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甘いガールフレンド考

はじめに


私と友達、同じ人を好きになってしまった。

私と彼が仲良しだからって、こっちの気も知らずに、遠回しに伝えてよって頼まれた。「自分で伝えたら?」と言う勇気がなかった。

彼への恋心を打ち明けることも、友達の頼みを無視することもできなかった。

だから佐藤勝利に伝えた。「ちゃんとメール返してあげて」と。

...

私の恋はここで終わりのはずでしたが、なんと、この後、雨上がりの公園で突然中島健人に抱きしめられ、挙げ句の果てに、菊池風磨に、一緒にいたいっていってんじゃん、何度も言わせんな。って叱られちゃうんです。

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はあ、酸っぺえええ。

Sexy Zoneの5thシングルに収録されている「A MY GIRL FRIEND」

お互いに素直になれない、聴いてるこっちが恥ずかしくなっちゃうくらい青くて甘い恋を、メロディアスに歌い上げる名曲だ。

私、この曲、異常なほど好きなんです。通勤時に車の中でこの曲が来たら、絶対にボリュームをあげてビタビタ浸っちゃう。(怖いよ)

なぜこんなに好きなのか。

今回はこの曲のここがたまりません!というポイントを好き勝手に語りたい。


「A MY GIRL FRIEND」との出会い


「Sexy Zone Spring Tour Sexy Second」(2014)のBlu-ray鑑賞にて。

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中島健人が白く輝くグランドピアノで前奏を奏でる。

1番は全て佐藤勝利が歌う。アイドルの曲で振り分けなく、1番を通して同じ人が歌うってなかなか珍しい。佐藤勝利の、言葉をはっきりと大切にする歌い方、堅実な歌で、うっとりと世界観に引き込まれる。

次にカメラは、美しい汗を光らせながら弾き歌う中島健人へ。伏し目からふと視線を上げた時の瞳のハイライト。曇りなきまなこ。うっ、心臓が…

そして観客の中の菊地風磨。ヤンチャなのに、私にだけは優しくしてくれそうな菊池風磨。こんな至近距離で噛み締めるように歌う菊地風磨を観ちゃった人たち、ちゃんと生きててえらい。

とまあ、初見時は映像の美しさと彼らの存在の尊さをひしひしと噛み締めたのみに過ぎない。この現象は、Sexy Zoneの映像を観る際当たり前に起こることなので、特段気にすることでもない。

しかし、巡るのだ。

初見後、1日、2日と経過し、この曲がぐるぐるぐるぐると頭の中で鳴り続けるのだ。朝起きた瞬間も、仕事中も、何をしてても。やめろおおお、やめてくれええええ、

どうやら知らず知らず、甘いガールフレンドに取り憑かれている。

どうしてこの曲にこんなに心を掴まれているんだ…

もう10代も遠い昔のことなのに、もう大人なのに、こんな甘酸っぱい曲に翻弄されて、なんでだろ、悔しくて考えた、結果


ドラマチックを極めている


という結論に。

楽曲の端々に、聴くものの心を揺さぶる仕掛けがある、その罠にまんまとハマっているだけなのだ。

以下、私的「A  MY  GIRL FRIEND」のドラマチックポイントを挙げていく。

①脚本家野島伸司による詞

これを機に調べてみた。作詞を手がける野島氏の作品といえば、「101回目のプロポーズ」、「ストロベリー・オンザ・ショートケーキ」、「理想の息子」、そしてこの曲が主題歌となっている「49」などなど、聞いた事あるやつばっかりじゃん…

キミみたいなアマノジャク          ボクこそがふさわしいんだろう

お話作りのプロが紡ぐ、生意気で、お互いに素直になれないツンデレな恋。

天沢聖司と月島雫、乱馬とあかね、古典的といえばそれまでだが、結局みんなが大好きだから古典になるのだ。

歌い出しはこうだ。

友達がスキみたいって 伝えに来たキミ    少し怒ったように 走り去ったよね

男の子の語り口調で一貫されているこの詞を、佐藤勝利がしっとりと、丁寧に、切々と1番すべてを1人で歌い切る事で、聴き手は素直に歌詞へと耳を傾け、甘酢っぱ青春ワールドに引きずり込まれる。そして私は、思い出すのだ、10代の時の、あの恋を(幻覚)。

