ワタクシ流☆絵解き館その152 青木繁「わだつみのいろこの宮」の世界を挿絵はどう描いたか、続編。
今回は、青木繁「わだつみのいろこの宮」の場面、山幸彦と豊玉姫の出会いを、児童読み物本の挿絵ではどう描いたかを探る第二編目。
下の絵2点は、昭和2年、盛森堂書店出版。「歴史童話叢書3リヤ王」より。画家は、木村重光。
わだつみのいろこの宮の一部が、城壁のように背景に添えられている。山幸彦は気軽に声をかけている雰囲気で、神々しさは乏しい。海の底という感じでもない。
2点目の絵の頭部が鯛らしき魚は、人面魚ならぬ魚面人だ。やや不気味。こちらは海の底の感じを作っている。
はっと気づいた面持ちの豊玉姫。
大正10年、富山房出版「日本童話宝玉上巻」より。画家は不明。線香花火の文様のような植物の描き方が珍しい。
2点目は、わだつみのいろこの宮の様子。波に揺らいで見える演出なのか、宮殿の軒は曲線をなしている。
目鼻がない豊玉姫!
第一編目で、カツラの木はあっても、山幸彦の部分が白抜きされている絵を紹介したが、これもまた凝っている。描きようのない美しさを言いたいのだろう。
昭和13年出、コドモ芸術学園出版。中西芳朗著「神話美談」より。挿絵も、著者である中西芳朗。
豊玉姫に出会う直前の山幸彦。カツラの木を探しているのか。大きな潮に漂っている感じが出ている。
大正7年、子宝倶楽部出版。渋川玄耳「日本の神話 古事記絵話」より。画家は名取春僊。
「姫さま。ここです」と声をかけているような雰囲気。海草ではなく、丘の植物のような花が添えられている。
大正9年、赤い鳥社出版。鈴木三重吉著「梟文庫6 古事記物語上巻」より。カラー版とモノクロ版(同じ絵)。 画家は、江崎孝坪 ( えざき こうへい )。江崎は日本画家で武者絵を得意とした。
井戸の水はまるで濁り酒のようだ。
今回も楽しんでいただけただろうか。最後に「わだつみのいろこの宮」油彩下絵の方を掲げる。
令和4年6月 瀬戸風 凪