全さ・未完成さに対する愛情という感じ、これはある気がします
その直後、プロとして人命を救いつつ同時に殺人のプロとしても逃げおおせるという展開がこれまたエンタメとして見事で!!クーパーはその両方を同じ温度感でやれちゃうわけだもんね、いや〜面白い
一方で、歌姫として絶大な人気を誇るレディ・レイブンがステージ上から語りかける「許し」だとかは、ライブの運びもあってどうにも薄っぺらく見えてしまうんだけど
ある種の綺麗事とも取れるそういった「善」の信念を、ステージを降りて誰も見ていない現実世界でこそ必死で貫いてみせるという描き方、これはアーティスト描写としてもかなり好きなバランスでした、生き方・生き様の話として
共演する歌手がステージ裏では横柄なやつだったりしたことを踏まえると、余計にレディ・レイブンの裏表ない真っ直ぐな善性が輝くという作りになってた
カオスの中でもこういう絶対的な「善」を恥ずかしげもなく描ききる、例えばヒーロー映画にも似たピュアネスが含まれている!というのもシャマラン作品の好きなポイントです
人には裏も表もあってそのどれもが「本当の自分」だとして
表現者たるレディ・レイブンのそれが人を救い、破壊者たるクーパーのそれは自らを破滅に追いやる、というシンプルな勧善懲悪ものでもあったので、やっぱり簡潔で喉ごしの良いサスペンススリラーではあった
クーパーに関してはサスペンスを2時間きっちり盛り上げつつ、自業自得で徐々に追い詰められてしまうというのもカラッと楽しめる理由のひとつだと思う
それはそれとしてレディ・レイブンの楽曲、演じるサレカ・シャマランが作っているということなんだけど、この絶妙な薄さというか耳なじみ良すぎる感じは狙ってのことなんだろうか、あるいは好みの問題なのか
ただこうやって感想書いたりパンフ読んだりの時に何度もサントラ流してるので、次に観るときは「おなじみのレディ・レイブン」みたいな感覚で楽しめるかもと思うとそれはそれで嬉しいというね
とにかく!!前作「ノック」ほど強烈な困惑や憤りを感じるような内容ではなく、むしろライトに楽しめるサスペンススリラーとしての色合いが強い本作、このくらいのがちょうどいい時ってあるよねと思う
まだシャマランは観てない作品も多いので、次作までにはいろいろ観たいな〜!これからも映画の面白さをどんどん更新していってほしい
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