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【第118回】ディズニー映画「カールじいさんの空飛ぶ家」のシーンから使える英語表現をいくつか掘り下げてみました。

アルファ: Master, dinner is ready.
マンツ: Oh, dear, broken translator. I think it's that loose wire again. There you go, big fellow.「首輪が故障したかな?また線が緩んだか。よし直った」

「カールじいさんの空飛ぶ家」

I think it's that loose wire again. 「また線が緩んだか」
犬のアルファーが言った “Master, dinner is ready.” の声がおかしかったので、飼い主のマンツはその声を直そうとするシーンです。

ここでは、太字の中の “loose”「ゆるい」を取り上げていきたいと思います。この “loose” は日常生活でもいろんな場面で使える英語です。

The screw is loose. 「ネジが緩んでる」

be loose は“完全に緩んで” いますが、“緩んできている”と言いたければ、

The screw is getting loose.

と get を使います。

ズボンを試着した時、「ちょっと(ウェスト廻りが)ゆるいな」と感じたら、These pants are a little loose. です。

These pants are a little ( too ) big. 「ちょっと大きいかな」と言ってもいいですが、big は“サイズ”の大きさを表すのに対して、loose はブカブカしていて“フィット感”がない場合に用います。

big でも loose でもどちらでも使えますが、状況によっては loose も使っていきたいですね。


マンツ: Well, dinner is served. Right this way. So, how are things Stateside? Almost tempted to go back a few times. But I have unfinished work here. Please! I hope you're hungry.  「夕食ができたぞ。こっちだ。ところでアメリカはどうだ?帰りたくなる時もあったが…。仕事がおわるまではな。掛けて。腹はへってるね?」

「カールじいさんの空飛ぶ家」

So, how are things Stateside?
字幕の通り「アメリカはどうだ?」と聞く表現ですがあまり見かけない表現でははないでしょうか。

Stateside は State (アメリカ合衆国 ) + side ( 側 ) で、“アメリカの側で” = “アメリカにおいて” いう意味になります。

これは How are things in the States? と同じ意味ですが、Statesideは、海外にいるアメリカ人などがアメリカの状況を尋ねる場合に使われます。

一方、in the States は話者がどこにいるかは問いません。

でもこの Stateside のように Japanside や Franceside なども使えるかどうかを、対話型AI のリートンで調べると、

"Stateside" refers to the United States. While "Japanside" or "Franceside" could be understood to mean Japan or France, they are not commonly used terms. It's better to say "in Japan" or "in France" for clarity.

リートン

と「理解はできるかもしれないが通常は使われない」とのことでした。“造語的”な語としては使えそうです。

でも正式に使えるのは Stateside だけみたいです。



カール: My Ellie would have loved all these. You know, because of you she had this dream to come down here and live by the fall.「妻にも見せたかったよ。あなたに憧れて夢を描いてたパラダイスの滝に住むと」
マンツ: I'm honored. And now you've made it. 「光栄だ。夢がかなったな
カール: You sure we're not a bother? I'd hate to impose. 「私らはお邪魔じゃないかい?」

「カールじいさんの空飛ぶ家」

“パラダイスの滝”へ行くというエリー(カールの亡き妻)の夢が叶ったことを一緒になって喜ぶマンツ。

① And now you’ve made it.
make it が「うまくいく」、「成功する」という意味で使われるのは過去に取り上げた通りです。

今回、再度取り上げたのは、その日本語字幕が「夢が叶う」になっていたからです。

「夢が叶う」、「夢を叶える」は Your dream has come true. や You’ve realized your dream. など dream を含む英文が真っ先に思いつき、それ以外の英文は浮かぶことはあまりないのではないでしょうか。

ですからこの you’ve made it. は“目から鱗”が落ちましたね。「確かに…。でもなぜ気づかなかったんだろう…」という感じです。

やっぱり英語ってどれだけやっても新たな“気づき”があるので素晴らしいです。

② You sure we're not a bother?
bother は動詞で「…を困らせる」ですが、名詞では「厄介者」や「困ったこと」という意味があります。

ですから You sure we’re not a bother? は「私たち(カールとラッセル)が厄介者でないのは確かですか?」が直訳です。

「厄介者でない」というのは「お邪魔じゃない」ということで、カールは自分とラッセルがマンツの自宅に招待されてることに気を遣ったのです。

You sure …? は Are you sure …? のインフォーマルな表現で「本当に…ですか?」と相手の意思を確かめる時に使われます。

I hope we’re not a bother.「ご迷惑じゃなければいいのですが」でもいいです。

名詞の bother って使いにくいので、機会があればどんどん使っていきたいですね。

I'd hate to impose.
impose は「負担などを課す」という意味で impose a tax on ... 「…に税金を課す」というふうに使います。

ですから一見、時事英語など難しい文脈で使うもののように見えますが、セリフの I’d hate to impose. のように日常でも用いられます。

impose は「負担をかける」から「迷惑をかける」という意味が生じ、I’d hate to impose. は「ご迷惑はおかけしたくない」という意味になります。

すなわち、相手に迷惑をかけたくない、負担をかけたくないという遠慮の気持ちを表します。

“遠慮” と言えば、日本人の専売特許と言われるぐらい日本人はいろんな人に気を使う国民性を持っているので(ちょっと言い過ぎかも、ですが…)、この I’d hate to impose. の出番は多そうです。


マンツ: No, no, it's a pleasure to have guests. A real treat.「お客は大歓迎だ。本当の“ごちそう”だよ」
犬たち: Treat? Where's my treat? I want my treat! 「ごちそうだ!」
マンツ: No, no. Quiet! Calm down, calm down. Hey! I shouldn't have used that word.「ちがう。落ち着け。静かにしろ。言葉を間違えた」

「カールじいさんの空飛ぶ家」

マンツが言った「ごちそう」の意味を犬は間違えて騒ぎ出します。

I shouldn't have used that word.
ここでのポイントは shouldn’t have + 過去分詞 〜「〜すべきではなかった(のにしてしまった)」という文法で、“後悔”を表す表現です。

でも、ここで取り上げた理由はその文法にあるのではなく、その訳し方です。どの参考書や文法書をみても shouldn’t have + 過去分詞… の訳し方は「…すべきだったのに( そうしなかった ) 」と説明されていると思います。

もちろんその説明に何の問題もないのですが、このマンツのセリフの日本語字幕「言葉を間違えた」を見た時、“すごい訳だ”と感心してしまいました。

簡潔で、かつ言いたいこともしっかり伝わってきます

I shouldn’t have talked with him. 「彼とは話すべきでなかった」 → 「彼と話したのは間違いだった

We shouldn’t have lived there. 「そこに住むべきじゃなかった」 → 「そこに住んだのは間違いだった

どちらの訳でもいいのですが、後者の訳が個人的に気に入りましたね。今まで「…は間違いだった」なんて訳したことがなかったので目から鱗が落ちました。

英語だけじゃなく日本語も奥が深いなあと感じた英語でした。

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