【第104回】ディズニー映画「カールじいさんの空飛ぶ家」のシーンから使える英語表現をいくつか掘り下げてみました。
今回からディズニー映画「カールじいさんの空飛ぶ家」の各シーンから口語表現を中心に英語を “深掘り” していきたいと思います。
アメリカでは2009年5月29日、日本では2009年12月5日にそれぞれ公開され、第82回アカデミー賞において、長編アニメ映画賞と作曲賞の2部門を受賞し、ベスト作品賞にもノミネートされた数少ないアニメ映画のひとつです。
これまでディズニー(ピクサー)映画をあまり見たことがなかったので、この映画の存在も知りませんでした。でも、この洋画を見てみようと思ったのは、”年老いたおじいさん“が主人公というのがユニークだなあと思ったからです。
< あらすじ >
主人公のカールじいさんは、亡き妻エリーとの約束を果たすため、家を風船で持ち上げて飛ばし、南アメリカ大陸にある「楽園の滝」へ冒険に出発する。途中、偶然乗り込んできたボーイスカウトの少年ラッセルと共に、奇妙な鳥や言葉を話す犬と出会う。そして、旅で出会った予期せぬ仲間たちとさまざまな困難を乗り越えていく冒険物語。
< 主な登場人物>
カール: 主人公。78歳の老男性。元風船売り。
エリー: カールの亡妻。
ラッセル・キム: 8歳のボーイスカウトの少年。エリーと空の旅を続ける。
マンツ: 70年前に活躍した探検家。カールとエリーがマンツの大ファン。
アルファ: マンツの犬軍団のリーダー。
ダグ: 特殊な首輪をつけた犬。マンツの犬軍団の一員だったが、後でカールの味方になる。
ケヴィン: 巨大な鳥で、マンツに狙われているが、ラッセルが必死で守ろうとする。
この洋画の特徴は、サイレンス(無言)でシーンが進んでいく箇所も多い(特に最初)のですが、そのサイレンスシーンがとてもわかりやすく、かつ巧妙に描かれているため、ずっと集中力を切らさずに見ていることができるということです。
私が一番感動したのは、亡き妻を思い、妻の夢を叶えるために一心不乱に行動するカールじいさんの姿です。また夢を叶えるのに年齢は関係ないということも学ぶことができました。
それではセリフを見ていきましょう。
将来のカールの妻になるエリーが幼少時代に、同じく幼いカールに声をかけるシーンです。
I thought you might need a little cheering up.
直訳は「あなたの元気づけが少し必要かなと私は思った」です。cheer up はイディオムで「元気づける」という意味があります。
I brought you some flowers to cheer you up.「君を元気づけるために花を持ってきたよ」
字幕を真似して「元気づけるために」を「落ち込んでると思って花を持ってきたよ」と訳してもいいですね。
「元気づける」を意味するcheer up の反対の日本語である「落ち込む」を使って訳すテクニック ー なかなか真似できない素晴らしい日本語訳だと思いませんか。
I think he needs a little cheering up.「彼、ちょっと元気ないよね」 ( ← 「彼は少し“元気づけ”が必要だと思う」が直訳)
I don’t need any cheering up.「僕なら元気だから大丈夫だよ」( ← 「私は元気づけは必要ない」が直訳)
“日本語らしい日本語を使う”というのは、母語が日本語の私たちでも本当に難しいと痛感する毎日です。
相手が「元気がないかもしれない」と感じて、少しでも気持ちが明るくなるようにサポートしたい、という優しい気持ちを表す時に使える I thought you might need a little cheering up. です。ぜひそんな場面があれば使ってみたいですね。
幼い2人の会話は続きます。
When I get big
「大きくなったら」という意味ですが、よく耳にするのは When I grow up ではないでしょうか。対話型AI にその違いをまとめてもらいました。
まとめると、When I grow up は成熟して大人になることを意味し、子供が将来の夢を語ったりする時に主に使う。それに対して、When I get big は物理的な成長、つまり大きくなることを意味する、とのことです。
grow は「成長する」で big は「大きい」なので、その違いを推測するのは難しくないかもしれません。
この get big をここで取り上げたのは When I get big という表現があまり馴染みがなく、使わないのではないかと思ったからです。単に体が成長する時は “get big”を覚えておきましょう。
ちょっとしたことですが、こんなニュアンスの違いが面白くて“深掘り”作業がやめれません…