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原液、現役、これこそ待望の!!「ビートルジュース ビートルジュース」
想像をはるかに上回る爽快で軽やかな後味、すごく楽しかった、大大満足で劇場をあとにしました
ここ10年くらいはティム・バートンの長編映画にあんまり期待を持てない感じがあったので、今回もけっこう見くびってた部分はある…それゆえ本作が持つ圧倒的な爆発力には驚かされた
この機会に前作「ビートルジュース」も久しぶりに観て、なるほどティム・バートンの趣味全開というかもはや趣味しかないくらい極端、あっけらかんとして絵本のような作品でした
ストップモーションをはじめとした視覚効果をすごく頑張ってる感じもキュートで、なおかつ全体的に品のあるグロテスクさとユーモア、そのバランス感覚もさすがだなと感じて
その続編にあたる今回もやっぱりバランス感覚が素晴らしいんだけど、どう素晴らしいのかと言えばちょっといろいろあって…
とにかく絵本的では全くない、強烈な映画としての圧力だった
まず私の立場としては、冒頭にも書いた通りここ10年くらいのティム・バートン監督作は観ていない、2000年代あたりはどの作品も熱心に追いかけたものだったけど
恐らくアリス・イン・ワンダーランドかな、あのがっかり感は当時の私にはキツかったように記憶している
で、今回始まってみると、まず冒頭から前作ほぼ完コピのオープニング!!なるほどきっちり続編やってくれるんだなと
なおかつ空撮の技術も飛躍的に進化していたりして、かなり胸が高鳴る幕開けでした
内容としては過去の作品群とも共通する部分が多くて定番といえば定番、親子の和解・死後の世界、そのあたりに関心があるのも相変わらずなのかなと思いながら
しかし今回ちょっと驚いたのは、そのドラマ部分の充実!!登場人物たちの心の動きが自然だし、親と子の物語として共感性も高い
ビートルジュースの元妻だけは、本筋にどうもうまいことハマっていかない感じがあってノイズではあったんだけど、物語のサスペンスを高める要素には充分なれていたと思う
そんな中でも、元妻の復活シーンも含め、ちょっと過剰というか異常に長く見せる場面というのが本作には何ヶ所かありまして
それらが例外なくティム・バートン印そのもの、ポップで不気味でユーモラスなテイストは全然色あせてない!!!
それどころか、むしろ映像技術がしっかり追いついていることで、過去作よりも接しやすいタイプの変態になっていってるように思う
しかしそれと同時にストップモーションの手触りも大切にする、これもまたバランス感覚だよね〜見事
ダニー・エルフマンの音楽は今回もばっちりの相性で、不気味さを演出しながらきっちり品のある雰囲気、なおかつ常に少しバカな感じなのも安定感あって楽しめました
共依存の関係と思わせて…とか、爽やかな純愛と思わせて…とかサスペンス要素をふんだんに盛り込みつつ、全てを最終ゴールとしてのハロウィン当日に収束させていくドラマ部分
その隙間を縫うようにしれっと、しかし確実に挟み込まれるポップな変態要素
そのようにしていろんな角度からのワクワク感を積み上げていきながら、興味を持続させるための工夫あふれるストーリーでした、途中までは
ところが最終的に積み上がったのは!!!悪趣味なウェディングケーキ、過剰にブチ上がる音楽とダンス、終わる気配が全くないドロドロでキラキラの結婚式シークエンス!!!!
いやいやこんなの最高すぎる、放り投げすぎている、まるで話が通じないという感覚で嬉しすぎました
人によってはこの放り投げ具合が嫌だという捉え方も確実にあると思う、ふざけすぎているので
正直これティム・バートン作品という文脈を抜きにしたら、あまりにも乱暴な着地に私だって腹を立てていた可能性は十分ある
しかし着目したいのは、画面に映る全てのキャラクターや小道具までもが、全て全身全霊で命を祝福していると思えるほどの、とにかく圧倒的にポジティブな躍動を見せてくれていたということで
とにかくみんな楽しそう、死んだり殺されたりするキャラクターでさえもどこか楽しそう…文字通り楽しそうなウィレム・デフォーも良かったな
人種も性別も、なんなら生者・死者の境すら超えて踊り狂うソウルトレインの場面に至るまで、ちょっと言葉にするのがもったいないくらい「陽」の命に満ちていました
そうやって生と死の境を軽やかに超えていきながらも、その線引きを決して曖昧にはしない(生者は生者、死者は死者として揺るがない)というバランス感覚が、やっぱり職人であり変態でもあるティム・バートンの誠実な仕事だと感じる
「殺す」と「懲らしめる」を明確に分ける倫理観が一貫しているので、単純な勧善懲悪ものとしても気楽に楽しめる
そして最終的にはやっぱり生きることの素晴らしさを描いていると思う、地獄が最高なら現世も最高というロジックにおいて
少なくとも私は、そういう強くてキモくて暖かいエネルギーをこの映画からズバッと受け取りました、のびのびとした命があちこちで輝いているような爽やかさがある
商業映画の多くがユニバース化の流れに苦心している中で、自分が作ったお気に入りの過去作とだけリンクする閉鎖的な続編、その古き良き味わいが懐かしくもあり!
これを機にティム・バートンの過去作もしっかり追いかけたくなりました