ミステリーはお好き?(6)歴史上の有名人が次々登場
19世紀末といえば、名探偵シャーロック・ホームズが活躍した時代。
同じ頃、舞台をイギリスからカナダに移したら、そこにも名探偵がいた、というのが今回ご紹介する『刑事マードックの捜査ファイル』(原題 "Mardoch Mysteries ")だ。
カナダで2008年に登場し、世界57か国で放映されている大人気番組。
舞台は1890年代、イギリス連邦領内の自治領だったカナダのトロント。
主人公ウィリアム・マードック(ヤニック・ビッソン)はトロント警察第4分署に勤務する刑事だ。知的で端正な顔立ち。シャーロック・ホームズに心酔し、理化学に強く、実験をしたり、暗視ゴーグルを作ったりしている。カトリック教徒なので、死体を前にすると十字を切る。非常に勤勉で捜査能力抜群だが、プロテスタントではないため昇進できない。幼い頃に母を亡くし、その原因となった父とは断絶している。
レギュラー陣は優秀な検視官のジュリア・オグデン医師(ヘレン・ジョイ)。マードックとは好意を寄せ合っているが・・・。
第4分署のトップ、豪放磊落なトーマス・ブラッケンリード警部(トーマス・クレイグ)。酒が大好きだが、禁酒運動活動家の妻が怖くて職場で飲んでいる。マードックと衝突することもあるが、良き理解者でもある。
もう一人、ジョージ・クラブツリー巡査(ジョニー・ハリス)は制服警官だが、マードックの助手的存在。
個性豊かな仲間達が協力し合い、事件を解決していく。
見どころは19世紀末ならではの風俗。通りには馬車が行き交っているし、マードック刑事もクラブツリー巡査も常に自転車で現場に向かう。
『シャーロック・ホームズ』や『赤毛のアン』と同時期のファッションが非常に魅力的だ。特に女性の髪形と帽子、ドレスには毎回魅了される。
一番の見どころは歴史上の実在の人物が登場すること。
第1話『欲望の犠牲』では交流電流の発明者ニコラ・テスラが登場。マードックとニューヨークからトロントへの無線通信での会話を成功させる。
第4話『死者からの伝言』ではシャーロック・ホームズの生みの親コナン・ドイルが第4分署を訪れる。ドイル氏は心霊主義に強い関心を持っていたが、マードックは否定的だった。だが、ラストシーンでは「物質世界と精神世界の境界は曖昧である」との結論に達し、ドイル氏に歩み寄る。
コナン・ドイルは9話にも登場し、『バスカビル家の犬』の原案はブラッケンリード警部だったと笑わせる。
この他、アルフレッド王子(ヴィクトリア女王の孫)の『暗殺計画』(12話)や、バッファロー・ビルとアニー・オークリーの西部劇ショーの一座がやってくる『大西部の伝説』(14話)や、脱出王ハリー・フーディーニが数々の技を見せる『イリュージョン』(17話)などが印象に残る。
何度見ても飽きることがない素晴らしい番組。
カナダでは17シーズンまで放映されているが、日本では3シーズンまでで止まっている。
どこかやってくれませんかあ。