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藤井風と、おかあさんといっしょ

紅白で、藤井風くんに心持っていかれました。

アーティストにこんなにすさまじい引力を感じたことは、近年なかったかもしれません。その魅力を語りつくすことは到底無理なんだけど、一個だけ書いてみたい。

彼の歌、歌詞見なくても言葉が聞き取れますよね。

これ、最近の歌だと珍しくないですか? 私だけですかね?

ちょっと流れてきた初めて聴く曲でも、風くんの歌は何を言ってるかわかる。これ、実はけっこう大事なことじゃないかと思ったんです。

その理由に、心当たりができました。

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ためしに、「燃えよ」って言ってみてください。

で、こちらをポチっと。▼

メロディーの「もーえーよ♪」の音程アップダウン、「燃えよ」のイントネーションと同じじゃないですか? しかも「もうええよ♪」と「もうええよ」も同じ。

これもそう。▼

サビの「つれてーぇーって♪」のアップダウンも、「連れてって」の発音と同じ。

風くんの歌が聞き取りやすいのは、日本語を日本語のまま歌に載せてるからじゃないか、と思ったわけです(日本語になってない)。

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そんなことを思ったきっかけは、娘と観ていたおかあさんといっしょ。冬のある日、「雪やこんこ」が流れてきましてね。

「ゆーぅきーやこんこ、あーられーやこんこ♪」って、歌ってるというよりはリズミカルに言葉を置いている感覚だなと思ったんです。

それはきっと、メロディーが「雪やこんこ、あられやこんこ」って発音するイントネーションと同じだから。そう思ってよく聴いてみると、全編ちゃんとイントネーションに沿って作曲されてるんですよね。

そういえば、文部省唱歌とか日本の昔の歌って、そうやって音階をとても意識して作られていたってどこかで聞いたな、と思い出しました。

それがやがてJ-Popの発展と共に、歌詞の一音一音がバラバラに解体されて、日本語のイントネーションとは全く違う音階でメロディーが再構築されるようになった、という話で。

たとえば往年の名曲、米米CLUB「君がいるだけで」のあのサビ。

「たっとーえーばぁ、きみがいるだーぁ・けでこっこーろがぁ、つよくなれるーことぉ♪」

めっちゃくちゃキャッチ―で魅力的なメロディーではあるのだけど、「例えば君がいるだけで、心が強くなれること」と読んだときのイントネーションとは、音階も単語の区切れるポイントも全く違う。

だからこそ「え?」っていう新鮮な驚きがあったわけだし、人の心を惹きつけたんだと思うけど(私も今でも大好き)、少なくとも歌を最初に聴いた時、何言ってるかは聞き取れなかったはず。

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藤井風くんは、メロディーも秀逸なんだけど歌詞の音階もナチュラル。この二つをさりげなく両立してるのって、すごい才能だなと思ったわけです。

グッとくるサウンドって、雰囲気だけでももちろん迫ってくるものはあるのだけど、歌詞がわかると世界観によりエッジが立つというか、心に刺さってくる角度が全然違うよなって。

まあ、くだくだ書いてみたんですけど、いい音楽はただ聴けばいい。

沼はまだまだ深そうです。


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