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ワタクシ流☆絵解き館その108 青木繁「大穴牟知命(おおあなむちのみこと)」⑥ウムガイヒメの姿の源はここにある!

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青木繁  「大穴牟知命」 1905年  アーティゾン美術館蔵

この「大穴牟知命」は、神話の媛(ヒメ)の思いを描くのが主題である。画題である大穴牟知命の存在は、絵の脇役の位置に留まる。女の持つ霊力や思情を主題とする意識は、神話に材を求める青木の根本にある想念だ。
たとえば「黄泉比良坂」は画面には出てこないが、黄泉醜女を通して、伊邪那美の執念を描き出した絵である。「わだつみのいろこの宮」もまた、豊玉姫の心理に焦点がある絵だと言える。
そこで改めて「大穴牟知命」を見つめ直し、主役の媛(ヒメ)の一人であるウムガイヒメの印象の深いしぐさは、何をヒントとして造形されたかに思いをはせてみた。

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上に挙げた書籍「美術講和」を読むと、青木の属した白馬会の画家たちの持っていた教養水準は、現在で言えば修士課程の学問内容にも匹敵するものであることがわかる。古今東西の古典・文化に感性のアンテナを立てていたのが、白馬会に集った画家たちなのだ。

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次に、絵の中にあるものから、つながりを考えてみた。

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青木が気づいたであろうイナンナの神話と大穴牟知命の神話の、内容の類似にも注目。

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「イナンナの冥界下り」は、死と蘇りの神話として広く語られている。(内容はややむつかしくなるので、詳しくはWikipediaなどネット記事をご参照ください)
青木はこの神話を知って、「古事記」の大穴牟知命=大国主命の受難の話に通づるものを感じとったのではないか。
そして生命力=蘇りの象徴たる神であり、また豊穣=セクシュアルな女神でもあるイナンナ⇒イシュタルのイメージが強く影響して、死者を蘇らせる働きをしたウムガイヒメの、強い眼差しや肉感的な姿態を形作る要因となったのではないだろうか。

                  令和4年2月  瀬戸風  凪

この解釈に興味を持たれた方は、下のタグの「明治時代の絵」から入り、青木繁の作品の絵解き記事をぜひお読みください。


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