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ワタクシ流☆絵解き館その143 青木繁「黄泉比良坂」習作―強い伊邪那岐(イザナギ)は描かない!
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■ 構想途中で視点を変更している
挿図②の習作から見えてくるのは、構想段階初期では、モモノミを投げて追い来る黄泉醜女を振り払う、知能と霊力を示すイザナギを描く視点を持っていたと思われる。筋肉も隆々としていて、絵の中心に存在するのはイザナギとして着想したのではないだろうか。
ところが、挿図①の習作と完成作によってわかるのは、イザナギは、絵の隅に移され、ほうほうのていで逃げていて強そうには見えない姿になり、その分、そこまで追いつめているイザナミの執念の凄さが、絵の主眼になっている。構想途中で視点が変更されていると言える。
■ 青木の神話題材の絵は、女の情念が主役
青木繁の作品絵解きシリーズで述べて来たことの繰り返しになるが、青木は神話を題材にして、女の情念や霊力の劇的な場面を見せている。絵の主役は、「わだつみのいろこの宮」ではのちに山幸彦の子を産む豊玉姫、「大穴牟知命」では蘇生させる力を表したウムガイヒメ、キサガイヒメ、「輪転」では、直接現れてはいないが、太陽神である曙の女神ウシャス。
この「黄泉比良坂」もまた、黄泉醜女たちの地獄の亡者そのものの様子を借りて、生かしては返さぬという女神イザナミの妄念を描いている絵である。
■ 画面には黄泉醜女の叫びが響いている
二点の習作と完成作で共通しているのは、イザナギが耳を塞ぐしぐさが見られることだ。これは、耳を塞がずにはおれない音が聞こえていることを示すだろう。その音は、黄泉醜女たちのうめき声、叫び声だろう。
また、イザナミの執念の凄さに注視点を移したことから考えて、今日伝わっていないが、おそらく黄泉醜女たちの、もつれ合う姿の部分を描いた習作もあったに違いないだろう。
挿図①の習作は部分でしかなく、黄泉醜女たちの入り組んだ姿が、下絵に当たるものなしに完成作で描かれたとは考えにくい。
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令和4年5月 瀬戸風 凪
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