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ファンタジーの世界へ|北欧の神秘 感想

SOMPO美術館で開催されている「北欧の神秘」展。19-20世紀の北欧に焦点が当てられています。美術館のHPにも「本邦初、北欧の絵画にフォーカスした本格的な展覧会」と書いてあったけど、北欧の作品を見る機会はあまりなかったので楽しかったです。


概要

北欧と聞いてハマスホイを思い浮かべたけど、今回の展示は北欧の中でもノルウェー・スウェーデン・フィンランドを取り上げています。彼はデンマークの作家なので今回は居ないみたい。

テート美術館展で見たハマスホイ

展示の内容も彼のような室内の絵画ではなく、豊かな自然を描いた絵が多かったです。展示は序章+3章で構成されていて、カテゴリー別に分類されています。

序章 神秘の源泉 ―― 北欧美術の形成
1章 自然の力
2章 魔力の宿る森 ―― 北欧美術における英雄と妖精
3章 都市 ―― 現実世界を描く

感想

第1章 自然の力

北欧の自然は薄暗いイメージがあったけど、はっきりとした色彩で豊かな自然を描いたものも沢山ありました。

◇《ユルステルの春の夜》
特にニコライ・アストルプの絵がお気に入りです。緑色のなかに濃い赤が使われているのがとても印象的でした。知らない植物が多いのもあり、現実のようで現実じゃないというか夢の中のような感覚がしました。

ニコライ・アストルプ《ユルステルの春の夜》1926年

◇《雲の影》
晴れているのに画面全体が赤みがかっていて不思議な感じ。雲の塗り方が固めなのが好きです。

ハルマン・ノッルマン《雲の影》 1899-1902年


第2章 魔力の宿る森──北欧美術における英雄と妖精

ファンタジーが大好きなので「魔力の宿る森」というタイトルだけでわくわくする。森と言えばおとぎ話の舞台で、序章-第1章で見てきた自然と第2章で扱う神話が「森」をキーワードに結びついています。

アウグスト・マルムストゥルム《踊る妖精たち》 1866年

序章に展示されていた《踊る妖精たち》は人物画か風景画か議論になったそうです。アカデミーの分類に当てはめられないという意味でも妖精やトロルなど神話・伝説という題材は北欧らしいのかも。

トルステン・ヴァサスティエルナ
ベニテングタケの陰に隠れる姫と蝶(《おとぎ話の姫》のためのスケッチ)1895-6年

◇『ソリア・モリア城──アスケラッドの冒険』
物語をモチーフにした連作12点のうち3点が展示されています。配布されていた冊子「鑑賞ガイド」に絵の説明があり、それぞれ何の場面なのか分かるようになっています。

《アスケラッドとオオカミ》、画像だと全体的に見づらいけど、実際に見てみるとオオカミの目の光が目立っていてかっこいい!
夜の森の暗さや静けさを感じて見てるだけで怖くなります。

テオドール・キッテルセン《アスケラッドとオオカミ》1900年

辺りはどんどん暗くなっていく。一対の緑色をした眼が茂みの中からアスケラッドの方を向いて光っている。オオカミだ。「ウーウウウ」と、オオカミはうなった。

鑑賞ガイドより

オースムンの物語――こういうのすき!
こちらは勇者オースムンが姫を助ける物語の連作。壁画のような絵柄がとても良い。そしてトロルたちや絵の下の山羊がゆるーくてかわいい。

ガーラル・ムンテ 《五の間》1902-4年

第3章 都市──現実世界を描く

最後の章では神話から離れて都市に焦点が当てられています。街の風景から人々の生活まで現実を描いた作品が展示されていました。人物画では《コール・マルギット》という絵のモデルさんが歌うのが好きで、歌いながらポーズをとっていたという解説がかわいかった。

《ティンメルマンスガータン通りの風景 》
ストックホルムにある通りらしいです。空がもやもやしているし道が暗い分、優しい光が嬉しく感じる。絵の中に入り込んだような感じでこういう場所歩いてみたいなぁと思った。

エウシェン・ヤンソン《ティンメルマンスガータン通りの風景 》1899年

ゆっくり見て1時間半くらいで見回りました。知っていた作家はヒューゴ・シンベリやムンクだけでしたが、面白い絵ばかりで充実した時間でした。
キャプションで北欧美術の変遷を解説しながら「自然」「神話」という2つを軸に展開していたため流れは理解しやすかったです。

気になった作家は他の作品を探すのも楽しいかも。
キッテルセンの描いたドラゴンがすきでした。

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