犬派? 猫派?
「犬派?猫派?―俵屋宗達、竹内栖鳳、藤田嗣治から山口晃まで―」
山種美術館で開催中。
犬と猫を描いた名作が大集合!
猫も犬も大好き、という友人を誘って行きました。
1)まずはリーフレットになっている、長沢芦雪と竹内栖鳳。
こちらの2枚が、今回は撮影可でした。
長沢芦雪『菊花子犬図』 個人蔵
長沢芦雪の代表作は決め難いですが、1つには無量寺の『虎図』天明6年(1786)(重要文化財)でしょうか。
1981年にロンドンで開催された「江戸大美術展」で人気を博し、イギリスの有名セーターメーカー限定50着のカシミヤセーターのデザインになったそうです。
これほどダイナミックな筆致の長沢芦雪は、片や、ころころ、もふもふの子犬も得意としていました。
長沢芦雪の師匠・円山応挙も犬が得意で、初期はトレースしていたのですが、次第に芦雪独特の筆致となっていきました。
円山応挙と比較してみましょう。
円山応挙『雪中狗子図』一部拡大
円山応挙は、それまで中国の模倣だった四条円山派に、写実を取り入れた革命的天才です。
やっぱり師匠すごい!
竹内栖鳳『班猫』大正13年(1924)山種美術館蔵
今さら言うまでもありませんが、「東の大観、西の栖鳳」と称された京都画壇の中心的人物。
円山・四条派からスタートして、西洋絵画から中国古典、絵画世界の全部を履修した人、そんなイメージです。
いやもう、すごい、猫のすべてを描き出したようじゃないですか?
『斑猫』は、栖鳳が旅行先の沼津の八百屋さんで一目惚れした猫ちゃんです。
八百屋さんに頼み込んで、絵と引き換えにもらってきたとか。
モデルの猫ちゃん
なぜ一目惚れしたかと言いますと、徽宗皇帝の猫を思わせたから。
徽宗皇帝は、北宋8代皇帝ですが、政務よりも芸術を愛した「風流天子」、院体派を確立した人としても有名です。
日本にある『桃鳩図』は、国宝に指定されています。
では徽宗皇帝の『猫』は、どんな猫でしょう?
2)次に、副題になっている、俵屋宗達、藤田嗣治、山口晃、各氏の作品をご紹介します。
写真撮影不可です。
出典明記のないものは、山種美術館HP及びFacebookから拝借しています。
俵屋宗達『犬図』17世紀 江戸時代 個人蔵
俵屋宗達は琳派の祖。
賛者は、一糸文守(いっしぶんしゅ)という人で、天台宗(のちに臨済宗に転じている様子)の僧。
後水尾天皇に近侍したそうです。
この賛を解読できる方、お願いします。
藤田嗣治『Y夫人の肖像』 三井住友銀行蔵
友人いわく「ここんちの猫ちゃんは、みんな首が長い」
ほんとだ。
私は猫よりも、Y夫人のドレスの、光沢、つるつるとし柔らかい素材、細かいドレープに見入ってしまいました。
背景の金色のニョロニョロした部分が、大和絵のようです。
山口晃『捕鶴圖』平成26年(2024) 山種美術館蔵
ストーリー性があって、可愛い。
猫ちゃんたちのおしゃべりが聴こえてくるようです。
3)個人的に印象深かった作品をいくつか。
伊藤若冲『狗子図』18世紀 江戸時代 個人蔵
川合玉堂『狗子』 山種美術館蔵
川畑龍子『立秋』1932年 昭和7年 大田区立龍虎記念館
川端龍子『秋縁』
この犬なんだっけ? シェパード?
「ミッケ」のように、モチーフ探し。かぼちゃ、とうもろこし、かまきり、セミの抜け殻。
小林古径『猫』 山種美術館蔵
この猫ちゃん、プライド高そう。
友人は、猫ちゃんと一緒に暮らしているので、観察力が甚だしい。
これはおもちゃに飛びついている所、これは手をこういう風にしているポーズ、などなど解説してくれるので、助かりました。
そして、全体に猫の髭が描かれていない、ということに彼女は気付いたのです。
たしかに!
近づいてみると白で描かれているのがわかるのですが、実際の猫と比較すると、うんと短く少ない。
耳の中の毛がこれだけ丁寧に描き込まれているのと対照的。
本当の猫ちゃん
歌川国芳『猫の当字 たこ』天保13年(1842) 個人蔵
この子たちも、髭があったりなかったりします。
4)第2会場には、犬猫以外の動物の絵が展示されていました。
横山大観『木兎』 山種美術館蔵
これは、驚いた。
ここまで見てきた感動が吹き飛ぶくらい、すごっ、と思いました。
こうして見てもよくわからないのですが、圧倒的オーラが出ていたんです。
恐るべし、横山大観。
さて、みなさんは、猫派ですか? 犬派ですか?
私はどちらだかおわかりですか?
実のところ、犬派でも猫派でもなく、どちらも好き。
拾ってきて飼ったことがあるのは猫ですが。
子どもの頃は犬が欲しかった。
それぞれ種類(獰猛なのは苦手とか)や、個々の性格の良さもあるし、鳥やハムスターも好きだし。
本日、猫ちゃんの帯をしているのは、友人が猫派なので、合わせたのでした。
<カバー写真>
円山応挙 展示されていません。
<参考資料>
山種美術館ホームページ
https://www.yamatane-museum.jp/