完全に佐藤勝利の罠にハマりきったところで、甘いガールフレンド(私)に次なる衝撃が襲いかかる。


②絶対に雨が上がっているし絶対に中島健人に抱きしめられていると感じざるを得ない転調

この曲の中で1番心が打ち震えてしまうところはまさにここだ。

佐藤勝利が1番を大切に語った後、ピアノとストリングスの伴奏にドラムが加わり、音楽にビート感が生まれる。それと同時に起こるのが、転調だ。

ここから世界が大きく変わる。

転調(調が変わること)によって、音楽の雰囲気の明暗、テンションの上下などを変化させることができる。ポップスでも当たり前のように用いられている手法だ。

しかし「A MY GIRL FRIEND」の転調は、ちょっとすごい転調なのだ。

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なんだこの図は。視覚的に分かりやすくするだけなので適当に見てください。

曲は、「変ト長調(G♭)」という調で始まる。図の青い場所である。

調というのは、基本的に図の中で距離の近い調(例えば、G♭からD♭、B、e♭)に移動するのが自然とされている。普段聴いている曲でもすんなりと転調を聴き流していることがあるかもしれない。そして、移動先が遠ければ遠いほど、「難しい転調」とされている。音楽の流れがちょっと不自然に聞こえてしまうかもしれない転調である。

中島健人が歌い出す時、「変ト長調(G♭)、青」から「イ長調(A)、ピンク」へと転調する。Aは遠い。図でみると、D♭やBとの距離の違いに気づくだろう。

ある意味、自然な流れに逆らった転調である。距離があればあるほど、音楽の雰囲気がガラッと変わり、聴き手が受けるショックも大きくなる。

2番の入りで、転調によって音楽的に劇的な変化が生まれ、歌い手も佐藤勝利から中島健人にチェンジする。そして、1番ではすれ違いの恋を実況するにとどまっていた物語の展開も、突然進展する。

雨上がりの公園で突然抱きしめ        大嫌いと泣かれてももう離さない

(…雨上がりの公園で中島健人に抱きしめられながらも「大嫌い」と主張できる人間が、この世にどれだけいるんだろうか。おそらく小松菜奈、中条あやみ、橋本環奈くらいであろう。もし私なら秒で成仏してしまう。)

そう、「キミ」と「ボク」の距離が、ここで一気に縮まるのだ。ドラマチックでしかない。思わず「おおおお!いいぞいいぞ!」と手に汗握って応援してしまう場面である。

転調によって雨が上がりドラムのビート中島健人に抱きしめられた胸の高鳴りを表すかのように音楽を加速させる。物語の大きな変化を、音楽的なショックが後押しするのだ。この瞬間、素直になれない鬱々とした雲が晴れ、少し湿った匂いを残す公園が脳裏に浮かび、中島健人の声によって抱きしめられていることを実感する。音楽と歌詞、歌い手、3つの要素(映像だと潤んだ瞳でピアノを弾き語る美しい中島健人という視覚的暴力も加わる)が効果的に絡み合い、聴き手の心を大きく揺さぶる。実に巧みだ。絶品である。この転調の素晴らしさをぜひ末代まで語り継ごうと思う。

ちなみに私は、音楽理論のプロではないので、もし間違っていたらすみません(なんやねん)。そして、作曲の谷口尚久氏が、そういう意図で作曲したのかも、分かりません。

想像は自由、それが音楽の楽しいところでしょう笑


③その他

何度も歌い手を変えながら繰り返されるサビ、そのサビの音の跳躍が、感情の幅やうまく伝えられない想いへの欲求不満感を生み出す。楽曲の魅力を挙げれば無数にあるが、やっぱり、音楽制作のプロが作った楽曲を自分のものとして歌いこなし演じきっている佐藤勝利、中島健人、菊地風磨の3名を、その輝きを、ぜひ映像で確認していただきたい。彼らにかかれば、誰だって甘いガールフレンドになってしまうのだから。


おわりに


ここまで、私的「A  MY  GIRL FRIEND」のドラマチックポイントを好き勝手に語ってきた。誰もが憧憬を覚えてしまう甘酸っぱい恋を、劇的な演出で。アイドルの彼らだからこそ、ここまで効果的に歌い上げ、我々の心を奪うことができるのだろう。

なんだ、この重い投稿は。

Sexy Zoneはいつも全力で一生懸命なので、私も思わず全力を尽くしてしまうのである。

アイドル中島健人の誕生に感謝するあまり、自ら好きな曲を演奏するという暴挙に。3年ぶりに楽器を開き、メシも食わずに多重録音に勤しんだ。いい思い出だ。当日の思いつきで急ぎ作ったものでお聞き苦しい点ばかりだが、もしこの曲が気になって、すぐにCDもBlu-rayも用意できそうにないというお方は、聴いてみてほしい。こういう感じの曲です。このおかげで、久しぶりに自分で演奏することの楽しさも思い出した。またSexy Zoneのおかげで人生に光が差してしまった…

以上、甘いガールフレンド考でした。











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