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犬派? 猫派?

「犬派?猫派?―俵屋宗達、竹内栖鳳、藤田嗣治から山口晃まで―」
山種美術館で開催中。

会場:山種美術館
所在地:東京都渋谷区広尾3-12-36
アクセス:恵比寿駅より徒歩10分
訪問日:2024年6月22日

犬と猫を描いた名作が大集合!

リーフレット

猫も犬も大好き、という友人を誘って行きました。


1)まずはリーフレットになっている、長沢芦雪と竹内栖鳳。
こちらの2枚が、今回は撮影可でした。

長沢芦雪『菊花子犬図』 個人蔵

筆者撮影

長沢芦雪の代表作は決め難いですが、1つには無量寺の『虎図』天明6年(1786)(重要文化財)でしょうか。
1981年にロンドンで開催された「江戸大美術展」で人気を博し、イギリスの有名セーターメーカー限定50着のカシミヤセーターのデザインになったそうです。

出展:無量寺公式HP
https://muryoji.jp/museum/room03/index.html

これほどダイナミックな筆致の長沢芦雪は、片や、ころころ、もふもふの子犬も得意としていました。
長沢芦雪の師匠・円山応挙も犬が得意で、初期はトレースしていたのですが、次第に芦雪独特の筆致となっていきました。

筆者撮影

円山応挙と比較してみましょう。

円山応挙『雪中狗子図』一部拡大

出展:東京新聞2021年9月16日
https://www.tokyo-np.co.jp/article/131152

円山応挙は、それまで中国の模倣だった四条円山派に、写実を取り入れた革命的天才です。

やっぱり師匠すごい! 



竹内栖鳳『班猫』大正13年(1924)山種美術館蔵
今さら言うまでもありませんが、「東の大観、西の栖鳳」と称された京都画壇の中心的人物。
円山・四条派からスタートして、西洋絵画から中国古典、絵画世界の全部を履修した人、そんなイメージです。

いやもう、すごい、猫のすべてを描き出したようじゃないですか?

筆者撮影

『斑猫』は、栖鳳が旅行先の沼津の八百屋さんで一目惚れした猫ちゃんです。
八百屋さんに頼み込んで、絵と引き換えにもらってきたとか。

モデルの猫ちゃん

出典:美術手帖
https://bijutsutecho.com/magazine/news/report/26141

なぜ一目惚れしたかと言いますと、徽宗皇帝の猫を思わせたから。
徽宗皇帝は、北宋8代皇帝ですが、政務よりも芸術を愛した「風流天子」、院体派を確立した人としても有名です。
日本にある『桃鳩図』は、国宝に指定されています。

出典:東京国立博物館(出展されていません)
https://webarchives.tnm.jp/imgsearch/show/E0116306
狩野栄信模倣

では徽宗皇帝の『猫』は、どんな猫でしょう?

伝徽宗『猫』(出展されていません)
出典:X 東京新聞講座&イベント情報


2)次に、副題になっている、俵屋宗達、藤田嗣治、山口晃、各氏の作品をご紹介します。
写真撮影不可です。
出典明記のないものは、山種美術館HP及びFacebookから拝借しています。

俵屋宗達『犬図』17世紀 江戸時代 個人蔵
俵屋宗達は琳派の祖。
賛者は、一糸文守(いっしぶんしゅ)という人で、天台宗(のちに臨済宗に転じている様子)の僧。
後水尾天皇に近侍したそうです。

この賛を解読できる方、お願いします。

斑もようは、宗達が得意とする「たらしこみ」の技法


藤田嗣治『Y夫人の肖像』 三井住友銀行蔵
友人いわく「ここんちの猫ちゃんは、みんな首が長い」
ほんとだ。
私は猫よりも、Y夫人のドレスの、光沢、つるつるとし柔らかい素材、細かいドレープに見入ってしまいました。
背景の金色のニョロニョロした部分が、大和絵のようです。


山口晃『捕鶴圖』平成26年(2024) 山種美術館蔵
ストーリー性があって、可愛い。
猫ちゃんたちのおしゃべりが聴こえてくるようです。


3)個人的に印象深かった作品をいくつか。

伊藤若冲『狗子図』18世紀 江戸時代 個人蔵

川合玉堂『狗子』 山種美術館蔵

川畑龍子『立秋』1932年 昭和7年 大田区立龍虎記念館

川端龍子『秋縁』
この犬なんだっけ? シェパード?
「ミッケ」のように、モチーフ探し。かぼちゃ、とうもろこし、かまきり、セミの抜け殻。


小林古径『猫』 山種美術館蔵
この猫ちゃん、プライド高そう。

友人は、猫ちゃんと一緒に暮らしているので、観察力が甚だしい。
これはおもちゃに飛びついている所、これは手をこういう風にしているポーズ、などなど解説してくれるので、助かりました。

そして、全体に猫の髭が描かれていない、ということに彼女は気付いたのです。

たしかに!
近づいてみると白で描かれているのがわかるのですが、実際の猫と比較すると、うんと短く少ない。
耳の中の毛がこれだけ丁寧に描き込まれているのと対照的。


本当の猫ちゃん

友人の猫ちゃん


歌川国芳『猫の当字 たこ』天保13年(1842) 個人蔵
この子たちも、髭があったりなかったりします。


4)第2会場には、犬猫以外の動物の絵が展示されていました。

横山大観『木兎』 山種美術館蔵

これは、驚いた。
ここまで見てきた感動が吹き飛ぶくらい、すごっ、と思いました。
こうして見てもよくわからないのですが、圧倒的オーラが出ていたんです。
恐るべし、横山大観。


さて、みなさんは、猫派ですか? 犬派ですか?

私はどちらだかおわかりですか?

帯にご注目


帯の手先にご注目


実のところ、犬派でも猫派でもなく、どちらも好き。
拾ってきて飼ったことがあるのは猫ですが。
子どもの頃は犬が欲しかった。
それぞれ種類(獰猛なのは苦手とか)や、個々の性格の良さもあるし、鳥やハムスターも好きだし。

本日、猫ちゃんの帯をしているのは、友人が猫派なので、合わせたのでした。


<カバー写真>
円山応挙 展示されていません。

<参考資料>
山種美術館ホームページ
https://www.yamatane-museum.jp/

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