我が故郷、本牧
我が故郷本牧よ。とかく、その魅力は枚挙に暇なし。
我が故郷。
私は本牧で生まれ落ちた。母は紆余曲折を経て本牧へと流れついたのだ。詳細を知る由もない。幼少は自身の視覚から得られる物。それこそが世界だったのだ。故に如何に親族と云えど、そのバックボーンに想いを馳せる事はない。それを自覚したとて、人間の仔細を詳らかにするほど野暮な教育は受けていない。
横浜の本牧、海が近く、木々も多く自然豊かで素晴らしかった。そして何より友が居た。社会に身を置き、故郷を離れ都に飛び出た私からすると、どうにも故郷は遠く近い。幼少に過ごした土地は脳漿に根付き、今でも想起する度、心を動かす。
懐かしいとは良いものなのか。人は感傷に浸りたい時がある。そうした時に思い起こせる故郷があるのは良いことだ。おセンチになりたい、そんな時は誰しもあるだろう。
今も変わらぬ異国情緒な街並み。故郷を出てエキゾチックな女に惹かれたのはそのためなのだろうか。
私は故郷で一生のさようならをした父に縁ある香りろうそくで馥郁す。