ワタクシ流☆絵解き館その245 青木繁「海の幸」㉓ エスキース ( 草稿 ) の描線を探る
1944年5月発行の東京文化財研究所文化財情報資料部編「美術研究」に、青木繁の「海の幸」の草稿画像が掲載 ( 下の図版 ) されている。その描線をたどってみたのが今回の記事。
なおこの草稿が現在どこに所蔵され、どういう扱いを受けているのかはわからない。
💠 同じ図版で、コントラストと明るさを変更してみた。(下の図版 )
不明瞭さは変わらない。
💠 同じ図版でさらに、主な描線を黄色の実線でたどってみた。
🔘 そこからぼんやりと浮かぶ像を、色付けしてみた。複雑で像が結ばない部分はカットした。
🔘 本画「海の幸」に返って、上の加工図版を並べて見ると、不明瞭で、相当な差異はあるものの、本画の中央部分に、最も生かされているのではないかというふうに見えて来る。
🔘 下の図版は、本画に残された描線を拾って、黄色の実線で示したもの。( 以前の「海の幸」解釈の記事から転載 )
残っている描線をたどれば、初めの構想では、背中に魚を担ぐ人ではなく、行列の後ろの人の姿が前方にもあって、それが繰り返される構図だったかもしれないと推測したのが、さらに下の図版である。
🔘 もう一度、上に掲げた、輪郭を塗りつぶしてみた図を示す。魚と推測してみた白いかたまりの位置は違うが、銛を担いでいる様子や、波が足元に寄せている場面構成は、草稿時点で固まっていたと見えて来る。
🔘 なお、草稿では、後ろの人物と思しき描線は、女性を描いているのではないかというふうにも見える。頭は手拭いの姉さん被り、もちろん着衣で。
浜で帰漁を迎えている女性をも描こうとしたのか、という想像もできるだろう。
そう見る時、後年九州に帰り描いた「漁夫晩帰」( ウッドワン美術館蔵 ) の構図をも想像させるものになる。
令和5年10月 瀬戸風 凪
setokaze nagi