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詩のアルバム scene13 行き止まりの風景
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📖 行き止まりの風景
詩 ・ 瀬戸風 凪
睦み慣れた猫の背を撫でるように
図書館の書架をめぐっては
ときおり頁の闇の覆いに沈んでいる
絵本の中の絵を引き上げる
絵の水面に打ち敷かれる日のひかりの翼
絵からさわ立つ彩の風の香りが
私の魂の瀬々を渡りゆく
けれどそれはたちまちに途切れ
私は行き止まりの風景の中にいるのに気づく
幼い頃からずっと
行き止まりを引き返す他ない 旅人の思いに
佇んでいたのではなかったか
それより他の思いを 持ったことなどありはしなかった
いつも
絵本の絵に押し戻されてきたのだ
それでも学校図書館に入る新しい絵本に
胸を昂らせていた遠い日々
美しい嘘でも汚い嘘でも
「本当」は描けないと気づいていたのに
美しい嘘も汚い嘘も深く求めた
そのひたごころばかりは
ただかなしく ただまぶしい