「こどもたちの友達になる」PORTOスタッフ:りおちゃんの今(後編)
PORTO(ぽると)は、兵庫県神戸市の中心部・三宮にある「おやこの世界を広げるサードプレイス」です。大人もくつろげる室内遊び場で、一時預かりや各種イベントなども開催しています。
PORTOのことをもう少し深く発信する上で、関わる「ひと」というところからお伝えできれば、とスタートしたインタビュー「PORTOなひとたち」。
前編に引き続き、保育スタッフのりおちゃんがPORTOで働き始めてから、今の気持ちをインタビューしました。
自分はPORTOで何ができるのだろう?
―PORTOで働き始めて1年が経過しましたが、どうですか。
「子どもたちとおうちの方が一緒にいる空間」で働くということは初めてでしたし、過ごし方にもいろんなバリエーションがある中で、自分がどのように立ち振る舞うか悩むこともありましたが、まずは「こどもたちの友達になろう」と考えるようになりました。
この子とどんな遊びをしたら楽しく過ごせるかな?こんな提案はどうかな?と接するようになると、わたしも身構えず楽しめるようになってきて、こどもたちで何かトラブルが起きた時も、それは「わたしが嫌だからやめてほしいな」とあえて「わたし」を主語にして伝えたりするようにしています。
3姉弟を育てる家族と、一緒に暮らす経験
ー「こどもたちの友達になろう」と考えるようになったきっかけは?
PORTOで働き始めたのと同時期に、尼崎で暮らす0歳、3歳、5歳の3人の子どもと夫婦の家族が「手が足りないから若者と子育てをシェアしたい」と聞き、ご縁があって、そのお家の一室を借りて住むことになりました。そこは、自分だけでなく、近所の親戚ではない祖父母世代からこどもたちまでよく出入りするおうちでした。自分もその中に混ざっていくと、こどもにも、家で見せる顔と保育園で見せる顔があることを知りました。こどもたちも保育園では頑張ったり、一生懸命な姿がある一方で、家族の前では感情をストレートに表現したり、甘えたりする姿があるんだなあと。
ーお家で過ごすこどもの姿を自分の家族以外で見られる機会はなかなかないでしょうし、いい経験になりましたね。こどものタイプによっても違ってくるところはあるけれど、確かに外と家の中では違うところはあるとわたしも思います。そのご家族との暮らしで、他にも感じたこと・気付いたことはありましたか?
子育て中のおとなが考えていることや感情・葛藤について教えてもらったり、自分自身も気付くきっかけになりました。家族として暮らしていたので、自分もみんなも感情を出して過ごす中で、日常的な親としての悩みや気持ちをより感じたり、考えたり、話したりといった機会がたくさんありました。
また、シェアハウスの家族と過ごす中で、おとなの心の状況と、こどもの姿がリンクしていることにも気付きました。おとながざわざわしていると、こどもたちの気持ちも落ち着かない様子があって、何かしら繋がっているのかもしれないなと感じるようになり、あらためてPORTOではおとなの方も過ごしやすくするための工夫をしたいなと考えるようになりました。
おとなの方がPCを開いてのお仕事や、本を読んだりひといきつきたい時間であれば、「こどもたちとわたしが遊ぶことで、おとな時間が確保されると、あとでお子さんと楽しく過ごせるかな?」と考えてみたり、お子さんの様子などたくさんお話をしてくだされば、私も嬉しくていろんな話を聞いてみたり。いつも思う通りできるわけではなくて、もっとこうすればよかったかな、と思うことも日々ありますが、ベースはこどもたちの友達になることを大事にしながらも、その家族にとってPORTOで過ごす時間が何か少しでも手助けになるといいなと考えて接しています。
―親の気持ちが子どもにリンクする、というのもあると思うし、私自身、親になってから、こどもが楽しそうだと自分も嬉しくなる、という感覚もあるなと思っていて。小さいこどもとのお出かけは大変なことも多い分、お出かけした先でこどもが楽しく過ごしてくれたら、おでかけしてよかったなーと感じることがありましたね。
たしかに、PORTOに入られるときにベビーカーを押す表情がなんだか優れなくて「お疲れなのかな?」と気になっていた方が、1時間ほどこどもたちとわたしが遊んで楽しんだ後、帰る頃にはおうちの方も表情が和らいでいることがあって、「あ、わたしが何かお役に立てたのかもしれないな」と感じて嬉しくなることがあります。
大学生や社会人が、子育て中の家族と語り合える場所
―今後、PORTOでしてみたいことなどはありますか?
同じ空間で夜にOPENしているPORTO TABLE AND BAR(PORTOの営業時間終了後、週末を中心に週1〜2回OPENしている、子連れで楽しめるBAR時間)の企画や運営も手伝っています。ここでは、海外出身の友人が、各地のごはんと文化をシェアしてくれるイベントも時々開催していて、そこで自分自身も初めて食べる料理と出会えたりして、楽しいですね。また、個人的に多様なカルチャーに触れる機会はやっぱりほしい!という思いから、いろいろ模索しながらですが、“International Night”という言語や国籍を超えてフラットに会話を楽しむようなイベントも一緒に企画させていただいています。
夜のPORTOの楽しみ方を広げることで、親子以外のもっと幅広い年齢層の方にPORTOの存在を知ってもらって、いろんな方に今後足を運んでもらえたらなと考えています。飲食をしながら、大学生やこれから結婚や子育てを考える世代が子育て中の家族の姿をリアルに感じてもらえる機会だったり、横並びで話をしたりできる機会になったらいいなと思っています。そのほか、自分の好きなボードゲーム、カードゲームを楽しめる機会などもちょっとずつやってみています。
―PORTOが、国籍も年齢も、子ども・おとなも関係なく、いろんな方々がゆるやかに関われる場所になるといいなあと、私も思っています。りおちゃんらしい企画、これからも楽しみにしています!
・・・・・
【編集後記】
若さが価値、というようなことを言いたいわけではないものの、「初めて」から得る学びはやはり新鮮さや重みがちがうなあ、とりおちゃんより少し年数を重ねた私自身は感じます。だからこそ、りおちゃんが新鮮な目で子どもたちと関わり、気付いたことをシェアしてくれたときに、ハッとさせられることがあり、こちらも学びを再認識する機会も頂いています。
また、りおちゃんがフラットに子どもたちと関わることで、気持ちを引き出し、初めての場所に萎縮していた表情が和らぎ、こころが解ける瞬間をたくさん見てきました。
これからもりおちゃんらしさを生かして「こどもたちの友達」としても、様々な世代のおとなのみなさんとも関わりを育みながら、一緒にPORTOの可能性を広げていけたら嬉しいなと思っています。(聞き手 みほ)