![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/173266380/rectangle_large_type_2_59a9e623765de9330e6a47b5d844a532.jpg?width=1200)
愛と痛みを垣間見る交差点 「リアル・ペイン〜心の旅〜」
あたたかくて鋭い、豊かな時間だった……いつの間にか理屈ではない涙が流れてくるような、映画ならではの魅力に満ちた作品だと思う
昨年の「ホールド・オーバーズ」も人間どうしの距離感や理解を巡る物語として素晴らしかったけれども、こちらもまた、主人公たちが人類の歴史と重ね合わさりながら巨大でささやかな成長や変化を遂げていく、ある意味で人生そのものと言える物語であったように感じました
登場人物それぞれが持っている背景はしっかり説明されるんだけど、その割には彼らのことをほんの一部しか知れなかったという印象があって、それがまた余計に実人生っぽいというか実社会での関わりに近い後味だった
中でもキーラン・カルキン演じるベンジーの言動は滑稽だったり暴力的だったりするので印象に残るんだけど、そういった要素でベンジーの全てを知ったという気持ちにならないのは、やっぱり脚本の奥行きがしっかりあるということに尽きるんじゃないだろうか、ありがたい
決して不器用すぎず、かといって理想的でもない、人々の活き活きとしたぶつかり合いと分かり合いが描かれていて心がほどけていく思いだった
どうしようもなく反発してしまう瞬間もあれば、10代の頃に戻ったかのようなみずみずしいひと時もあり、思い出すたびに心が溶けていくようです、良かったな〜〜記念撮影のとことか
他人だからこそ大胆に分かり合える時もあれば、親戚だからこそ踏み込めない時もある、それを露悪的でないバランスで描く姿勢からは、地に足のついた人間愛を感じました
近しい相手に対して抱く感情は必ずしも単純明快ではなくて、憎しみと憧れと感謝が同居することだって珍しくないんだよねと
で!!そこらへんと絡めて、近年だと「関心領域」でも扱われた、世界にあふれる悲劇への関心についてもまっすぐ目を向けてくれる映画でもあるわけで
ツアーに参加する彼らを始めとして、表現の仕方は人それぞれ全く異なるけれども、「自分ではない他者の痛みや惨状に心を寄せること」それ自体が、まず人間として大切なことなんだと言ってくれているように思いました
それが役に立つかどうかなんて関係ないし、人と比べて優れている・劣っているだとか、そういうことすら超える愛を人間は持てるんだよと教えてもらったような気がします
暖かい色づかいも素敵だし、編集のリズムも好み、笑わせるのまで上手いときたらもう恐ろしいことですよジェシー・アイゼンバーグは
冒頭から少し気になりすぎるレベルでずっと鳴らされるショパン、ここら辺の文脈はよく知らないので調べて学びたいと思う
そしてラストの優しい感動、これが同時にしっかりドライでもあるということがまた驚きで…変化したようなしていないような、それでもきっとデイヴもベンジーも大丈夫だと思える
そしてそれは私たち観客もきっと大丈夫であり、果ては世界まで…とも考えたくなる、おじさん2人の数日間を通してそんなことまで視界が広がっていったのも嬉しかった
テクニカルなのにそれを感じさせない、静かで大きなあたたかさのある作品でした!!これは観るたびに発見がありそう