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2022/11/4 北本で出土した遺物をみせてもらう

9:40 遺物をみせてもらう

北本市内の旧中学校校舎にて、文化財保護担当の方と合流。2週間ほど前に教育委員会宛に申請した、旧校舎内に保管されている北本出土の遺物の閲覧/撮影を行う。旧校舎の廊下には北本で出土した遺物が山積みになっており、相当な量が出土していることを物語っていた。今日はそのなかから主要なものをいくつかピックアップしてもらい閲覧させてもらった。
土器やその破片が古い年代から順に並べてある机と、北本にて出土した特徴的な土器、石器、土偶がまとめてある机の2種類。一見すると割とコンパクトなしつらえだった。
文化財保護担当の方がそれぞれの遺物についてざっと解説をしてくださる。ざっと、と言っても2時間を超えるお話。情報量もさることながら、よどみなく古代の暮らしやそこで芽生えた文化について語りつづけられる担当者さんの熱量も凄まじい。
約8000年前の土器の破片。縄の模様がついている。古代も海から遠く離れていた北本で発見された、海貝を使ったすじ模様が刻まれている土器。粘土が固まる前にたまたまついた豆の圧痕。その圧痕の表面を分析し、豆の種類を割り出し、当時の食生活を推察する。考古学は思っていたよりも科学的だ。装飾やまじないに使われていたであろう石器や土偶、繊細な細工が施された土器のピアス。5000年前に作られたとは思えないほどの精巧さと、今でも美しいと感じられる造形だった。
用意してもらっていた遺物だけでなく、奥に保管してある資料もいくつかみせてもらう。本当に、予想をはるかに上回る物量で、北本の古代の暮らしがいかに安定しており古くから住み続けられている土地であるかを証明している。

担当者さんとの話
担当者さんに文化財保護、北本の文化政策についてもいろいろとお話を伺う。
土地の開発にあたり遺物だと思われるものが発見された場合、可能ならば発掘をしなくて良い手段を探る、という話が印象的だった。現代の発掘技術では、土を掘る過程で住居跡や狩猟のための落とし穴などを破壊することになってしまう。しかし将来技術の進歩によって、土を掘ることなく地面に埋まっている遺跡をそのまま把握することができるようになるかもしれない。そのために遺跡は可能な限り発掘せず未来に送るんです、と仰っていた。未来の技術と文化と探求心を信じる、とても素敵な話だった。
専門的な知識をもった担当者がいて、国内でも有数の貴重な遺物が出土しているにも関わらず、北本には歴史資料館がない。「税金を使って発掘しているのに、市民に還元できる場がないのは問題ですよ」と担当者さんも仰っていた。
その他にもデーノタメ遺跡は、道路新設工事のためにその調査継続を左右されてきたこと、現市長は調査にふみきる決断をしたこと、「北本ビタミン」時の市長はその決断を先延ばしにしたことなど、発掘調査をめぐる政治的背景の話もでてくる。なるほど、「北本ビタミン」で遺跡や古代の文化に触れることが一切ないのは政治が絡んでいたからか、と納得。北本の文化を読み解くレイヤーがひとつふえたように思う。
「北本は文化都市を謳っている割に、文化を愛していないんです。役所の職員のなかにも北本を愛している人がほんとうにいるのだろうか」と嘆きに近い言葉を担当者さんは繰り返していた。

12:30 駅前の風景撮影

担当者さんのお話に出てきた、駅前の特徴的な地形を撮影する。

13:00 お昼

ラーメン十勝にてお昼。

14:00 post へ

一休みしに post へ。1階のてともオープンしている。西日が差し込む post は暖かい。午前中の情報圧に疲れてしまって昼寝をする。

16:00 post にて作業

担当者さんに頂いた資料に目を通す。午前中聞いたお話をおさらいするような感覚。良くまとまっている資料だが、やはり専門の人から直にお話を聞き、遺物を目の当たりにして手に取ることの方が、受け取る情報量が圧倒的に多い。遺物展示が公のものになって、誰でも閲覧できるような日がはやく来ると良いなと思う。たくさんの貴重な遺物たちが日の目を浴びないのはもったいない。北本の文化を誇りに思う一因になると思うのだが…。
私が制作している映画では「北本ビタミン」での出来事や関係者が抱える想いについてフォーカスをあてようと思っていた。しかし今日伺ったお話や日の目を浴びない遺物のことを考えると、北本において文化がどのように扱われてきた/いるのかを問う映画にもできるのではないかと思う。
私みたいなよそ者がそんなことを言ってもお節介なだけかもしれないが。


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